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墜落事故のエアアジア機に乗ってきた。乗継地で14時間待ち…

乗継地で14時間待ち!墜落事故の余韻冷めやらぬエアアジア機に乗ってきた 2014年12月28日にインドネシア沖で墜落したエアアジア機。依然として事故原因の究明が進められているが、年末年始のバリ島への旅行を計画し、エアアジアのチケットを手配していた記者は、同機に搭乗する機会に恵まれた(!?)。  日程は12月30日-1月4日という超ハイシーズン。航空券を手配したのは9月半ばであったが、JAL、ガルーダインドネシア航空の直行便は往復25万円。それに対して、エアアジアのFLY-THRUというトランジット可能の乗り継ぎサービスを利用すれば、11万円と半額以下。年末の海外旅行をその値段で行けることが決め手になったのは言うまでもない。  もちろん出発直前の事故であっただけに、不安が無いといえば嘘になるが、そこはほかの交通機関に比べて事故・死亡率ともに少ない航空機。墜落事故の恐怖は単純な確率論で払拭されるものではないが、たとえば「世界一危ない航空会社」と揶揄されるキューバ航空であっても、「100万便で何便分の死亡者が出るか?」を算出した事故死亡率は18.53(2013年10月時点でのエアセーフ調べ)。「5万回に1度の惨事が立て続けに起きるはずがない」と自分を奮い立たせ、出発前日に荷造りを開始。すると、エアアジアから1本のメール。 「12月30日 10時成田発のD7529便は機材到着遅れのため、3時間出発が遅れます」  その時点では「前日忘年会だから、早起きしなくてラッキー」くらいに思っていたのだが……。  まずは往路。乗り心地は、CAの接客、機内サービスともに何の不満もなく、「事故で多くの同僚を亡くしてしまったのに、気丈に振る舞ってすごい」と思えるものだった。  問題なのは遅延による乗り継ぎ。乗り継ぎに4時間の余裕を見ていたが、結局出発は4時間遅れで、クアラルンプールに到着したのが21時。20時半に出発予定だったクアラルンプール発デンパサール行きのQZ555便はすでに飛び立ってしまい、急いでカウンターにいる小太りの男性職員に詰め寄る。 「FLY-THRUだから大丈夫。後発の便に乗り換えの手続きをしているから待っててくれ」  聞けば、乗り換えは翌日10時半発の便。「空港で閉じ込められるのか?」と心配と憤りを露わにすると……。 「大丈夫。空港近くのホテルを送迎付きで用意する。だから待っててくれ」  唯々諾々と空港ロビーで待ち続けること2時間。4時間遅れの成田発の便で、乗り継ぎに間に合わなかった同じ境遇の日本人は80人近く。不平不満の空気が蔓延したころ、 「オーケー。ナリタ(職員は我々のことを「ナリタ」と命名)、レッツゴー」  小太りの男性職員の合図とともに、入国審査を受けた後、向かったのは乗り継ぎに間に合わずに積まれたトランク置き場。暗く狭い、遺体発掘現場のような倉庫の中で、ひしめきあいながらトランクを探す乗り継ぎ難民たち。その後、ホテルへ向かうバス待ちに1時間、ホテルまでの移動に1時間と、局面ごとに時間は経過し、結局ホテルに着いたのは、空港到着から5時間後の午前2時。ホテル自体は3~4つ星ホテルといったところで悪くはないが、「本来なら、今頃はバリ島のホテルだった」ことを思えば、やるせなさは募るばかり。支払った1泊分のホテル代は保険で降りるか保険会社、カード会社に問い合わせたところ、回答は「ノー」とのこと。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=777329  怒りのやり場に困りながらも泥のように眠り、翌日、予定より15時間遅れてバリ島に到着。失った時間を取り戻すようにリゾートライフをエンジョイし、迎えた最終日。19時45分発のAK379便に搭乗するため、夕方17時には空港に到着。「今度は事前メールもないし遅延は無さそうだ」とのんびりレストランで食事をしていたところ、出発1時間前にエアアジアからメール!! 「1月4日 19時45分デンパサール発のAK379便は機体整備のため、2時間出発が遅れます」  まずい。短い旅行を少しでもエンジョイするため、帰りの乗り継ぎ時間は2時間半しか見ていない(その前の便は早朝発になっていた)。持参していたノートPCで後発便を調べると、クアラルンプールー成田間は1日1本のため、行きと同じように乗り継ぎに間に合わなかった場合、24時間マレーシアに缶詰状態となる。しかもこの繁忙期、エアアジアのホームページで確認したところ、24時間後の便は満席。単純に計算すると、空席のある便が出るまで、24時間ずつ遅れてしまうのだ。
乗継地で14時間待ち!墜落事故の余韻冷めやらぬエアアジア機に乗ってきた

台風が来ているわけでもないのにLCCを中心に謎の遅延ラッシュ。ジェットスターは10時間近い遅延に

 暇な学生が、冬休みに旅行しているわけではない。5日から仕事始めとなる一般社会人にとってこのロスは致命的だ。急いで乗り継ぎに間に合わなかった場合の代案を立てるべく、4日クアラルンプール発の航空機を、スカイゲート、エクスペディアといった航空券検索サイトでしらみつぶしに探す。が、さすがハイシーズンだけあって、JALの直行便が片道24万円。一番安い便が北京経由、移動時間23時間で片道12万円という極悪設定。急いで搭乗口のエアアジア職員に問い合わせる。 「クアラルンプールに到着後、成田行きの便が遅延していなければ間に合います。通常通りに出てしまえば間に合いません」  杓子定規な回答に「そこをなんとかしてくれよッ」と泣き叫びたい気持ちグッと抑えるも、 「我々にはどうしようもないのです……」  そうショゲ返る職員の姿を見ては運を天に任せるよりほかはなく、ひたすら「待っててくれ、待っててくれ」と念じるばかり。  21時45分、6番搭乗口に並ぶも一向にゲートが開く様子は見えず、 「AK379便は10番搭乗口に変更です」  との直前のアナウンスにダッシュする一同。気付けば、空港内のバスに乗せられ、またまた時間をロス。結局、3時間遅れで出発し絶望的な気分で飛行機の中を過ごす。雨期のインドネシアという気候もあってか、道中、機体は激しく揺られ、その度にビクッとするが、「このまま墜ちてもいいかも」と半ば自暴自棄になるほど精神的に追いつめられていた。
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搭乗橋を使わずに広い空港の端まで走り、刻一刻と出発時間は過ぎていく

 クアラルンプールに到着したのは1時50分。成田行きのD7528便の出発時刻が0時45分だから、もうどうあがいても帰国は絶望的。が、さすがに、30名近い空席のまま離陸するのは、その後の乗り換えの難しさからみても得策ではないと判断したのか、D7528便は我々を待っていてくれた。そして、涙が出るほどの安堵感に身も心もクタクタになりながら、帰国の途についたのだ。  エアアジアに限らず、LCCには遅延がつきもの。特に、「乗り継ぎは最低でも4時間は見ててください」とはエアアジアのホームページにも記載されている。やはり乗り継ぎ時間には余裕をもっておくのが賢明といえるが、復路で記者と同じく、ギリギリの乗り継ぎ時間を選択した日本人旅行客に聞いたところ、「LCCとはいえ、安くはないハイシーズンの短期旅行。少しでも現地で遊ぶ時間を作りたい」という声が多かった。成田-デンパサール間は、直行便だと7時間で行けるところを、乗り継ぎだと飛行時間だけで10時間かかる。乗り継ぎに余裕を持つのが理想とはわかっていても、好き好んで片道16時間もかけてアジアリゾートに行きたい人などいるはずがないのだ。  ちなみに今回の度重なる遅延が、先の墜落事故と関係があるかとエアアジアに問い合わせたところ、「関係はありません。遅延は常に安全なフライトを求めたうえでの判断です」とのこと。真意のほどは定かではないが、記者の実感として「LCCの乗り継ぎ旅行」は二度とゴメンであることは疑う余地もない。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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