実は若者のクビを絞める「既卒3年=新卒扱い」

間違った新卒一括採用批判に警鐘を鳴らす海老原氏

 日本の就活スタイルは、学生たちが一斉に「よーい、ドン」でスタートする「新卒一括採用」が主だが、その採用方法が「若者を苦しめる」と批判されている。「卒業がたまたま不況期に当たり、フリーターや無業者になると、一生、正社員になれない」「企業にとっても原始的で非合理な風習である」というのである。だが、そんな「“にわか雇用論者”たちの論調に、メディアや国民が踊らされている」と警鐘を鳴らし続けているのが、雇用の現場を長年見続けてきたリクルートエージェントのフェロー・海老原嗣生氏。そんな“間違いだらけの新卒一括採用批判”を斬る海老原氏のセミナー「第10回HRmicsレビュー」が、9月15日に大阪で開催された。

 セミナーで海老原氏は、「就活のせいで学業がおろそかになる」「欧米型の若年採用を取り入れていくべき」などといった新卒一括採用批判の誤りを指摘する。なかでも興味深かったのが、最近流行りの「卒業後3年までは、新卒の採用枠に応募できるようにする(既卒3年=新卒扱い)が、就活問題の切り札になる」という論調。これによって、「就職できずに卒業してしまった人が救われる」、という理屈だ。すでに行政まで動きだし、「卒業後3年以内は新卒扱いとすべし」という指針を雇用者に出してしまった(10年11月、雇用対策基本法)。

 ところが海老原氏は、「既卒3年=新卒扱いこそが、負の連鎖を招く」と言う。 例えばトヨタやソニーや三菱商事など超大手が、新卒採用枠に「既卒3年まで応募OK」としたら? 就職できずに無業者となった大学の卒業生が、ラクにそうした会社に入社できるようになるか? 

「そんなはずはありません。この施策で、企業の採用基準が下がるわけでも、採用枠が広がるわけでもない。しかも、『既卒3年』枠でれっきとした若手社会人が大量に応募してくるに決まっています。新卒者やフリーター・無業者よりも、中小企業やいぶし銀大手企業にいた若手社会人のほうが、改めて名刺交換・アポ取りといった社会人マナーを教える手間や費用も省け、企業にとっては都合が良い。結果、ライバルが増え、新卒やフリーター・無業者はますます不利になる、という悪循環が始まるのです」

つまり「既卒3年=新卒扱い」は、事実上の「若年中途採用」になる。この「若年中途採用」というパンドラの箱を開けなかったことで、「ズブの素人である新卒学生を企業が歓迎する」というシステムが奇跡的に続いてきたという。その結果、日本は若者の失業率を、欧米より遥かに低く抑えることに成功してきたのだ

では、就職できなかった人はどう救済されるべきなのか? 若者の本当の敵は誰か? 就職氷河期の真相や、日本型雇用の真の問題を解き明かす海老原氏のセミナーは、9月27日に、東京でも開催される。

セミナーの詳細や参加方法は、株式会社ニッチモのホームページにて
http://www.nitchmo.biz/index.cgi?c=mics_review-1&pk=13

取材・文/安田はつね(本誌)

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