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「ベッカム引退」を真っ先にスッパ抜いたのは誰?

ベッカム

引退発表から2日後、パリで行われたホーム最終戦に出場したベッカム。観客の割れるような拍手に涙を浮かべた

「ベッカムが引退するようだ。詳しくは英紙『メール・オンライン』で」  世界的大スクープの発端は、ある記者が投稿したシンプルで無機質なツイートだった。  日本時間5月16日の深夜に世界中を駆け巡った、サッカー元イングランド代表主将デビッド・ベッカム(パリ・サンジェルマン)の現役引退報道。母国イングランドをはじめ、現役最後の舞台に選んだフランスなどヨーロッパ中を揺るがせた他、MLS(米メジャーリーグサッカー)時代にプレーしたロサンゼルス・ギャラクシーのお膝元・ロサンゼルスでも早朝のテレビニュースで速報として報じられた。  2002年の日韓ワールドカップを機に、日本でも大旋風を巻き起こしたベッカム。当時はオフサイドのルールを知らない女子高生でも「携帯電話の待ち受け画像はベッカム様」という程のフィーバーぶりだった。世界最高クラスのフットボーラーとしては勿論、ファッションアイコンとしても世界中で絶大な人気を誇った。  ベッカム本人の公式Facebookページに投稿された引退声明には、投稿からわずか3分間で20,000人以上から「いいね!」が寄せられ、現在その数は35万人以上まで増えている。  まさに“世界を股にかけて”話題となったベッカム引退報道だが、この超ビッグニュースを全世界で一番早くすっぱ抜いたのは、イギリスの大手タブロイド紙である『デイリー・メール』の記者だった。その記者はビッグニュースを得るや否や、まず自身のツイッターで真っ先にスクープを報告した。
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『メール・オンライン』編集者のツイート。“WORLD EXCLUSIVE”(世界的大スクープ)の見出しと共に、スクープをすっぱ抜いた記者本人のアカウントも紹介されている

 今日の情報社会は、新聞社やテレビ局などの各ニュースメディアはもちろん、メディアに所属する記者個人もツイッターアカウントを持ち日々情報発信を行う時代だ。速報性がモノをいう情報については、記事にする前にまずツイッターで”BREAKING”(速報)の見出しと共に報じるのが、今風のスクープ作法である。  先述の通り「ベッカム引退」の第一報も、やはりツイッター上で発せられた。ツイッターでベッカム引退に関するツイートを遡って行くと、“WORLD EXCLUSIVE”(世界的大スクープ)の文字が大きく躍ったツイートを発見した。イギリスの大手タブロイド紙である『デイリー・メール』のWEB版『メール・オンライン』の編集者のツイートだ。 (https://twitter.com/mattylawless/status/335027493515972608
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「ベッカム引退」を世界で最初にすっぱ抜いた記者のツイート。無機質な文章からも、どことなく興奮収まらぬ様子が感じられる

 この編集者によると、すっぱ抜いた張本人はSami Mokbelという記者のようだ。その記者が、編集者にリツイートされる前に、まっ先につぶやいたツイートはこちら。 (https://twitter.com/SamiMokbel81_DM/status/335028493131857920) 「ベッカムが引退するようだ。詳しくは『メール・オンライン』で」というシンプルなツイートには「誰よりも早く記事を書いたぞ、早く読んでくれ」とでも言わんばかりの高揚感が感じられる。このツイートに対して、日本でもおなじみのサッカー専門ニュースサイト『ゴール・ドットコム』の記者と思われる人物などから「よくやった」「スクープおめでとう」といったコメントも寄せられている。
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「ベッカム引退」の第一報が流された場所は、何と幹線道路上。世界を駆け巡ったビッグニュースはここから発信されたようだ

 本人がいかに興奮していたかは、ツイートされたロケーションからも伺える。ツイートに記録されている場所情報のリンクを辿ると、出てきた場所は何と幹線道路上。スクープの興奮冷めやらず、側道に止めて急いでiPhoneを取り出しツイートしてしまったのだろうか?  情報のスピード、速報性において、今やツイッターに敵うメディアはない。今回、ベッカム引退をすっぱ抜いた記者がやったように「ツイッターで速報し、自社メディアへ誘導」という流れが世界的には一般的になってきている。日本では未だに記者のツイッター使用を禁じる大手新聞社なども存在するようだが、大手マスメディアにとってもツイッターは、上手く使えば「鬼に金棒」なのだ。 <取材・文/スポーツカルチャー研究所> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当
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