洗脳しやすい人間を抽出する【ブラック企業経営者の人心掌握術】

視覚で上下関係を認識させる人心掌握術 ブラック企業の比率が多い業態として知られる外食産業。

 大学進学に伴い、上京したばかりの大沢真也さん(20歳・仮名)がバイト先に選んだのは、まさにブラックそのものだった。

 大沢さんが振り返る。

「西麻布や恵比寿といった、雰囲気よさげな場所に店舗を構えている飲食グループだったので、楽しそうだなと思って応募したんです。ところが、とんでもなかった。

 新人バイトは白いTシャツにジーンズと吉田栄作みたいなカッコをさせられ、仕事の流れもロクに教わっていない初日から怒鳴られる。

 グラスを割ってしまった新人はキッチンの裏に連れて行かれ、お腹を蹴られていました。

 暴力をふるう先輩バイトはちょっとこじゃれたシャツを着ていて、とにかく偉そうで偉そうで……。

 5~6人、一緒にバイトとして採用されたのですが、初日で1人辞め、一週間で2人辞め……僕も1か月持ちませんでした」

 それまで、テレアポや引っ越しなど様々なバイトの経験があった大沢さんだったが、堪えられなかった。バイト日の前日、意を決して「辞めさせてください」と電話を入れると、店長からこんな言葉をかけられたそうだ。

「電話してくるだけマシだけど、根性ないね。お前みたいなヤツ、多いんだわ。そんなんじゃこの先、どこでもやっていけないよ」

 以来、この言葉がしばらく大沢さんの脳裏から離れなかったという。

 労働問題に詳しいジャーナリストの秋山謙一郎氏が語る。

「どのブラック企業でも共通点として“新人いじめ”が挙げられます。

 このケースでは新人にわざとカッコ悪い服装をさせることで、新人に立場が低いことを否応なしに認識させる効果を狙ってのものでしょう。

 そこを乗り越えれば少しかっこいいシャツを着られる、と憧れを持つような、言葉は悪いかもしれないけど“洗脳しやすい人間”だけを抽出することもできますよね。

 こうしたワザとカッコ悪い服装を強いる人心掌握術は、美容業界や鳶の世界でもよく聞く話。

 ブラック企業経営者にとっては“いろはのい”と言えるものでしょう」

 秋山氏が3月に上梓した『ブラック企業経営者の本音』では、こうした経営サイドの本音、目論見が余すことなく描かれている。

 飲食、外食産業からテレビ業界、零細のIT企業まで、業態は様々だが、通底するのは黒すぎる思惑。彼らは確信犯でやっているのだ。

 これまで見落とされがちだった、経営者サイドの本音。知りたい人は是非手にとってほしい。 

<取材・文/日刊SPA!取材班 イラスト/西アズナブル>

ブラック企業経営者の本音

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