なぜカセットテープはノスタルジーを喚起させるのか?【水道橋博士×西寺郷太】

水道橋博士×西寺郷太

6/24に発売されたSPA!の「カルチャー★フェス」では、編集長と連載作家による「洋楽ミステリー制作秘話」も読める!

 近年、音楽の視聴方法はもっぱらダウンロードが主流。かつてはCDやMD(ミニディスク)などいろんな記憶媒体が使われていたが、今は携帯やiPodを使う人が圧倒的多数だろう。ただ、そんななかで最近、CDよりも前に「混じりっ気なしの大主流」であったカセットテープが改めて注目されているという。

 以前、日刊SPA!の記事でも、カセットテープについて取り上げると注目度爆発(※)。カセットでのリリースに力を入れているインディーズレーベル「ZOMBIE FOREVER」の森幸司氏は、「アメリカのインディーズレーベルやバンドが、カセットテープにダウンロードコードを付けて売る方法が流行っていて、日本でも音楽好きの人の間で徐々に注目が高まっている」と語っていたが、ユーザー側からも「カセットってやっぱり、“あのころ”を思い出すアイテムなんです。友達から借りたCDをテープに録音したり、車で流すために自分だけのテープを作ったり。いまだにカセットを見るとそんな思い出が蘇る」(40代・男性)などの声が。もちろん、音質などはデジタルに比べて劣るのだろうが、カセットの持つノスタルジックな魅力はそれを補って余りあるモノなのだろう。

※なぜ今さら? 若者がカセットテープに注目する理由
http://nikkan-spa.jp/623613


 ミュージシャンである西寺郷太氏と、お笑い芸人の水道橋博士氏も、そんなカセットテープの魅力に傾倒する人物だ。西寺氏は幼少期に購入した洋楽のカセットテープなど数百本を、今でも大切に保管しているという。

西寺「マイケル・ジャクソンやワム!、ビリー・ジョエルなど、小学生の頃に購入したカセットテープがいまだに手元にあります。日刊SPA!の記事も読みましたけど、ダブルラジカセでダビングしたり、レタリング作業をするなど、カセットテープには独特のノスタルジーを呼び起こす何かがあると思いますね。数年前、当時使っていたダブルラジカセ『SONY CFS-W80』を栃木の工房に依頼して修理したこともあります」

 一方、水道橋博士は師匠であるビートたけしがパーソナリティを務めた伝説のラジオ番組「オールナイトニッポン」の“同録”を収集中。もちろん、録音されている媒体はカセットテープだ。

西寺氏所有のカセットテープの一部

西寺氏所有のカセットテープの一部

水道橋「それこそ、収集量としては『日本一だ』と言えそうなくらい、膨大な量がありますよ。今、94%くらいまでコンプリートしていて、全部で500本あるかな。俳優の西島秀俊さんもたけしさんのオールナイトニッポンのファンで、西島さんがファンのコレクターから借してもらった大量のテープを僕がさらにお借りして、今、データ化してる最中です」

 そんな2人はカセットテープの“うんちく”でさらに盛り上がる。

水道橋「昔、ナマズのロゴが目印だった“FMレコパル”に付いていたカセットレーベルを切り取ってレタリングとかしてたなぁ」

西寺「金とエンジ色という『maxell UD II』のカラーリングが、同じ年の3か月くらい前に登場したファミリーコンピュータのカラーリングと似てるんですよ。『これファミコンやん!』って。あと、今年ソロアルバムをリリースしてサイン会をしたとき、maxellの方がサイン会に来てくれて、会社に残っていたUD IIの最後の1本を渡してくれました。あれは嬉しかったですね」

 ちなみに、西寺は6月25日に発売された初の描き下ろし長編小説『噂のメロディ・メイカー』内でも、物語の中核にカセットテープを絡めている。「ワム!のある曲に隠された日本人ゴーストライターの噂を追う」という物語であり、表紙カバーには「maxell UD II」が燦然と輝いている。

西寺「この本のテーマは“ワム!の偉大さを再確認すること”なんですが、80年代当時、僕がワム!のことを知ったのは、まさしく『maxell UD II』のCMでした。彼らの曲、『バッド・ボーイズ』が流れるなか、テレビ画面の左右両端から黒と赤のスーツを着たふたりが宙を浮いて飛んでくる……。ワム!の物語を一冊の本にまとめ、maxellさんから協力をいただいてUD IIのデザインをこの本のカバーに入れられたのは、ほんとに嬉しいです」

 実はこの物語、そもそもは水道橋博士が編集長を務める「水道橋博士のメルマ旬報」の連載から生まれたもの。もちろん単行本用に大幅な加筆修正や追加取材が加えられてはいるものの、1年にわたってメルマガで連載されていたこの物語の最初の読者は、ほかならぬ水道橋編集長だった。

 すでに本作を読み終えた水道橋博士は「最後のほうで書かれている、カセットテープを巻き戻して、キュルキュルという音と過去の記憶の『巻き戻し』をオーバーラップさせるシーン。あそこはいいシーンだよね」と改めて感想を話す。

西寺「今って『巻戻し』って言わないんですよね。『早戻し』なんだそうですよ。音も鳴らないし、テープを巻き戻さないから。『早送り』『早戻し』というそうです。『巻き戻し』はカセットだからこそできた言葉。あの、キュルキュルキュルっていう嫌な巻き戻し音は、聞くたびに懐かしく優しい気持ちになれますよね」

 実家の押入れなどに当時のカセットテープを保存してあったなら、ときには再生し、当時の音と思い出を蘇らせてはいかがだろうか? <取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/水野嘉之>

※6/24発売の週刊SPA!「カルチャーフェス」では、西寺郷太氏の長編小説『噂のメロディ・メイカー』に関する水道橋博士との対談が掲載されています

【水道橋博士】
62年、岡山県生まれ。87年に浅草キッドを結成。『水道橋博士のメルマ旬報』(月二回発行)では編集長を務める。

【西寺郷太】
73年、東京生まれ京都育ち。ノーナリーヴスのシンガー。前著は『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』(新潮文庫)、『マイケル・ジャクソン』(講談社新書)

●『噂のメロディ・メイカー』西寺郷太
「ワム!の〈ラスト・クリスマス〉をゴーストライターとして作曲したという日本人がいるんです」――。西寺のもとに届けられたひとつの噂を巡り、足掛け6年を賭してたどり着いた衝撃の真実とは!? 現役音楽家ならではの圧倒的な知識と偏執的な取材をもとに自ら綴った、もう一人のマイケル“ジョージ・マイケル”の知られざる素顔に迫るノンフィクション風小説。現在発売中、1620円(税込み)、扶桑社刊

●メルマガ情報『水道橋博士のメルマ旬報
現在40人の連載陣がそろい、国内最大規模を誇るメルマガ。月2回発行、月額500円。6月25日配信の最新号では『噂のメロディ・メイカー』の第一章がまるまる読めるキャンペーンを実施中!

噂のメロディ・メイカー

現役音楽家である著者ならではの圧倒的な知識と豊富な取材をもとに本人自ら綴った前人未到のノンフィクション風小説、ここに誕生

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