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「学歴なんて~」と言いつつこだわる人々の心理とは

 生き方や思想に関わるものは意識の個人差が大きい。その一つ、学歴への日本人の意識について、『人はなぜ学歴にこだわるのか』という著書を持つ小田嶋隆氏に聞いた。
小田嶋隆氏

小田嶋隆氏

「表向きでは『学歴にこだわる人を見ると引きますよね』とでも言っておくのが平均的な態度でしょう。ただ、自分の子供が中卒で社会に出ようとしたら、大半の人は『自分はいいけど世間が……』と説得するはず。そもそも『学歴なんて~』と言う人は、大学の序列程度の問題で『差がない』と言っているだけで、中卒と大卒の差などは考えていない場合が多いでしょう。誰もが内心では、学歴の有効性を知っているわけです」  就職活動や就職後も、学歴の違いが物を言う場面は確かにある。 「ただ企業は、差別というより効率で学歴を重視している。たとえば100人から50人を選抜するとき、コミュ力で選べば評価がブレるし選抜に手間もかかる。家柄だと差別と言われるでしょう。一方で学歴なら、さほど文句は言われず手間もかからない。学歴での選抜は“あらゆる不平等の中でいちばん平等な不平等”なんです」  なお高学歴=優秀とは限らない実情が「学歴なんて~」という意見の支持背景にありそうだが……。 「ただ大卒者は、日本という“空気読み社会”で空気を読んで大学に行った人なので、ホワイトカラー的価値観を身につけた安全な人なのは確か。いくら有能でも、勝新や永ちゃん的な人に入社されては企業も困るわけです(笑)」  そして「学歴なんて~」という思想の支持基盤として、小田嶋氏は昨今脚光を浴びる“ヤンキー”の存在を挙げる。 「彼らが支持するEXILEなどには、ホワイトカラーの生き方には回収されない現場主義・実力主義の思想があります。そもそも芸能界が学歴度外視のヤンキー的な世界であり、彼らは『学歴なんて~』という人のロールモデルにもなります。一方ホワイトカラー側も、芸能人の不祥事や転落を見て、『カネがあっても教養のない人はああいう末路になる』という物語を消費しているわけですが(笑)」 【小田嶋隆氏】 コラムニストとしてコンピュータ、ネット、政治、スポーツなど多岐にわたる事象について執筆。近著に『「踊り場」日本論』(岡田憲治氏との共著) 取材・文/加藤カジカ 鈴木靖子 田山奈津子 藤村はるな 古澤誠一郎 山脇麻生 小原美千代(本誌) イラスト/花小金井正幸 ― 「大した問題か否か」は人によってこんなに違った!【7】 ―
「踊り場」日本論

右肩上がりの指向から「踊り場」的思考へ

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