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「俺のフレンチ」など、高原価店が日本で成り立つ理由

一般的に30%が目安だといわれる外食店の原価率。昨今の“コスパ志向”の高まりや原価率35%を超える高原価店の繁盛も相まって注目を集めることも増えた「原価」だが、さまざまな要素が複雑に絡み合って成り立っており、その世界は実に奥深い。原価を知ると、普段、なにげなく利用している外食店の知られざる新たな一面が見えてくる ◆「俺のフレンチ」etc. 高原価店が成り立つ理由 高原価店が成り立つ理由 SPA!ではこれまで外食店における原価の概要(https://nikkan-spa.jp/710221)を見てきた。それでは、業界全体のトレンドとしてはどうなのだろう。外食マネジメント誌『月刊食堂』編集長の通山茂之氏によれば「この10年で原価率35%以上の高原価の店舗が徐々に増えて、現在ではひとつのビジネスモデルとして定着した」という。 「35%を超えると誰もが“お得感”というか価値を感じやすくなる傾向が強いんです。バブルの頃は食材原価率が30%を超えると経営指標として失格といわれていましたが、例えば『俺のフレンチGINZA』の『牛ヒレとフォアグラのロッシーニ』は原価率90%超の1598円。普通のフレンチなら5000円取ってもおかしくないメニューです。フォアグラなどわかりやすい高級食材を使ったメニューは、原価率で考えるとやはり“お得”には違いありません」  激化する高原価バトル。だが、高原価にもかかわらず、利益をあげる仕組みとは何か? 「高原価で利益を上げるセオリーは、『回転率を上げる』『人件費、家賃などの固定費を下げる』『価格にメリハリをつけてトータルでの原価率を下げる』。一日客席回転が最低でも2.5回転以上を前提としている『俺のフレンチ』などはこうした工夫を徹底した業態といえるでしょう」  最近では、個人経営でも高原価率の店舗が増加傾向にあるという。 「確かに個人店では、チェーン店のようなスケールメリットを生かした仕入れはできません。そのぶん、ターミナル駅から離れた立地にすることで賃料を駅周辺の2分の1から3分の1程度に抑え、食材に投資して高原価を実現しています。最近では、アクセスが多少不便でも食べログなどを見てから訪れるお客さんを見込めますから」  例えば、渋谷界隈でも駅の近くはチェーン店ばかりだが、神泉や桜ヶ丘方面など、駅から少し離れると個人経営で評判のいい高原価店が多くなる。 「最近ではチェーン店でも高級食材を使った料理を出すケースも増え、個人・チェーンの枠を超えて、『高原価』はもはや日本の外食産業の経営モデルのひとつとして一定の地位を確立しています」  もっとも高原価店は他のコストを削って成立する業態だ。人件費を削れば「ブラック」になってしまい、長続きは難しくなる。今後、高原価店はどうなっていくのか。 「実は日本の外食店のボトム客単価は先進国のなかでは飛び抜けて安いんです。短期では客単価を上げることでより経営が安定していくと思います。長期的には来店頻度を増やして、外食マーケット全体を大きくしたり、生産性を上げる仕組みづくりが必要になってくると思います」 【通山茂之氏】 とおりやま・しげゆき。大学卒業後、柴田書店に入社し、外食産業の取材を続ける。’11年から『月刊食堂』編集長 ※写真はイメージです ― [外食店の原価]教えます【10】 ―
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