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忘年会をうまく取り仕切るにはどうしたらいいか【会社員29歳の悩み】

【佐藤優のインテリジェンス人生相談】 “外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える! ◆「忘年会をうまく取り仕切るにはどうしたらいいか」
紅白(ペンネーム)会社員・男性・29歳
忘年会をうまく取り仕切るにはどうしたらいいか【29歳会社員の悩み】 私は、年末が苦手です。社内で一番若いので毎年のように忘年会の幹事をやらされています。忘年会にすべての社員が集まらないと「お前の仕切りが悪い」と言われ、付き合いの古い取引先の方などがまったく参加されないときは「お前の人望がない」と言われ、忘年会中も気が休まるときがありません。いまだに一発芸などもやらされます。  毎年12月になると、どうやって忘年会をうまく仕切って盛り上げるか考えながら仕事に忙殺され、何も浮かばないため、結局ボロクソに言われます。とりとめのない話になってしまいましたが、佐藤さんは数多くのパーティに参加されてきたと思います。その経験から、社内の行事ごとをうまく取り仕切り、さらに場を盛り上げる演出などありましたら教えていただけたらと思います。 ◆佐藤優の回答  忘年会で「あっと言わせたい」、幹事として「よく仕切った」と評価されたいという気持ちを捨てることが重要と思います。臨済宗妙心寺派の僧侶で小説家の玄侑宗久氏がこう言っています。 <諦めず、しかも計画どおり遂行できずに暗くなっているのが、最近のビジネスマンではないだろうか。おそらくその最も大きな理由は、彼らが諸行無常の世界を計画や予定という想定のうちにむりやり押し込み、しかも自分自身のことも想定内の存在として見くびっているからだろうと思える。  最も明るくあきらめるべき事柄が、仏教者にとっては「空」と呼ばれる。それについて書かれた経典が『般若心経』である。  簡単に言ってしまえば、空とは、あらゆる現象が縁起のなかで生起し、無常のうちに変化するということ。つまり、何事にも「それ自体」ということがない、ということだ。  だから本当は、今月初めの計画も今朝立てた予定もすでに過去の残骸であり、そんなことを考えた自分だって変化している。  しかしこれを実感するのはとても難しい。ビジネスマンならずとも、みな「わたし自身」を信じ、役職や立場という縁で結ぼれた虚像を実体であるかのように演じつづける。しかも本来は時と場合に応じて無常に演じ分けるべきところ、硬直した「わたし自身」のまま家に帰り、食事中でもお風呂でもそのままで通そうというのだから不自由きわまりない。いつも変わらぬ確かな「わたし自身」を構築しようとする真面目な人が、それに失敗してウツになったりする。>(『風流ここに至れり』216~217頁)  忘年会は楽しむためにあります。あなたに幹事役が回ってくるのは、人望があるからです。職場でそのような評価を受けていることを肯定的にとらえましょう。おいしい料理と飲み物を出し、かつ適正価格の店で忘年会をセッティングすれば、任務は済んだと割り切ることが重要です。  お昼休みに、忘年会の候補となる店で昼食をとるようにしてみましょう。私の経験では、ランチがおいしい店は、忘年会のコース料理も満足のいくものを出します。チェーンの居酒屋でも、店長がしっかりしているところのランチはおいしいです。ノンアルコールビールを飲み放題メニューに入れている店は、だいたい味がいいです。足できちんとかせいで、おいしい店を選べば、参加者が文句を言うことはありません。  一発芸などを強要されても、嫌ならば、「私にはできません」と断ればいいです。食べ物と飲み物が基準に達していれば、一発芸をやらないからといって忘年会がぶち壊しになることはありません。それから、酒の一気飲みは、急性アルコール中毒で命にかかわることがあるので、絶対にやめましょう。  あまり難しく考えずに、気軽に幹事の仕事をすればいいと思います。 【今回の教訓】 人望があるからこそ幹事役が回ってくる ◆募集 佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。 ⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form 【佐藤優】 ’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『読書の技法』『日本国家の神髄』など著書多数 (※写真はイメージです)
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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福島県三春町の僧侶にして芥川賞作家である著者によるエッセイ集。流動する現実のなかで、“ゆらぎ”つつも心の重心を取り直す禅の智慧をひもとく。’14年刊

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