“遠隔セックス”という妄想と実現度 【荻上チキ×松本光一(株)典雅社長】 Vol.1

典雅社長 松本光一氏

典雅社長 松本光一氏

 8年前、『TENGA』をこの世に送り出し、日陰の行為とされてきた自慰行為に光を当てた株式会社典雅。社長・松本光一氏のものづくりに対する熱い思いは、荻上チキ著『セックスメディア30年史欲望の革命児たち』(ちくま新書)に詳しいが、なんとこのたび、TENGAから新たな商品が発売されるという。同社からは、今年3月に女性向けの『iroha』が生まれたばかり。

 挑戦を続ける松本社長に、荻上が1年ぶりに再会。昨年、局所的に話題となった台湾のアダルトグッズへの寸評から新製品『VI-BO』の開発秘話まで、2人が熱く語り合った!

◆Vol.1 “遠隔セックス”という妄想と実現度

『LOVE PALZ』をご存じだろうか?「モーションセンシング技術を採用した世界初のラブアクセサリー」を謳い、台湾メーカーが開発。スピードセンサーを内臓した男性用「ZEUS」と圧力センサーを内臓した女性用「HERA」が、ネットを介することで連動。遠距離セックスが可能だ!として、昨年末、一部ネットメディアなどで話題となった。アダルトメディアの変遷を追いかけ続ける荻上は、早々に商品をオーダー。ようやく届いたのだが……。

※【写真】『LOVE PALZ』はコチラ
http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=510032


荻上:僕、とてもワクワクしてたんですよ。新しい技術の発明って、やっぱり楽しみじゃないですか。前評判だと「新しい時代がきた」「クラウドセックスだ! ソーシャルセックスだ!」なんていう話もあって。製作者の「TENGAに並んだ」なんてコメントも出ていましたし。注文してようやく届いたんですが……箱を開ける段階でちょっと嫌な予感がしたんです。スタイリッシュを謳いながらの、箱の雑な感じ。開けてみると、水筒みたいなのが入っていて、持ってみると重くって。起動しようとしても、接続して操作するまでにも時間がかかる。ユーザーとしては届いたらすぐ使いたいものなのに、イライラが募る。感想は、http://togetter.com/li/555365 にまとめましたけれど、ガッカリでした。

LOVE PALZ,HERA

『LOVE PALZ』 左が男性用「ZEUS」で右が女性用「HERA」

松本:うちも購入して、やっぱりワクワクしたんですよ……。でも、残念なくらい動かなかったですね。僕ね、他の人の作ったものを評価するのは得意ではないけれども、正直、さすがにこれはちょっといかんなと思いました。こういう製品があるから。アダルトグッズ業界のプロダクトレベルというのが疑わしいものになっていく。もし、これが家電だったら、怒られますよ。

荻上:「家電なら怒るレベル」というのは重要ですよね。「所詮アダルトだから」と許してはいけない。でも一応、ものづくりへの愛が伝わらないでもない。ダマそうとしていたのではなく、ただ、圧倒的に技術が届かなかったんだなと。

松本:確かにチャレンジしたことは素晴らしいと思います。私もこういった男女ともに楽しめるもの、人の動きを再現するものの実現は望んでいます。だからこそ、もうちょっと水準を上げてから、市場に出してほしかったなというのが本音ですね。

 アダルト商品も、商品化までの間に、使ってテストしてダメだから直すっていう、トライ&エラーというか、スクラップ&ビルドが必要です。作ってみて、使ってダメだったら止めて。そしてその一部をまた継承してってやって、最終的に残ったものがようやく結論となるものなので。

荻上チキ

「発明の出発点ってこういうことなのかもしれません」(荻上)

荻上:カップル間でこういったグッズを使うことによって、より良質な、むしろ離れているからこそ楽しめるモノを目指す。その路線はありうるかなとは思うんですけど、ただ一方で、遠隔操作でぴったり、相手の動きと連動しなくても別にいいよなって思ったんですね。テレフォンセックスだけでなぜいけないのかと。必要ならビデオリンクしながらオナホとローター使えばいいだろうと。まだ、なにか新しい文化が花が開くという予感はしなかったな。

松本:「人の動きを遠隔で伝える」という発想は、僕自身にないわけではなく、「伝えることができたらなあ」とは思ってきました。でも、男性の動きって、実は別に上下だけの動きでもないし、女性だって単純に締まるだけの動きではない。女性がこう動く、男性がこう動かすというのを伝えるっていう動きに加え、男性が角度を変えたり、速度を変えたり、奥行きを変えたりとか、それをすべて伝えて、質感として伝える。相互間でそれを伝え合うって、考えれば考えるほど難しいなって。いわば、最先端の遠隔操作ロボットの技術に近いわけですから。下手をするとそれよりもっと大変なものになる。

 自分として入れたい機能とか、こう動いて欲しいというのを盛り込んでいくと、想定しただけでもかなり大きなものになってしまう。もうちょっと突き詰めて、減らしていかないと、プロダクトとして成立しません。

荻上:とはいえ、発明の出発点って、すべてこういうことなのかもしれませんね。最初に風船型のダッチワイフができたとき、たぶん「え、これ!?」って多くの人が思ったんだと思うのです。「しょぼっ」みたいな。それでも当時、待ち望んでいた人がいて使い続けた人がいた。その使い続けたユーザーが要望を出し続けた結果、今は、ラブドールの域まで到達したわけです。ラブドールもさらに、もっと「関節の動きを!」といった期待が広がっていっている状態なわけですから。これが何かの第一歩になるのかも。

●株式会社 典雅 http://www.tenga.co.jp/
●iroha http://iroha-tenga.com/

【松本光一】
1967年、静岡県出身。自動車整備の専門学校を卒業後、スーパーカーやクラシックカーの整備に携わる。その後、中古車販売会社に勤めるも、モノづくりへの思いが日々強まり、34歳で脱サラ。当時、粗悪なのが当たり前、マーケティングどころかメーカーの連絡先明記すらないアダルトグッズを変えようと、それまでに貯めた軍資金1000万円を元手に、自主制作を始める。「アダルトグッズに一般性を」と取り組むこと3年、試行錯誤の末、軍資金も底をつき始めた2005年3月に有限会社典雅を立ち上げる。同年7月7日、モノづくりの魂を込めた「TENGA」5種類を同時発売。発売から1年で、シリーズ累計出荷数は100万本を突破する大ヒットとなる。

【荻上チキ】
1981年生まれ。評論家・編集者。メールマガジン『αSYNODOS』、『困ってるズ』、ニュースサイト「Synodos」編集長。政治経済から社会問題まで幅広いジャンルで取材・評論活動を行う。週刊SPA!にてエコノミスト・飯田泰之とともに「週刊チキーーダ!」を連載中。最新刊は、飯田泰之との共著、『夜の経済学』(扶桑社)。他、著書に『彼女たちの売春(ワリキリ) 社会からの斥力、出会い系の引力』(扶桑社)『検証 東日本大震災の流言・デマ』(光文社新書)『セックスメディア30年史』(ちくま新書)『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』(幻冬舎新書)など。出演番組にTBSラジオ「session-22」、CS朝日ニュースター「ニュースの深層」ほか。

<撮影/落合星文 構成/鈴木靖子>

セックスメディア30年史欲望の革命児たち

風俗、出会い系、大人のオモチャ。日本には多様なセックスが溢れている。80年代から10年代までの性産業の実態に迫り、現代日本の性と快楽の正体を解き明かす!

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