スポーツ

日本人は幸運の使者?リオの街でブラジル代表戦を観戦【W杯現地レポ】

 現地時間28日、準々決勝の第1戦が行われ、ブラジルはチリにPK勝ちという薄氷を踏む勝利を飾った。  この試合をリオデジャネイロで見ていた記者。この日のリオは土曜日。昼の1時に試合が行われるということで、ナタウの時同様、試合開始前から街中に出て様子を見てくることにした。  午前11時、記者が宿泊しているフラメンゴ地区の街並みは普段とあまりかわらない。サルバドール、ナタウ、クイアバでブラジル代表戦を「体験」した身としては拍子抜けである。ユニフォーム姿の人はちらほら、商店もギリギリまで営業するようで、「試合が終わったらまた開けるよ」とスーパーの警備員は言っていた。  午後0時半。両替や買い物を終えて一旦宿に戻った記者。宿では5時からリオのマラカナン・スタジアムで行われるコロンビア×ウルグアイを観戦するためにやってきた、両国サポーターが、勝ったら次戦で激突する相手を見ようとテレビを囲んでいる。  実はこの日のリオは「慌ただしい」1日だった。1時~ブラジル代表戦、5時~コロンビア×ウルグアイ戦と「ビッグイベント」を2つも抱え、街は午後から急激に雰囲気を変えようとしていた。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=671191  12時45分、キックオフ寸前に街なかに出ると、幹線道路には車は走っているものの、交通量の比較的多い道路でも車はまばら。「バンバンバン!」とお馴染みの音だけの花火があちこちで上がり始めた。大都会のリオも記者が見てきた3都市同様「有事」である。  1時キックオフ。一斉に花火があがる。音がやたらでかいので心臓に悪い。記者は街角にある1軒の居酒屋のテレビで「タダ観戦」。街頭テレビと化した居酒屋には多くの人だかりができているのだ。
ブラジル代表

人っ子ひとり歩いていないのに、響き渡る歓声。高層マンション群からの声が静まり返った道路に響いてちょっと怖い

 前半18分にダビド・ルイスのゴールでブラジル先制!「うおー」と上がる地鳴りのような声。これは居酒屋の客の声ではなく、周りの高層マンションから一斉に上がる歓声にびっくり。普段なら車の騒音でかき消される人の声が、ゴーストタウン化した街中によく響くのだ。  しかし……ミスからチリに追いつかれると、居酒屋の雰囲気は一変。ここではとてもお伝えできない汚い言葉がテレビに向かって浴びせられる。後半はチリに攻められる時間が多く、居酒屋の客のビールを持つ手も止まり、腕組みをする人々が多くなってきた。  前後半で勝負がつかず延長戦へ。延長戦もチリに防戦一方のブラジル代表。ついにはPK戦にもつれ込んでしまった。頭を抱える客たち。「日本人なんかが見てるからだよ!」。酔っぱらいから浴びせられた理不尽な言葉に身を固くする。
ブラジル代表

店を変えようと歩いていると人だかりが

 ちょっとヤバい雰囲気なので店を移る。この時点で15時。記者はこのあと17時から始まるマラカナンスタジアムの試合に行かなければならない。PK戦が終わったらすぐに地下鉄に飛び乗れるよう、駅に近い「穏便そうな居酒屋」でPK戦を観戦することにした。  PK戦。居酒屋の前のバス停に止まったバス。なんと運転手は運行をやめ、乗客と一緒にテレビを見はじめた。ここでも固唾を飲んでいる客たち。だれもビールを飲んでいない。なぜか日本代表のユニフォームを来たブラジル人の若者から「おー!日本人!勝利を祈ってくれよ!」とガッチリと肩を組まれる。
ブラジル代表

日本代表のユニフォームを纏っった若者にやたらと声をかけられた

 先攻はブラジル。1本目成功!「うぉーー!」。若者に抱きつかれた。「お前がいるから入ったよ!」。現金なものである。後攻チリ。1本目失敗! 「お前が幸運を運んできたな!!」と抱きつかれる。ブラジル2本目失敗。「ウワー!バカヤロウ!」。チリ2本目失敗でブラジルリード。「お前が運を持ってきたな!」を肩をガッチリ組まれる。ブラジル3本目、チリ3本目は成功。ここまででブラジルは1点リード。次のフッキが決めれば有利に……。しかし、まんまとキーパーに止められ、大ブーイング。「お前、帰れよ!」若者がフッキに浴びせた罵声は記者にも。「お前も、日本に帰れ!(笑)」。ブラジルのFWフッキと共に罵声を浴びるのは光栄なことである。4本目チリ成功。これで2‐2。勝負の行方は最終キッカーへ。  ここで真打ちネイマール登場。居酒屋や周辺のマンションから一斉に聞こえるネイマールコール。記者も大声でネイマールコールを。ブラジルが負けたらこの若者たちに何をされるかわからない。必死に応援するのみだ。  ネイマール成功!「ォォォォオオオオ!!」地鳴りのような歓声。これでGKのジュリオ・セザールがチリの5人目を止めればブラジル勝利である。「ジュリオ・セザール!ジュリオ・セザール!」大合唱のなかチリのハラが蹴ったボールは右ポストを直撃! 「ウオオオオオオ!」その瞬間ブラジルの勝利が決まった。周りは狂気乱舞。花火は爆音を轟かせる。「ジャポーーン!アリガトーー!」いきなり抱きつかれ、胴上げされる記者。初戦の日本人レフリーによる「微妙な判定」でブラジルにとって日本人は「勝利の女神(?)」と思われているのである。 ※【動画】5人目成功~勝利まで https://nikkan-spa.jp/671186
 その後も何度も抱き上げられ、記念撮影を頼まれる記者。この時点で15時50分。マラカナンスタジアムに向かうため記者は脱兎のごとくその場を逃げ出した。 ⇒【後半】『舌禍、乱闘!マラカナンで南米同士の対戦』に続く
https://nikkan-spa.jp/671211
<取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)>
おすすめ記事
ハッシュタグ