TPP参加を執拗に迫った米国 狙いは日本市場の進出にあり【後編】

「平成の開国」「世界に乗り遅れるな」。美辞麗句を並べ立てるTPP(=環太平洋戦略的経済連携協定)推進者はみな〝売国者〟か。参加に意欲的なのは「米国と日本の製造業だけ」とする政治経済学者の植草一秀氏が「売国者vs愛国者」の戦いを斬る ←前編はこちら 日本がTPPに参加すれば、まず、農業が壊滅的な影響を受けるだろう。日本の農業は外国資本に支配される事態が急激に広がる可能性がある。同時に、農業では残留農薬の規制緩和などが要求されており、日本の消費者の安全が犠牲にされる可能性も高まっている。   また、米国は日本の共済制度の解体を狙っていると見られ、保険分野に米国企業が大挙して押し寄せることも予想される。医療の分野では、保険適用外の医療行為を日本国内で拡大させる圧力が強まっており、これに連動して米国保険業界が日本での民間医療保険ビジネスを拡大。その準備を進めているとの情報も流れているのだ。   日本を含めたTPP参加予定10か国を見ると、GDP比は日米で91%、日米豪で96%に達する。実質的に日米EPA(経済連携協定)の側面が強く、米国の狙いは日本をTPPに引き入れ、米国企業の日本での活動を拡大させるのが目的と思われる。   製造業はTPPを積極推進しているが、製造業のGDP比率は17.6%にすぎない。そのために「残りの82.4%を犠牲にしていいのか」との言葉が、実態をうまく表現すると言えるだろう。 日本は米国に隷属せず、日本の国益を守るため、TPPを毅然と拒否するべきだ。野田政権の最優先課題は復興政策の早期実行にある。TPP交渉より大型経済対策を打ち出し、日本経済を急浮上させるほどのインパクトある対策を協議してほしいものだ。 【今週の数字】 日本の製造業のGDP比率 17.8% 前原誠司政調会長はTPPに関連して「GDP比1.5%の農業のために、ほかの98.5%の産業を犠牲にしていいのか」と発言。TPP参加の意義を述べたが、メリットを受けるとされる製造業のGDPも17.6%にすぎない
GDP

9か国でTPP協議が進められているが、日本を含む各国のGDP構成比で考えると日米で91%。実質的な日米EPAであり、輸出時のメリットは大きいが、日本の製造業はGDP比の17.6%しかない

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