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「脱・大手電力」が進む企業。“安さ”だけでない新電力が選ばれる理由

大手電力会社が電気料金値上げや原発再稼働に邁進しているなか、「脱・大手電力会社」の動きが急速に進んでいるという。その理由は何なのか? 自治体、企業、一般家庭それぞれの「電力シフト」最前線をリポートした ◆「料金の安さ」「自然エネルギー推進」を理由に“脱・大手電力”が進む企業
天然ガス

天然ガス:化石燃料だが石炭・石油より温暖化への影響は低い(写真/エネット)

 新電力全体の電力供給量の約5割と、圧倒的なシェアを誇るのが「エネット」だ。みなと銀行が「エネットへの切り替えで年間2300万円を節減できた」と発表するなど、安価な電気を求める自治体や企業の需要を背景に、契約数は右肩上がり。’12年の約1万件から今年は約1万9000件と倍増している。  大手電力会社は値上げの一途だというのに、なぜ安くできるのか。同社企画営業部に聞くと「人件費などの一般管理費が少なく、後発のため最新鋭の高効率な発電施設を使えることでしょう」とのこと。 「大手電力は一般管理費の経費に占める割合は十数%ですが、当社は1%ほど。また当社の株主であり、有力な電力供給元である東京ガス・大阪ガスは天然ガス発電に、同じく株主のNTTファシリティーズは太陽光発電に力を入れているというのも大きいでしょう」(エネット企画営業部)  電力が不足した場合、節電を「要求」するのではなく、メリットを持たせるところも特徴的だ。 「節電ポイントを提供し、翌月の電力料金から値引きします。無料の省エネ相談もしており、例えばNTTファシリティーズとの提携事業では、マンション住人がお互いに節電量を競い合うなど、ゲーム的な要素も交えています」(同)  エネットとNTTファシリティーズは楽天と提携し、節電量に応じて楽天スーパーポイントが加算されるサービスを今夏から試行導入。’16年以降、一般家庭も電力購入先を選べるなど「電力自由化」が進むことを念頭においた試みだ。  企業の選択理由は安さばかりではない。エネットと契約した城南信用金庫の担当者は「結果的に電気代は安くなったが、そのことが目的ではない」と言い切る。 「原発に頼らず、自然エネルギーや民間の余剰電力を販売していることが切り替えの理由です」  大手電力各社は原発再稼働に血道を上げているが、’16年の一般家庭向けへの新電力の市場参入後は、「脱原発」「自然エネルギー推進」を理由とした新電力への顧客流出が続出することもありうる。今後、大手電力会社もこれまでのような「殿様商売」を続けていくのは難しいだろう。 【電力事業に次々と参入する企業】 <東京ガス> 「チャレンジ2020ビジョン」で、天然ガスの普及・拡大とともに、国内発電事業について’20年までに300万~500万kW(他社持ち分含む)に拡大することを掲げる。風力や太陽光による発電にも参画中 <日本生協連> 原発に頼らず、自然エネルギーによる自家需要を賄うため、新電力会社「地球クラブ」を今年6月に設立。太陽光発電やバイオマスなどを中心に調達し、日本生協連事業所などへ供給を行う予定 <神戸製鋼> 阪神淡路大震災での停電の経験から自家発電の規模が大きかった神戸製鋼は、栃木県真岡市で発電能力60万kW級2基の天然ガス火力発電所の建設を準備中。事業開始後は東京ガスに電力供給することで合意 <住友グループ> 住友林業は、住友共同電力などと連携して’11年2月から、川崎市で出力3万3000kWの大型バイオマス発電所を稼働。森林が多い北海道でもバイオマス事業の拡大を狙う。受け皿の北海道も雇用拡大に期待 <大和ハウス> ’16年の電力小売りの全面自由化後、同社が管理中の賃貸住宅約40万戸の入居者に向けて、電力供給サービスを提供する。大型マンション向けにも、電力を一括受電して各戸に供給する事業も展開するという <オリックス> 北海道のメガソーラーから国が定めた基準より高値で電気を買い取り、これまで北海道電力が独占していたシェアの一部を奪う。買い取った電気は新電力に売電。太陽光発電事業に大規模投資も ― [脱・大手電力会社]はここまで進んでいた【2】 ―
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