いよいよライブハウスで鹿の解体がはじまる【鹿の解体×音楽イベント1万字ルポvol.3】

「水曜日のカンパネラ」という音楽ユニットが11月4日、渋谷のライブハウス「WWW」で主催した音楽イベントで「鹿の解体」を行った。今回のイベントは「決してグロテスクなものを見せたいわけじゃない」と語るコムアイ氏。イベント当日の一日に密着した。

⇒【ルポ2】「渋谷スペイン坂の通行人を驚かした鹿」はコチラ

※鹿の死体の写真を掲載します。ご了承の上、お読みください。

鹿の解体×音楽イベント

物販会場で売られていたりんご飴と、後ろにぼんやり写るりんご飴マン

 さて、鹿の話ばかり書いてきたが、今回は「音楽イベント」だ。一番最初は「水曜日のカンパネラ」のワンマンライブをしよう、という話があったのだが、コムアイ氏は「まだ、自分が主役になれる感じがしない。では、私の好きなアーティストと一緒にイベントをやって、こういうブッキングをする『水曜日のカンパネラ』を好きになってくれれば」という思いから、イベント形式にしたという。

 今回のイベント「りんご飴音楽祭2013」の主催者の一人であるりんご飴マン氏は自らのことを「彼女(コムアイ氏)の夢を叶えるおじさんたちってところです」と語る。至って真面目に語るが、彼の顔は赤くペイントされている。こうした真面目にふざけられる大人たちに囲まれ、音楽イベントにもかかわらず、「鹿の解体」あり、落語もあり、といった「カオスなイベント」(コムアイ氏)を実現まで漕ぎ着けられたのだろう。

 15時55分、予定から25分遅れでついに開場。「水曜日のカンパネラ」のメンバーであり、楽曲制作を担当するDJのケンモチヒデフミ氏がオープニングDJとして観客を迎え入れる。

 物販会場では、CDやTシャツといったライブ会場でごく普通に売られている物品に加え、主催者たちお手製のりんご飴、そして塩コショウでシンプルに味付けされた鹿肉も販売されていた。

 観客に話を聞くと、やはり鹿の解体を楽しみにしているようで、グループで来ていたらしい男女は「鹿の解体なんて見たことがないから緊張しています。鹿肉を食べるのを解体を見てからにするか、見ながら食べるか、悩みますね」とハイテンションで語ってくれた。

鹿の解体×音楽イベント

キーボードやベースを操り、圧巻のライブを見せたAZUMA HITOMI

 16時15分、「りんご飴音楽祭2013」の開催を告げるオープニングムービーとともに、いよいよイベントスタート。AZUMA HITOMIが圧巻のライブを繰り広げると、続いてはコムアイ氏が大ファンだという落語家の瀧川鯉八氏が鹿の解体にひっかけて「牛が人間を食う噺」という内容の新作落語を披露。

瀧川鯉八

瀧川鯉八氏。瀧川鯉昇一門下の現在、落語芸術協会の二つ目。マクラでは「今日は女性の出演者が多いので、私の楽屋は鹿と一緒でした」とジョークを飛ばしていた。実際には楽屋は別。

 さらには日刊SPA!でも大プッシュしてきたカリスマドットコムが「次は鹿のカーイーターイー!」と観客を盛り上げて、いよいよ鹿の解体の時間がやってきた。

鹿の解体×音楽イベント

カリスマドットコムのMCいつか。相方のDJゴンチと「解体なんてマグロ以外見たことがない」と話していた。

鹿の解体×音楽イベント

カリスマドットコムのDJゴンチ

 18時30分。リハーサルの通り、鹿の解体の準備が始まる。ブルーシートが敷かれ、鹿台やテーブルがセッティングされると、観客も「いよいよか」という雰囲気で鹿の登場を待ち構えている。10分後、なんと『キューピー3分クッキング』のテーマソングがかかり、ブルーシートに乗せられた鹿が登場した。

 正直に書けば、『キューピー3分クッキング』のテーマソングがかかった瞬間、「大丈夫か? ふざけすぎていると思われないか?」と心配をした。だが、観客は拍手をし、「うわぁ」「うぉー」と鹿の姿に興奮した声を上げる。そもそもが「水曜日のカンパネラ」にとってはホームの観客であるし、鹿の解体を見ることを楽しみにしている人が圧倒的多数な雰囲気だった。また、「鹿の解体」をエンターテインメントにする、というそもそもが大胆不敵な試みである。少々、心配しすぎたのかもしれない。少なくとも、この会場内では。

 実は、鹿の解体中に音楽をかけるべきかどうか、DJのケンモチ氏は悩んだという。結果、彼は音楽はかけないという選択をしたが、それは正解だったと思う。観客の集中を途切れさせかねないし、ある程度の演出はショーである以上必要だろうが、過剰すぎるとやはり別の意味を生んでしまうのではないだろうか。

 鹿台の上に、顔を観客に向けた形で鹿が置かれた。鹿の顔から若干の血がしたたる。これは血抜きを失敗したのではなく、捕獲した猟師が鹿を昏倒させるときに顔に打撃を与えてしまい、うっ血した血が出てきているのだという。やはり、狩猟の現場は過酷だ。

「こんにちは、『水曜日のカンパネラ』のコムアイです」

 コムアイ氏が挨拶したのち、佐野氏が自己紹介を始める。

「彼女とは僕がやっている鹿のワークショップで知り合いました。そしたらいつの間にか歌手になってて(笑)。今日は自分のライブの合間に解体をやってほしいという依頼を受けまして、『それは素晴らしい自己主張だ。協力します』と山梨県からやってきました」

 佐野氏は話し終えると、コムアイ氏と2人で鹿の後ろ足の皮を剥ぎ始める。くるぶしあたりの外周をナイフで一周すると白い部分が見えてくる。次はナイフを足の内側から太ももにかけて這わせていく。

鹿の解体×音楽イベント

鹿の足の皮を剥く、佐野氏とコムアイ氏

 佐野氏は作業を解説するためにコムアイ氏と話しながら、ときに下ネタを織り交ぜて観客の笑いを誘う。そのことを不謹慎だと捉える人もいるだろうが、佐野氏は舞台上でこう語った。

「こういうのはやっぱり楽しくやらないと。しんみりしながらするものでもないから。僕はもともと食べるために解体をするんで、楽しくやったほうが、おいしく食べられるんですよ。キノコも狩るし山菜も獲るし、川魚も海の魚も釣りますけど、自分が楽しいからやって、それを食べる。難しい考えは何もない、生活の一部ですね」

 佐野氏は「動物を捌くときは必ず足から剥くこと」と言いながら、一気に足の皮をベリッと剥く。「おーっ」と歓声が上がる会場。「一気に皮を剥くのは、猪や豚は無理。鹿は毛皮と肉の間にナイフを這わせていくと、ツルツルっと皮が剥ける。でも、猪は皮と身の間に脂身があるので、それを残すようにきれいに皮を剥がないといけないから大変」などの解体に関する情報を披露しながら、鹿の左前足を持って会場に見せる。

「こっちの足がワナにひっかかっていた足なんですよ。ワイヤーのワナなんですけど、ひっかかって暴れまわるので、どうしても筋肉が切れて血がまわってしまうんです。ちょっと血が出ますよ。苦手な人は見ないほうがいいかもしれない。残念ながら左前足は食べられないですね」

「ほー」という声も上がり、感心する会場。捕獲現場での鹿の必死な姿も目に浮かぶようだ。ここで、「仕留め方はどうやったんですか?」と会場から質問が飛んだ。

「まず木の棒で叩くんですよ。鹿は普通に生きているんで、ポコッと(後頭部を叩く)。そうすると鹿が転ぶので、ここにある首の傷口のところを僕のお師匠さんが刺すんですね。そうやって血抜きをして締めないとお肉が食べられないんです。血が抜けないで筋肉を切るとそのまま血が出てきてしまう。これは血が抜けているので、こうやって切っても血は出てきませんよね。これが製肉なんです。この鹿は僕のお師匠さんが仕留めてくれたんですが、仕留めたあとはすぐに内臓を出して、川で熱を冷ますんです」

 今回のイベントでは見れない、狩猟の現場で行われていることの説明をする佐野氏。ここで、女性アイドルグループBiSのメンバー、ファーストサマーウイカ氏がゲストとして呼びこまれ、彼女も解体を初体験することに。3人で背中まで皮を剥き、足を外し、ロースを取り出す。

「ロースは牛でいうサーロインですね。背中の肉で、これが一番おいしいところかな」と佐野氏が説明すると、コムアイ氏が「おいしそう」と反応。「ここまでくると肉にしか見えないね」と佐野氏。

鹿の解体×音楽イベント

ロースとヒレの部位を切り出した佐野氏。ここまでくるとスーパーなどで見かける肉と変わらない

 肉の部位を説明しながら、ヒレ肉やバラ肉を取り出すたびに、何度も「ほー」と会場からは感心した声が沸いた。約25分ほどで解体の時間は終了し、鹿の解体についてのトークショーが18分ほど行われ、この日の「解体ショー」は終了した。 <取材・文/織田曜一郎(本誌) 撮影/難波雄史>

⇒【ルポ4】『「よし、一生鹿と生きていくぞ」と決めた』はコチラ

― 鹿の解体×音楽イベント1万字ルポ【3】 ―

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