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「女性器には価値がない」 売れる風俗嬢の思考法

 職業としての「風俗嬢」という言葉を聞いたとき、僕らはどんなイメージを思い浮かべるだろうか。「若い体を対価に大金を得る職業」、「まともな職につけないメンヘラ女の吹きだまり」、「セックス狂いにとっての天職」といったところではないか。
水嶋かおりん

水嶋かおりん

 タイトルに「風俗嬢」を冠したルポルタージュ、告白手記、体験ブログは世に多く、それらの内容から、上記のようなステロタイプの「風俗嬢」像が確立していると思われる。が、この世間一般に浸透した「風俗嬢」の職業イメージに真っ向から異を唱えた新刊が出版され話題を集めている。ベテラン風俗嬢兼風俗嬢講師・水嶋かおりんによる『風俗で働いたら人生変わったwww』がそれだ。まずは本書で綴られている著者の略歴を見てみよう。 (水嶋かおりん:1983年生まれ。16歳の風俗デビュー以来、あらゆる風俗業界を渡り歩く。講演・執筆活動のほか「セックスワーカーの生きやすい社会がみんなにとって生きやすい社会」という理念の下、精力的に社会活動も行う。性をポジティブに捉える一方、少女時代は、閉塞的な家庭環境や性的暴力に端を発したミサンドリー(男性嫌悪)、ミソジニー(女性嫌悪)、セックスヘイト(性嫌悪)というジェンダーの三重苦に陥った過去を持つ)  プロフィールの後半だけを見ると、「なんだ、やっぱり風俗嬢はメンヘラ女の吹きだまりじゃないか」とする向きも多いだろうが、彼女は売春を始めた動機について、こう語る。 〈どうせ喰われるぐらいなら、こっちから喰ってやる〉  字面だけ見れば恐ろしいが、別に逆レイプを仕掛けるといった話ではない。彼女が語る「喰ってやる」とは、「男の心を虜にすること」。 〈それぞれ「男らしさ」と「女らしさ」といったスパイスを持ち寄り、時にそれを交換しながら、甘えては突き放し、責めては焦らし、絶妙な駆け引きを通じて、相手の最も深い部分へゆっくり侵入していく…〉  この「売れる風俗嬢の思考」という発想が、彼女をして〈風俗嬢とは高度な専門技術と特殊な才能とを兼ね備えた、現代のビジネスウーマンである〉という信条を確立するまでに至ったわけである。  風俗好きの男性諸兄には思いあたるフシがあるのではないだろうか。写真指名した風俗嬢がパネマジなしの上玉で「超大当たり!」と対面したときから下半身の怒張はおさまらない。いざ、プレイ開始……したはいいが、何を聞いてもしらけた調子で「別に」を連発。「早くイケよ」とばかりに気のないサービスを受けたときの、心が異常に寒くなる射精の瞬間を。  そしてその時、当たり前の事実に気付くのだ。「俺たちは顔の可愛い裸の女を愛でるために風俗に来ているわけではない」ということに。心が通ってなければ、AVを見て家でオナニーするのとなんら変わらないわけだから。  著書の水嶋かおりんは、風俗嬢の仕事に対する世間の浅薄な理解の一つとして、「プライドを捨てて女性器を差し出せば金になる」という妄想があるとしたうえで、一つの持説を唱える。 〈女が思っているほど、女の性器には価値がない〉 「風俗嬢」という仕事はプライドさえ捨てれば誰でもできる仕事ではない。「買い手」である男は、射精以上のモノを求めて風俗にカネを投じるからだ。  当事者の視点から見た職業論のみならず、社会学、経済的な見地から見た業界の構造上の問題、そして数々の提言。気軽に風俗遊びを楽しんでいただけの男にとっても考えさせられる、新しい「風俗の教科書」といえる。 <構成・文/スギナミ>
風俗で働いたら人生変わったwww

水嶋かおりん・著 コア新書 本体787円+税

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