飲食業界の「長時間労働とサービス残業」がなくならない理由

アベノミクスで景気が上向いたと言われるが、賃上げやボーナスの増加でホクホク顔なのは一部の大企業だけ。その恩恵に与れず過酷な状況にあえいでいる業界は多い。共通するキーワードは「長時間労働」と「定額残業代」だ。介護、飲食、IT、アパレルetc.の悲惨な経営環境、労働実態をリポートする!

◆「イタメシ屋に改装する」突然の転職勧告に呆然【飲食業界】

飲食業界 日本フードサービス協会の調査によると、’13年の全業態トータルの年間売り上げは、店舗数の増加と客単価上昇から100.7%と2年連続で前年を上回ったものの、業態別では「ファストフード」(99.5%)が2年ぶり、「パブ・居酒屋」(96.5%)は5年連続の下落となった。

「外食産業でも特に厳しいのが居酒屋です。ライフスタイルの変化で『おひとりさま』向けのセールスポイントがない店舗は生き残れません。もはや“無料”や“激安”の謳い文句では客が来ないのです」と話すのは、飲食チェーンに詳しい経営コンサルタントA氏。つまり、業態そのものがリスキーになっており、飲食チェーンのリニューアルや業態の変更が多いのはそのためなのだ。そのしわ寄せを受けるのは経営者だけではない。

 千葉県・埼玉県を中心とした居酒屋チェーンで厨房、フロアの応援要員、指導係として働いてきた志賀隆さん(仮名・38歳)は、今年4月以降の大幅減収を理由に自主退職を促された。

「月給は30万円ほどもらっていたのですが、売り上げに応じて支払われる業績給が付かなくなったので、数か月で20万円まで落ちました。ボーナスもカットです」

 エリアマネジャーから「フルで出勤する必要はないから、週3日で働いてくれ」と言われ、「有休を使えるか」と聞くと「欠勤扱いでお願いします」とむちゃくちゃな対応を受けたという。

「7月に入ってシフトを見ると、自分のところだけが空白になっていました。エリアマネジャーに問い合わせると『来月からイタメシ屋に改装するので、転職先を探したほうがいいかもね』と面倒臭そうに言われ、退職金の割り増しの話を切り出されました」(志賀さん)

 さらに、「飲食業界は長時間労働とサービス残業の巣窟と言っていいかもしれません」。こう断言するのはサービス残業の未払い請求を専門に取り扱う弁護士のB氏だ。

「飲食店は客待ちの待機時間が多いので、経営者の本音は『接客時間だけが労働』です。例えば、月45時間とか月60時間の時間外労働の割り増し賃金をあらかじめ基本給に組み込む『定額残業代』を導入して人件費を抑える企業がかなりあります。最低賃金で換算している場合が多く、長時間労働でも労務コストが抑えられる『悪夢のサイクル』が完成します」

 このため離職率は高いまま企業はまともな採用活動ができず、欠員補充に汲々。研修もほとんどない状況で労働者は過労とストレスにさらされ、次なる犠牲者が生み出されるジレンマに陥っている。

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