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世界は変えられる!社会起業家とフォトジャーナリストが現場で学んだ「伝える技術」

僕が学んだゼロから始める世界の変え方 大学在学中にたったひとりで始めたNPOを年間予算1億円の団体に育て、講演をとおしてこれまで13万人以上の心を動かしてきた鬼丸昌也さんが新刊『僕が学んだゼロから始める世界の変え方』(扶桑社刊)を上梓した。  地雷除去、元子ども兵の社会復帰支援、大槌復興刺し子プロジェクトなどに取り組み、メディアでも話題沸騰の魂の社会起業家が、同じ立命館大学出身のフォトジャーナリスト・渋谷敦志さんと、人の心に火をつけ、アクションを起こさせる【伝える技術】について語り合った。 ============================================ 渋谷敦志(以下、渋谷):鬼丸さんも僕も、アフリカやアジアで地雷被害の残酷さ、戦争や貧困の悲惨さをつぶさに見てきました。でも、現実があまりにも衝撃的すぎて、僕は一時期、写真をとおして伝えることの意味が見えなくて悩んだ時期があったんです。  鬼丸さんは、13年間も講演を続けていますよね。本を読ませていただきましたが、ずっと希望をもって伝え続けられているなんて、すごいです。
鬼丸昌也さん

鬼丸さんお気に入りスポットの京都・法然院にて。

鬼丸昌也(以下、鬼丸):僕も日々悩むし、へこんでますよ! いつも全力で講演しているので、終わったら無力感を感じるというか、僕の話で何が変わるんだろうと思って、どーんと落ち込みます。 渋谷:どうやって、落ち込みから立ち直ってるんですか? 鬼丸:本にも書いたのですが、今まで、いろんな方が起こしてくださった前向きな変化を思い出すんです。すると、またがんばろうという気持ちになれます。たとえば、寄付をしてくださったり、 不登校だった子が僕の話を聞いて「自分の悩みなんて小さい」と学校へ行くようになったり……。  そんな変化の蓄積がたくさんありますし、それが世界の変化につながると思っています。 渋谷:そういえば、最近まで都内で写真展を開いていて、会場にノートを置いていたのですが、20代の若者たちがびっしり感想を書き込んでくれるんです。しかも実名で。僕は被災者と、また自分自身と対話をするように写真を撮ってきましたが、その写真を見て、彼らも自分と向き合ってくれているんですよね。  その姿をうしろから見ると、写真を通じて変化のきっかけをつくれているのかなと実感することができ、ずいぶん励まされました。でも、自分と対話する力がないと、人を対話させる写真は撮れないですね。 鬼丸:僕も、いつも自問自答しながら講演しています。 渋谷:「手触り感」や「手応え」を意味する「tangible(タンジブル)」という言葉がありますが、今みんなそれを求めているんじゃないかな。  この目で現地を見てきた人間として、写真を見た人にタンジブルな感覚をもってもらうことを今まで僕は目指して来たし、これからもやっていきたいですね。大きなテーマだしむずかしいことですが、だからこそ面白いし、人の心を動かす仕事の醍醐味ですからね。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=654735
アンゴラ

ゲリラ組織に抵抗して腕を切断されたアンゴラの男性と、地雷の被害者たち。photo:Atsushi Shibuya

鬼丸:僕の講演にも渋谷さんの写真にも、「ざらつき」があると思うんです。どちらも扱っているテーマは重く、決してすんなり受け入れられるものではない。  でも、どこか引っかかりがあるもの、ざらついているもののほうがリアルだし、相手に伝わる気がします。 渋谷さん(右)と鬼丸さん渋谷:僕らの仕事は、たとえると種まきみたいなものですが、変化の種を心の土壌に受け取ってくれている人たちがいることに可能性を感じます。僕が現地からわりきれなさとともに持ち帰った宿題を、写真を見たみなさんにも、それぞれの人生のステージに持って帰ってもらっている感覚です。 鬼丸: 僕らがそうだったように、一人ひとりが変化を起こすためには時間もかかるし、状況によって発芽時期も育ち方もさまざまだとは思うんです。でも、あきらめないで、種をまき続けるということが大事ですね。 ⇒【後編】「人間の善と悪とは?社会起業家とフォトジャーナリストが問い続ける」に続く https://nikkan-spa.jp/654750 【鬼丸昌也(おにまる・まさや)】 NPO法人テラ・ルネッサンス理事・創設者 1979年、福岡県生まれ。立命館大学法学部卒。高校在学中にスリランカのアリヤラトネ博士(サルボダヤ運動創始者)と出会い、「すべての人に未来をつくりだす能力がある」と教えられる。 2001年、初めてカンボジアを訪れ、地雷被害の現状を知り、「すべての活動はまず『伝える』ことから」と講演活動を始める。 同年10月、大学在学中に「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」をめざす「テラ・ルネッサンス」を設立。 2002年、(社)日本青年会議所人間力大賞受賞。地雷、子ども兵や平和問題を伝える講演活動は、学校、企業、行政などで年に100回以上。遠い国の話を身近に感じさせ、すべての人に未来をつくる力があると訴えかける講演に共感が広がっている。 ●テラ・ルネッサンス 公式ホームページ http://www.terra-r.jp 【渋谷敦志(しぶや・あつし)】 高校生のときに戦場カメラマン・一ノ瀬泰造の著書に出会いカメラマンを志す。立命館大学大学在学中にブラジルに渡り、法律事務所で研修する。卒業後、フリーのフォトジャーナリストとして活動開始。1999年MSFフォトジャーナリスト賞、2000年日本写真家協会展金賞、2003年コニカフォトプレミオ、2005年第30回「視点」賞および30回記念特別賞、2006年第31回「視点」奨励賞など。共著『ファインダー越しの3.11』(原書房)、『シャプラニール流 人生を変える働き方』(藤岡みなみ、2025 PROJECT、渋谷敦志著、エスプレ)。 <構成/江藤ちふみ、写真/渋谷敦志>
僕が学んだゼロから始める世界の変え方

メディアでも話題沸騰の魂の社会起業家が、人の心に火をつけ、アクションを起こさせる【伝える技術】を明かす

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