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PC遠隔操作事件の誤認逮捕でわかったこと【天才ハッカー福森大喜氏】

増加の一途をたどるネット犯罪は、その手口も多様化。現実にどんな危険が迫っているかを、“ハッカーの祭典”として世界中から精鋭が集まる大会「デフコン」にインターナショナルチームの一員として出場し、決勝まで勝ち進んだ経歴を持つ福森大喜氏に事例を交えて語ってもらった。 ⇒【危ないネット事件簿2&3】https://nikkan-spa.jp/626792 ◆危ないネット事件簿4:パソコン遠隔操作事件
片山祐輔氏

他人のPCを遠隔操作し、犯罪予告を行ったとして2013年2月に逮捕された片山祐輔氏。1年1か月の間、身柄を拘束されていた

 自分のPCを知らない間に遠隔操作されたりするのもゾッとするが、さらに人生を左右しかねない危険が迫っている。事件は昨年の夏から秋にかけて起こった。攻撃者が5人のPCに侵入。遠隔操作により、それらのPCからインターネット上の掲示板に殺人などの犯罪予告が書き込まれた。これによりPC所有者の4人が誤認逮捕。さらに法廷での決着がついていない片山祐輔氏は、何か月にもわたり勾留され、現在も公判中だ。このパソコン遠隔操作事件について福森氏はこう語る。 「今回の事件でわかったのは、警察や検察が、ネット犯罪に対応できるほどのノウハウを持っていないということ。さらに懸念されるのは、ウィルスに関して基本的なことがわかっていないのに、外部の専門家に助けを求めることなく裁判を進めている点ですよね」  一度逮捕されれば、無罪放免になったとしても、履歴に一生残る傷を負うことにもなりかねない。自分の身に起こるかもしれないと考えると、ネットに接続すること自体が怖くなってくる。 ◆危ないネット事件簿5:スノーデン事件  前述(https://nikkan-spa.jp/626791)してきた攻撃者の手法は、個人の犯罪者が利用するだけではない。アメリカ国防総省の諜報機関である国家安全保障局の外部契約社員であったスノーデンがアメリカ政府機関の諜報活動を暴露した事件は、サイバー戦争がリアルに起こっていることを知らしめた。 「自分たちが考える”正義”のためには堂々と世界のルールを破ってもいい、というのがアメリカをはじめとした他の国での一般的な考え方です。でも日本はそうじゃない。だから中国のような国からはやりたい放題にやられてしまう」
サイバー防衛隊

今年3月26日に発足したサイバー攻撃に対処する自衛隊の「サイバー防衛隊」。陸海空の自衛隊員を基本にした約90人の編成というが、世界トップクラスの攻撃から、日本のサイバー空間を守れるか?

 そんな日本の防衛省でも遅ればせながらサイバー防衛隊が編成された。 「最先端の情報を得るには世界トップクラスのハッカーたちが集まるカンファレンスへの出席が欠かせません。でも今まで自衛隊員に会ったことはないですね。他国の政府機関は優秀な人材を集めるためもあって、カンファレンスはもちろんハッカーの祭典と呼ばれる”デフコン”にも出場しているのに」  残念ながらネットセキュリティに関しては、個人レベルではもちろん、政府機関レベルでも日本人のリテラシーは低いとしか言えないようだ。 【福森大喜氏】 ネットセキュリティのプロ集団、サイバーディフェンス研究所の上級分析官。ハッカーの祭典”デフコン”の決勝出場経験を持つ 取材・文/河原塚 英信 図版/ミューズグラフィック ― 天才ハッカーが選ぶ 危ないネット事件簿5【3】 ―
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