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気に入った日本語は「イッポーツーコー」と「サッスル」【ジョバンニ・アレヴィ インタビュー】vol.5

 いろいろと破格なイタリア人の天才ピアニスト、ジョバンニ・アレヴィ(Giovanni Allevi)。クラシック形式のコンサートにもかかわらず、Tシャツにジーンズで演奏し「老人の評論家たちを渋い顔にさせた」という常識破りなスタイルもさることながら、そのアーティストとしての実力、人気も折り紙つきだ。  約2年半ぶりの日本ツアー、最終公演とサイン会が終わった直後のロングインタビューを、たっぷりとお送りしよう。 ⇒vol.4「ツイッターのイタリア語読みはツイッテル?」
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ジョバンニ氏

ブルーノート東京での終演後、自分の公演案内をバックに記念写真

――さて、今日のコンサートの会場はブルーノート東京でした。これまでは日本のコンサートをホールで聴いてきたので、こういう「食事を楽しみながら」という会場であなたの演奏を聴く、というのも楽しい体験でした。ところで、こういった食事をする場所で演奏することはよくあるのですか? ジョバンニ:あまり多くはありません。今日は集中していたので、雑音はまったく入ってこなかったですね。今日いたお客さんは、私があんな曲を弾くもので(静かに聴かせる曲が多かった)、ロクに食事をできなかったのではないでしょうか(笑)。 ――いやいや。お客さんがジョバンニさんの演奏に集中させられたんですよ。 ジョバンニ:だから、そういったお客さんの気みたいなものをもらいながら、演奏するんですね。弾きながら、自分の近くのお客さんが自分の演奏に集中して、自分に微笑みかけてくれている、という状況が今日はよくわかりました。 ――じゃあ、もしも誰かが食事をしている状態だと、弾けなくなっちゃいますかね? ジョバンニ:いいえ、そういう無関心なお客さんはいないと思いますけど、もし、そういう人がいてもコンサート会場に来てくれていることがうれしい。でも、ブルーノートというのは何よりも私たち音楽家にとって大事なところなんですね。だからこの場所は私も大事にしていかなくてはいけない。私の音楽人生がはじまったのもニューヨークのブルーノートですし、それは生涯、忘れることはないでしょう。 ジョバンニのマネジャー:この場所でオーケストラで演奏することは無理なので、ピアノ一台で演奏することになると思います。 ジョバンニ:舞台の大きさが、そこまでは大きくないからね(笑)。 ――さて、明後日(6月17日)に日本から発たれるということですが、相変わらず日本が好きでいてくれていますよね。 ジョバンニ:はい。明後日、日本を発つということだけですでにノスタルジーを感じています。なぜなら、私を気にかけてくれる人、私が話をしたい人たちと別れなければならない。そして、うどんのスープと別れなければいけない(笑)。 ――本当に昆布出汁が気に入ったんですね(笑)。ちなみに「ボクハニホンジンカモシレナイ」とはまだ思っていますか。 ジョバンニ:それは間違いなく。この間のインタビューのときもお話ししましたが、前世が日本人じゃないかと思っています。 ――また覚えた日本語が増えたんじゃないですか、今回のツアーで。 ジョバンニ:はい。「イッポーツーコー」(即答)。 ――え、「一方通行」? 通訳さん:「一方通行」は発音が気に入っているみたいです。発音したときの「鳴り」がすごくいい、と。 ジョバンニ:あとなんだっけ、えーと、あ、そうだ! 「サッスル」。スバラシイ、サッスル(日本語で)。 ――えっと、「察する」ですか? ジョバンニ:そういう日本の精神は素晴らしい。欧州社会というのはどうしても物事をはっきりさせなくてはいけません。合理主義で。でも、日本は逆に、隠されたところに本質があるように思います。それはだから、「言葉に表さなくて感じるものである」、と。そこがすごく好きなんですね。日本という精密なテクノロジー分野で先進している国が、なぜそうした内に秘められた部分を持っているか、というアンバランスさにすごく惹かれています。 ――あなたが日本を愛してくれていることはとてもうれしいです。なので、また早めにツアーに来てくださいね! ジョバンニ:はい!
ジョバンニ氏

日本を愛するジョバンニ氏。次回来日時には、また日本語のボキャブラリーが増えるに違いない

――そしてうどんを食べてください(笑)。ちなみに、具体的に次はいつ頃、というのは? ジョバンニ:具体的なスケジュールは出ていないんですが、自分の希望としてはオーケストラと一緒にバイオリン協奏曲をぜひ、日本でやりたい。でも、いろいろとオーガナイズすることが大変だと思うので、慎重にやってきたいと思います。  でも、前回の来日に比べても、よりお客さんが自分の近くに寄ってきてくれている気がする。だから、意外と近い間隔で実現するんじゃないかな、と思っています。 <取材・文/織田曜一郎(本誌) 通訳/堂満尚樹>
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