仕事

「匿名で悪口をつぶやくのは健全なこと」中川淳一郎

恋愛の悩みや仕事の愚痴など、知り合いに見られると困るものの、つぶやきたくなるホンネは誰しもあるもの。気になって周囲の人間を調査してみると、結構な数の人間がホンネを書き込むための「裏アカ」を持っていることが判明。男性よりも、女性のほうが「裏アカ」を利用している率が高いのも特徴的だった。 何故、裏アカウントを作ってまで、自分のホンネをワールドワイドウェブに垂れ流す女性がいるのだろうか。「裏アカウントを取得しようとする現象」について、ネットニュース編集者である中川淳一郎氏に聞いた。 「まず、人には誰しも二面性があるものですから、ときには悪口を言いたくなるのも当然ですよね。だから自分のなかでホンネを吐き出せる場を確保するというのは自然な流れなのでは。あとは、社会人にもなると、実名やプロフィールを背負った表アカウントでホンネを言うと、さまざまな影響を与えてしまう危険性が高いわけです。先日話題になった高岡蒼甫事件がいい例です。あれは彼個人の発言としては、別に問題ない話。でも、彼は一応芸能プロに所属している(契約タレント)状態です。その彼が、大クライアントであるテレビ局に対して文句言ってしまったことで、ほかのタレントや会社の社員も巻き添えにしてしまった。普通の会社員に置き換えて考えてみたらクビになるのは当然です」 裏アカウントを取得して、匿名でホンネをつぶやくほうが、他人にも迷惑をかけないし、よっぽど健全だということだ。 『ネットで人生、変わりましたか?』の著者で、ネット文化に詳しい岡田有花氏も、裏アカウントの取得については肯定的だ。 「そもそもリアルな生活のなかでも、常に実名や勤務先の役職などを背負って発言して生きているわけではないですよね。ニックネームしか知らない飲み屋の仲間だからこそ話せることがあったり、肩書は関係なく話せる旧知の友達がいたりする。リアルな生活のなかでも実名性というのはグラデーションなんですよ。『裏アカウントを作ってホンネを吐露する』ことで、リアルな人間関係と同様、実名性にグラデーションをつけることができる=ネット上の人間関係がリアルでの人間関係に近付いている、と考えられる。現時点ではインターフェイスが追いついていないので『裏アカウント』という手段が取られていますが、今後は、よりリアルな人間関係に近い関係を築きやすいインターフェイスが発達してくるのではないでしょうか」 だが、ホンネをつぶやきたいなら、リアルな人間関係のなかで、居酒屋で飲み仲間に話してみたり、友達や家族などに愚痴ればいいのでは。何故、自分のホンネをインターネットで世界中に知らしめようとするのだろう。 「それは『誰かに同意してほしいから』ですよね。これは、女性限定の話ではありませんが、ネット上に自分の愚痴を垂れ流すというのは、『この広い日本のどこかに、自分の愚痴に賛同してくれる人や同情してくれる人がいるかもしれない』という可能性を求めているから。数十人しか客がいない飲み屋でクダを巻いても同意を得られないかもしれないけど、日本だけでも数千万人はいるネット人口に向かってつぶやけば、そのなかの誰かが賛同してくれるかもしれませんからね」(中川氏) 【中川淳一郎氏】 ネットニュース編集者。『ウェブはバカと暇人のもの』などの著書がある。本誌でも連載を持つ。肉巻きアスパラが大好き 【岡田有花氏】 元アイティメディアの有名IT記者。現在はロケットスタートに転職し、暮らしのレシピサイト「nanapi」編集に携わる ― (裏)アカウントで女のホンネが大暴走【15】 ―
ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)

インターネットは普及しすぎて、いまやバカの暇潰し道具だ

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