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性転換した大学講師・吉井奈々が「美容整形の今」に迫る

―[山田ゴメス]―
 女性にとって、美容整形をしたことを大っぴらにカミングアウトすることが、かなりの勇気を要する行為であるのは想像に難くない。だが、そんな“やましさ”をジョーク混じりにあっけらかんと語る人たちがいる。言わずとも知れた“ニューハーフ”の皆さんである。 吉井奈々,飯塚雄久 今回は、総額2000万円近くをかけて性転換を果たし、戸籍を女に変え、ノンケ男子と結婚!――という“オネエ・ドリーム”を実現した大学講師・吉井奈々さんが、みずからの実体験をもとに「美容整形の今」へと迫った! 去年12月に刊行した絶賛発売中の自著『男に生まれて、女になって、結婚もできました。』(日本文芸社)を引っさげ、金の糸美容施術で有名な「ベル美容外科クリニック」の顧問医を務める飯塚雄久先生に凸撃取材!! 飯塚雄久先生(以下、飯塚先生):吉井さんって、性転換するのに総額2000万円近くかけたんだって? 吉井奈々(以下、奈々):今回、本を書くにあたって私が女のコになるためにかけたお金の総額を計算してみたんですよ。すると、合計でなんと1790万円!! ただ、性転換のための3大儀式と呼ばれている「ホルモン注射・去勢(睾丸摘出手術・性転換手術(性別適合手術))」に必要なのは、意外と200万円ちょっとだけだったりするの。あとの差額はすべて美容整形にかかった費用ですね。 飯塚先生:それはすごい!
吉井奈々

性転換した大学講師・吉井奈々さん

奈々:でも、今の美容整形界は「切らない」つまり「なるべくメスを入れない」施術が主流になりつつあるように私は思えるんですよ。一昔前の女優さんだとか私のようなニューハーフが受ける美容外科手術の場合は極端な話、若干他人になるような、切ったり貼ったりのものが多かったんですけど……。 飯塚先生:そうですね。僕個人の考えもどちらかと言えば、顔をがーんと変えるとかじゃなくて、若返りやアンチエイジング系のほうを女性の皆さんにはオススメしたいかな……と。できるならなるべく切らないで済ますほうが、患者さんにとっても施術をする側にとっても、妙なストレスが溜まらなくて良いのではないか、と思うんです。現に今の人たちって、みんなキレイじゃない? すごいブスとかブ男って、ほとんど見たことない(笑)。だから、そこまで無理矢理メスを入れたりする必要もなくなってきた。(顔の)輪郭もシャープになってきているから“骨切り”もしなくていいし。 奈々:私たちニューハーフの世界でも、昔は、おでこに鉄板を入れたり、アゴはガッツリ削り落としたり……。さらに歯も動かして、鼻も何度もプロテーゼ入れて、やりすぎて豆腐みたいになっちゃった、みたいな(笑)、いろんな人たちがいたんですけど、平成のニューハーフちゃんたちは、もう全然そういうのじゃなくて、ヒアルロン酸とボトックスと、ちょっと二重(まぶた)くらいにはするかな……程度で、全然カワイイですからね。 飯塚先生:あと、近ごろは皆さん、僕からすれば全然スリムなのに、もっとガリガリの体や顔になることを求めて「脂肪吸引をお願いします」なんて言ってくる。でも、それは違うだろ、と。女性って、本来はある程度丸みを帯びたラインがあるほうが絶対に魅力的なんだけどね。 奈々:そういうお客さまが来院されたとき、先生はどうするの?
飯塚雄久

「ベル美容外科クリニック」の飯塚雄久院長

飯塚先生:「やめたほうがいい」とお断りします。「どうしても!」というお客さまには、ウチだと「パルスリポレーザー」という脂肪を溶かすレーザーをオススメしています。 奈々:ハッキリ「やめろ!」って言っちゃうんだ。素敵すぎる(笑)! 私の経験から言わせていただくと、なんでもかんでも「やれやれ!」ってオススメしてくる美容外科って、イマイチ信用できない……。美容整形の先生って、お金儲け至上の方と芸術家肌の方とにハッキリと分かれたりするイメージなんですけど、先生は後者の芸術家肌ね? 飯塚先生:別にそんな意識はないんだけどなぁ……(笑)。けれど、「それをどうしてもしたいなら別の病院へ行ってください」というのは、たしかにある。 奈々:とりあえず私はニューハーフとして、あらゆる美容外科手術を実体験してきて、今はようやく落ち着いた時期と言えそうなのですが、そんな私がこれからすべき“メンテナンス”はどのような施術だと先生は思われますか? 飯塚先生:すでに女性としては完成していると僕は思うので、これからはやはり“アンチエイジング”じゃないかな? ってことは、ウチの場合だと「FGF注入」だとか「金の糸」だとか……かな?
男に生まれて、女になって、結婚もできました。

著書『男に生まれて、女になって、結婚もできました。』(日本文芸社)。オネエに目覚めたきっかけから結婚に至るまでの実体験を赤裸々に告白。今どきのオネエ事情もコレ一冊で丸わかり!

奈々:噂にはよく聞くけど、まだどっちも私は試したことないなぁ……。正確にはどう違うの? 飯塚先生:素人の方にもわかりやすく説明すると、「FGF注入」(線維芽細胞増殖因子注入)は、肌細胞を増やしシワや凹みを埋めたり、丸みを帯びさせたいパーツのどこにでも注入可能な肌再生術で、従来のヒアルロン酸の変わりみたいなもの。対して「金の糸」は、小じわやシミを改善し、肌を綺麗にしたり顔を引き締めたりする「パーツ全体のアンチエイジング」といったイメージ、ですね。 奈々:今回の著書にも書いたんですけど、私たちニューハーフって、じつは一番誤魔化しがきかないパーツが“手”だったりするんですよ。いくら体をあれこれやって女性的にしても、手のゴツゴツ感だけはどうにもならなくて……。 飯塚先生:ああ、それは「金の糸」でけっこうフォローできるはず。女性もやはり、老け感が一番にじみ出てくるのが“手”だということを自覚しているのか、“手の金の糸治療”を希望されるお客さまは多いです。最近は男の人も増えてきている。シミとかを消したいんでしょうね。 奈々:そうなんだ! 今度やってみよっと!! ⇒【後編】『「水光注射」具合的にはどんな施術なんですか?』に続く https://nikkan-spa.jp/588744 <取材・文・構成/山田ゴメス> 【吉井奈々】 ’81年神奈川県生まれ。10代より性別にとらわれず数々の水商売の経験を積み、経営にも携わる。’04年、23歳で性転換の手術を受け戸籍上も女性になり、’10年、中学時代の同級生と結婚。元男性でありながら、女性として結婚するに至った経験を踏まえ、コミュニケーション研究家・婚活講師としてセミナーや講演会で活躍中。2007年からは大学にてコミュニケーション・心理・家族社会学などの講義を担当。現在は非常勤講師として教鞭を取るかたわら、テレビやラジオ、Webなど各種メディアに出演中。オネエに目覚めたきっかけから結婚に至るまでの実体験を赤裸々に告白した近著『男に生まれて、女になって、結婚もできました。』(日本文芸社刊)が発売中。公式ブログ:http://ameblo.jp/xoxo-nana-xoxo/ 【飯塚雄久】 ’62年東京都生まれ。東京慈恵医科大学卒業後、同大学の形成外科入局。’97年、神奈川県厚木病院形成外科責任医長に就任。’01年から高須クリニックに勤務。美容外科症例数は数万例に及ぶ。’07年、『ベル美容外科クリニック』の顧問医に就任。「ベル美容外科クリニック」住所:東京都渋谷区渋谷区渋谷1-12-7 CR VITE 10階 電話番号:0120-15-4142(グリーダイヤル)公式サイト:http://www.belleclinic.com/ 【山田ゴメス】 1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。また『解決!ナイナイアンサー』のクセ者相談員の一人でもある。日刊SPA!ではブログ「50にして未だ不惑に到らず!」(https://nikkan-spa.jp/gomesu)も配信中。著書『クレヨンしんちゃん たのしいお仕事図鑑』(双葉社)も好評発売中!
大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
男に生まれて、女になって、結婚もできました。

オネエに目覚めたきっかけから結婚に至るまでの実体験を赤裸々に告白。今どきのオネエ事情もコレ一冊で丸わかり!

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