香山リカ、「アイヌ否定問題」で小林よしのり氏に反論 vol.4

⇒【vol.3】はコチラ 香山リカQ.香山リカはアイヌ協会の立場を守りたい人なのだろうか?(1月17日) A.私は、今回の対談の後の一連の小林氏のブログで、この発言にもっとも傷ついた。というか最大にガッカリした。  少し長めに引用させてもらおう。 「香山リカ氏はアイヌ協会の立場を守りたい人なのだろうか? アイヌ協会に都合の悪い論者を、一方的に貶す傾向があるから、そのように見える。だが、わしには立場はない。わしは組織や団体のバックアップはないから、あくまでも個人として、自分の頭で考えればいい。」 「わしは香山リカがアイヌ協会御用達の『ネタ本』しか読んでないだけで、洗脳されてるんだと思っている。」(https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=jomz8d658-1998#_1998)  私が小林氏と対談したのは、冒頭にも記したように「小林氏に『アイヌ民族の人たちはいる。その人たちを差別してはならない』と言ってもらい、とくにネットで広まっている彼らへのヘイトスピーチが止まるように協力してもらうため」に尽きる。  それなのに、私があたかも「アイヌ協会のまわしもの」だと疑っていただなんて……。  それはないよ、小林先生……。  「アイヌ協会ご用達の『ネタ本』」って何。絵本かなんか、推薦してんの……?  公益社団法人・北海道アイヌ協会というのは、さまざまなアイヌ事業の窓口になっている団体で、アイヌ政策に基づく支援などを受けるためにはこの協会の会員として登録する必要がある(しかし先にも述べたように、この協会に登録していないアイヌも大勢いる)。 『わしズム』でも対談でも、小林氏はアイヌについて調べたいと思い、まずこの協会に取材を申し込んだところ断られたと述べていた。協会は「あの小林よしのり氏の取材!」とビビって断ったのだろうが、それはたしかに残念なことであった。  しかし、私は正直言って、北海道アイヌ協会に関してはその定款や関連事業を文字資料で見ただけで、それがどこにあるのかさえ知らない。関係者に会ったこともない。  もしこの反論に次回があったら(笑)、私の第二のガッカリについても述べたい。それは、小林氏は「これは在特会のような『既得権益バッシング』ではない」と言っていたのに、実は“アイヌがそこまで民族にこだわるのは利権が絡んでいるから”と疑っていると判明したことだ。  結局、人は誰かの利益のため、自分の利権のためにしか動かない、と小林氏は考えているのだろうか。そうでない人は、その後のブログで私をさかんにそう呼ぶように、「純粋まっすぐ君」として揶揄されてしまう。  私は、せっかく「日刊SPA!」でサブカルについての連載のチャンスを与えられたりのに放棄していることからもわかるように(笑)、決してまじめな人間でも正義の側の人間でもない。  ただ世界中で先住民族の文化復興や権利回復が“トレンド”になっている今になって、わざわざ日本で一度、国会決議まで経て「(民族でかつ)先住民族である」と認められたアイヌに対して、「民族ではない!」などと拳を振り上げる人たちがいる、という現状に顔が赤くなるような恥ずかしさを覚えた。「シーッ! ちょ、ちょっと待ってよ、世界の人たちに聞かれたらビックリされるからさ、声に出さないでよ」という感じだ。  そこには「アイヌたちを守りたい」といった同情やあわれみの気持ちがあるわけではなく、ただただ「あなたの言ってること、ちょっとおかしいから」という小林氏を頂点とする否定論者たちへの抗議だ。  よく私のところにはツイッターで「あなたはアイヌを救う正義の味方気取りですが、アイヌはみな迷惑しています。そっとしておいてほしいのです」とアイヌの代表者であるかのような意見を言ってくる人がいるのだが、これはピントがずれている。もちろん、結果的に抗議の言論活動がアイヌのためになればうれしいとは思うが、そもそも「アイヌを救うため」にやっているわけではない。アイヌじゃない日本人として、同じくアイヌじゃない日本人の小林氏に「考えを変えてもらえませんかね」と言っているのだ。  それがなかなかわかってもらえず、アイヌ協会との癒着を疑われるとは、まったくもって「トホホ」としか言いようがない。  ああ、結局、3日分のブログにしか答えられなかった。  もしチャンスがあれば、続きはまたということにして、今回はこんなところにしておきます。 文/香山リカ ― 香山リカ、「アイヌ否定問題」で小林よしのり氏に反論【4】 ―
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