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リニア中央新幹線 総事業費8兆円以上で問題山積み

◆8割以上が地下トンネル!莫大な建設費の新路線
リニア中央新幹線

時速500km、東京~大阪間を1時間で結ぶというリニア新幹線。計画実現のための負担はとてつもなく大きい

JR東海が開発を進める、リニア中央新幹線。超伝導による磁力浮上という最新技術、8.44兆円(東京~大坂間の総額)にも及ぶ巨額の事業費など、国家プロジェクトさながらだ。山梨県にある実験線での走行試験を先月末に終え、いよいよ開発は本格化するが、一方で様々な問題を抱えている。 「莫大な事業費をJR東海は支えきれるのか。国鉄がJRとして民営化された時の様に、JR東海が破綻して、国民がそのツケを払うことになりかねません」 そう警鐘を鳴らすのは、「リニア・市民ネット」の懸樋哲夫氏。 「JR東海の財務体質は脆弱です。同社が抱える長期債務残高は、現在約3兆2000億円。リニア開発の莫大な事業費、年間4000億円という工事中の金利は、全てJR東海が負担できるかは疑問です。事業計画の見通しも甘い。東京付近はすべて大深度地下となり、さらに南アルプスを貫くルートを選択した場合は、全線のうち80~85%は地下トンネル。これまでの公共事業の事例で考えれば、実際のコストは倍以上になるかもしれません。また、JR東海は、東京~大阪開通後、リニア新幹線の利用者を『年1.05億人』と設定していますが、これは現在の新幹線利用者の1.5倍の人がJR東海を利用するという前提。しかし、少子化で人口が減る中、それだけの需要を見込めるのでしょうか。現在の新幹線ですら、年々利用者が少しずつ減少しているのですから」 大きな負担を抱えるのはJR東海だけではない。「飯田・リニアを考える会」の宮崎太郎氏は「計画されるリニア中央新幹線の駅のうち、JR東海が費用を負担するのは、東京、名古屋、大阪の3駅だけ。相模原や飯田などの他の都市での駅は、地元自治体の負担となります」と指摘する。 「リニア新幹線の駅建設費用は、地上で360億円、地下で2200億円と莫大です。特に飯田市は周辺を合わせても人口17万人程度ですから、とても単独では無理で長野県にも費用を出してもらわなくてはいけませんが、長野や松本といった中心都市から遠い飯田市のために県がどこまでお金を出してくれるかは定かではありません」 南アルプスを貫く工事に批判的な声もある。リニア用トンネル工事のためのボーリング調査が行われている、長野県大鹿村の住民・山根沙姫さんは「水源である山を掘って水質などに影響が出ないのか。建設の際、大量に発生する残土がどこに行くのか。国のやることには逆らわない方がいいという保守的な土地柄、表立って批判する人は多くはありませんが、美しい自然だけが私達の財産であるだけに、村の人々は内心、心配しています」。 膨大な電力消費も問題だ。前出の懸樋氏が解説する。 「JR東海は充分なデータ公開をしていませんが、ドイツのリニアモーターカー『トランスラピッド』のデータを元にすると、1日あたり最大で544万キロワット、つまり原発5基分の電力が必要という計算になります」。課題を残したままのリニア新幹線開発は「見切り発車」なのかもしれない。 取材・文/志葉玲 写真/夏目匡貴
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