目立たないヤンキース黒田が、実は高く評価されている秘密

黒田博樹

ヤンキース公式サイトより

 トップクラスの成績を残しつつも、なぜかまったく目立たず、オールスターにも声がかからない。しかし、ヤンキースにとっては、なくてはならない存在となっている。その理由とは? ⇒【前編】はこちら  チームがエースに求める条件として重要なのは長いイニングが投げられるということだ。黒田は三振を多く取るタイプの投手ではないが、それは球数を減らすためにもあえて打たせて取るスタイルにしている面があるからだ。メジャーでは年間125~130イニングを投げることがエースの条件とされているくらい、投球回というのは重要な要素。三振を奪えるということはもちろん投手の大きな能力の一つだが、チームにとって一番ありがたいのは、点を取られずに長いイニングを投げる投手だ。  黒田は、まさにそれを実践している。 「三振はたくさん取れればいいですけど取れないですし。内容というか、ダルとかはもう完ぺきに支配して抑えきってるんで、ああいうピッチングとボクのピッチングとまたスタイルが全然違いますし。それよりもやっぱりケガせず投げ続けて、イニングをたくさん投げたほうが僕にとっては充実感というのはある」  三振は取れないといいつつも、取れる球種は持っているし、三振が欲しいときにはきっちる取ることもできる。それよりも黒田が今一番こだわっているのは、いかに点を与えない投球をするかということだ。ヤンキースは今季、打線が振るわず援護がほとんど期待できないため、その中で勝つ確率を挙げるとしたら相手に1点も与えない投球をするしかない。 「常に色々頭で考えながら点を取られないピッチングを考えながら日々過ごしている」  後半戦の最初の登板の日に、黒田はそう言った。それは恐らく口で言うほど簡単なことではないだろうが、黒田はそれを当たり前のように実現してしまっている。  7月に入ってからの黒田の登板4試合で、無失点に抑えた試合は3試合。そのうち2試合は7イニングを投げている。この2年間で7回以上を無失点に抑えた試合はア・リーグでは黒田が最も多く、相手に点を与えない投球にかけてはもはや右に出る者はいないのだ。  極端な得点力不足に悩むヤンキースにとって、これほど頼れる投手はいないだろう。実際、ジラルディ監督は黒田のことを「大きな存在」と評し、すべてを任せきりにしているといっていいくらい全幅の信頼を寄せている。例えば先発投手をどこで降板させるかは監督が投手の状態や状況を見て判断するものだが、黒田の場合は最近、監督がいちいち本人の意向を聞き、本人の希望通りにさせている。  前半戦最後の登板だった7月12日のツインズ戦に登板したときは雨天のため1時間以上中断したが、黒田がどうしても続投したいと駄々をこねて監督とコーチを困らせたが、最後には黒田の我がままが通った。そこまで自分のやりたいようにやらせてもらえる選手はなかなかいない。7回以上を無失点に抑えた試合数は投手のスタッツには出てこないためテレビのスポーツニュースなどでは話題にもならないが、今のヤンキースにとってこれほど価値のある投手はいない。派手な活躍で注目を浴びても納得のいかない場面で無理やり降板させられ悔しい思いをするくらいなら、目立たなくても“陰の実力者”として何でも自分の思い通りにやる。  黒田はあえてそのような道を選んでいるのではないか。そして、そのほうが幸せだと思っているかもしれない。 <取材・文/水次祥子>
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