男の部屋にあっても恥ずかしくない自己啓発書とは?

あいつの気持ちがわかるまで

『あいつの気持ちがわかるまで』

 ベテラン編集者であり著述家でもある石黒謙吾氏が、先ごろ刊行した『あいつの気持ちがわかるまで』(宝島社)。ジワジワと心に染み渡る“偉人の名言”や“世界のことわざ”に、微笑ましい動物たちの写真を組み合わせた、ライトな自己啓発書といったおもむきの一冊だ。

 前編では「『あいつの気持ちがわかるまで』の楽しみ方」をテーマに、格言と動物写真のマッチングをどう鑑賞するか、部屋に置いてもイタくない自己啓発書とは何か……といった事柄について、著者の石黒氏に解説してもらった。

――『あいつの気持ちがわかるまで』は動物の写真と格言を組み合わせた本ですが、いわゆる自己啓発書としても読むことができるし、いろいろな種類の動物写真を見ながら、のんびり「かわいいね~」と楽しむこともできる本ですね。

石黒:ええ、さまざまなスタイルで楽しんでいただける本だと思います。これまでにも、動物の写真に気の利いたコピーや、ちょっとイイ話を組み合わせたような本は、いろいろと刊行されてきました。たとえば最近だと『人生はワンチャンス!』『人生はニャンとかなる!』といったタイトルが注目を集めたのも記憶に新しいところです。この本ぱっと見は似ていますが、僕は二番煎じがなにより嫌い。なので、そうした類書に敬意を払いつつも、差別化をはかることは強く意識しましたね。僕なりのこだわりを散りばめました。まとめ方は、かなり独特だと思いますよ。

――こだわりとは、たとえば?

石黒:まず、本書は全体を貫くテーマとして「対人関係」に焦点を当て、構成しました。そのため、用いている動物写真は2匹以上で写っているものが多いです。見ているだけで、そこに何かしらの関係性を想像してしまうようなカットを厳選しています。順番としては、まず格言を選んで、それに写真を合わせていったのですが、この写真選びには、本当に時間をかけましたね。

――格言は、海外のものをあえて選ぶようにしたとか。

石黒謙吾氏

石黒謙吾氏

石黒:そうなんです。もちろん、日本の偉人たちが残した格言にも素晴らしいものはたくさんあります。が、それを紙面に並べてしまうと、(これは僕の好みの問題もあり)ちょっと説教くささが醸されてしまう気がしたんですよね。同じ日本人なので、近すぎてしまうというか。それで、海外で古くから伝わっている教えだったり、海外の偉人たちが残した格言のみで構成することにしました。

 今回、60の格言を盛り込んだのですが、すべてに僕の解説コラムが添えてあります。これも、単なる発言者や内容の説明だけに留まらず、僕の経験談なども加えながら、リアリティを感じられるようまとめたつもりです。ちなみにタイトルは、全国キャンディーズ連盟代表である(笑)僕が、40年間愛し続けているキャンディーズのヒット曲「ハートのエースが出てこない」の歌詞の一節なんです。

 あと、これは本書の大きな注目ポイントなのですが、すべての格言に「この言葉を映画で感じるなら……」という映画紹介コーナーも添えているんです。この枠は映画に詳しい編集者でありライターの稲田豊史さんにお任せしたのですが、本当に絶妙なチョイス。格言をしみじみと味わうだけでなく、その世界観を映画に置き換えて堪能することができるなんて素敵だと思いませんか?

――「男性の家で自己啓発書を見つけると、萎える」なんてことをいう女性もいたりしますが、本書はテーブルの上や本棚にあっても違和感がない気がします。

石黒:おぉ、確かにそう思いますね。部屋にあっても恥ずかしくない自己啓発書ですよ。狙ってそうしたわけではないのですが、結果的に “ナンパ系自己啓発書”みたいな側面もあると思います。写真はちょっとコミカルだったり、物語を感じさせるようなものばかりを選んでいるので、動物写真集として楽しむこともできます。女子にも刺さるのは間違いないわけで「この写真、かわいいね」「この言葉、素敵」なんてカップルで顔を寄せながら見てもらえたら、著者冥利に尽きますね。

――写真とセットで格言に触れることで、何だか記憶にも残りやすい気がしました。「パンダの写真と一緒に出ていた格言」みたいな覚え方を、期せずしてやっていたり。

石黒:そういう側面は、確実にあるでしょう。正直、僕はこれまで「格言集って、いい言葉が載っているのに、本としてつまらない」と感じてきたんです。内容はいい本もたくさんあるし、読めば面白いことはわかっているんだけど、どうもスッと入り込めないし、なかなか響いてこない。その理由は結局、ビジュアル要素が希薄だからでしょう。写真と組み合わされることでイメージが広がるし、文字と画のマッチングセンスを楽しむことができる。結果、心にもより刻まれるわけです。素晴らしい格言に触れるための入り口として、若い人にも本書をぜひ手に取ってみてほしいですね。

⇒【後編】「自己啓発本とは、ジワジワ効いていく漢方薬みたいなもの」に続く http://nikkan-spa.jp/612523

<取材/漆原直行>

【石黒謙吾氏】
編集者・著述家・分類王。1961年、石川県金沢市生まれ。講談社『PENTHOUSE』、『Hot Dog PRESS』の雑誌記者・編集者を経て32歳でフリーに。以来、書籍の執筆、プロデュース&編集に注力し、これまでに200冊以上を手がける。著書は87万部で映画化もされた『盲導犬クイールの一生』はじめ、『2択思考』『図解でユカイ』『ダジャレ ヌーヴォー』『ベルギービール大全』など多数。
プロデューサー・編集者としても、歴史・社会ネタからサブカルまで、硬軟織り交ぜたさまざまな本作りを展開する。近年のものでは、『ジワジワ来る○○』シリーズ(片岡K)、『負け美女』(犬山紙子)、『飛行機の乗り方』(パラダイス山元)、『妄想娘、東大をめざす』(大石蘭)など。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)代表。日本ビアジャーナリスト協会副会長。草野球歴35年、年間40試合という現役プレーヤーでもある。

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