マー君、好調の秘密は投球の●●●●にあった

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 4月のメジャーデビューから破竹の快進撃を続け「ヤンキースの救世主」「メジャー史上最高の新人」などすでに多くの称号を得たヤンキース田中将大投手。早くも新人王とサイ・ヤング賞の有力候補に名を挙げられ、今季のメジャーで最も熱い注目を集めている。マウンドに上がる度に強打者たちを次々と三振に切って取るその圧巻の登板試合は「タナカ・タイム」と名付けられ、ニューヨークの名物となった。  しかし、メジャーの強打者達はなぜここまで田中を打てないのか。対戦したメジャーの打者による田中評から考えてみた。 ※【前編】各打者の田中評⇒https://nikkan-spa.jp/676109  田中と対戦した打者が語った代表的なコメントを見ると、彼らは口をそろえて田中の変化球に言及している。  変化球のコントロールが驚くほど見事で、彼らにとってはこれまで見たことがないというくらいのレベルだということが、これらのコメントから伝わってくる。つまり彼らにとって、田中はメジャーの中ではかなり異質な存在なのだ。  そして、ブルージェイズ主砲バティスタのコメントが、我々の謎をさらに解いてくれている。彼はこう話している。 「変化球のコントロールが抜群に良いし、彼は意図的に打者に変化球を振らせようとして投げている。カウントを3-1や2-0、3-2などと悪くして次にどうしてもストライクが欲しい場面でも、彼はよく変化球を投げてくる。メジャーでは、そんな投球スタイルの投手はほとんどいない。そんな投球をするメンタリティの投手とはまず対戦することがないので、厄介なんだ。それに彼は辛抱強い投球をしてくるし、辛抱強さでも彼には負けていた」  つまり田中の投球は、メジャーの投球セオリーとはまったく異質のもの、メジャーの中で一人だけ違うリーグの野球をやっているようなものなのだ。  これまで野茂英雄氏から始まり、多くの日本人選手がメジャーに移籍し、それを通して我々は日本と米国の野球文化の違いに触れる機会を得てきたと思う。恐らく違いが最も顕著なのは内野守備で、例えばアメリカの野球では内野手が左側に飛んできた打球を逆シングルで捕球するのが当たり前だが、日本では少年野球のときから回り込んで正面で捕球するよう教え込まれる。メジャーでプレーしている選手にとっては、回り込んで捕球するなど考えもつかない、あり得ないことという感覚だろう。  これと同じように、田中のようにカウント2-0や3-0という悪いカウントで、どうしてもストライクを取りたいときに変化球を投げてくるのは、やはりメジャーの選手にとって「考えもつかない、あり得ない」ことなのである。メジャーにもごくたまに、ストライクを取りたい場面で変化球を投げる投手はいるが、常にそれをする投手はいない。たまにそれをやると、米国ではよく「fools(騙す)」という言い方をする。  バティスタのように本塁打を量産する打者は、ある程度狙い球を絞って強振してくるため、田中の投げる球が打てない。恐らく長年の経験で植えつけられてきたであろう「このカウントではこれを投げてくるのが常識である」という固定観念は、なかなか変えられるものではないのだろう。朝起きたらすぐに歯を磨く習慣の人がずっとそれを変えられないというのと同じくらい、体に染みついていて変えられないことなのかもしれない。  こうしてメジャーの強打者たちは、田中にやられてしまう。そしてその異質な投球は、田中が変化球をどんなときでも完璧にコントロールする能力があればこそなのだ。 <取材・文/水次祥子>
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