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来日中のダライ・ラマ法王14世、研究者との対話に「若い学生のような気分です」

 4月2日から、ダライ・ラマ14世が今回で21回目となる日本を訪れている。初の北海道をはじめ、各地での講演と法話会が執り行われている。 来日中のダライ・ラマ法王14世による学者との対話 そんな中、5日、GOMANG ACADEMY OPEN SYMPOSIUM「伝法の未来を考える」(主催:一般社団法人 文殊師利大乗仏教会)では、現在の日本の第一線で活躍している現代仏教学の研究者らとダライ・ラマ法王の対話が行われた。  ダライ・ラマ法王は、各パネリストからの日本におけるチベット仏教研究のこれまでの取り組みおよび、今後の展望などのプレゼンテーションに、「皆さん、勉強熱心ですね、私にはマネできません」などと、得意のジョークを交えつつ、熱心に聞き入られた。  その締めくくりの言葉をここで少し紹介したい。 ◆自分も若い学生の一人 「600万人のチベット人を代表して、チベット独自の言語や文化の研究に人生を捧げてきた研究者の皆さまにお礼を申し上げたい。チベットの言語や文化をどう保存していくのかということは、私たちチベット人だけでなく、中国政府のなかの強硬派の人たちも強く関心をもっています。彼らは私たちの文化が中国政府からの分離の原因となるのではないかと恐れているのです」  と冒頭では「チベット問題」を意識した言及もなされた。  さらに、過去にはチベット仏教は『ラマ教』などと呼ばれ、伝統的な仏教とは異なるとされてきたことに触れ、 「この半世紀、さまざまな仏教国の人々と交流をしてきました。そのことから私たちチベット人の仏教は、インドのナーランダー僧院の伝統の継承者であるということはよく知られるようになりました。80歳を迎えるいまも私はひとりの学生であると思っていますし、新しい研究成果を聞くと、まだまだ自分も若い学生ような気分です」と語った。 来日中のダライ・ラマ法王14世による学者との対話◆宗教や学問だけにとどまるのではなく、人類への貢献を志す 「伝統的に仏教とは、科学技術の発展によって物質的豊かさを実現するのとは異なり、自分たちの心を発展させ、心の平和を実現することによって幸福になるための方法を説いてきました。心や知性というものがどういうものであり、どのような感情が破滅へと向かい、あるいは、幸せへと導いてくれるのかを客観的に説明しています。仏教は《心の科学》として宗教や信仰といった枠組みを超え、すべての人の心の健康法として役に立つものなのです。  そして仏教の哲学は量子物理学にも通じる、すべての現象の相対性をも説いています。仏教の《縁起》の思想もまた、客観的な真実を探究しているものであり、その考え方は宗教の枠組みを超えて、広く役に立つものなのです」  ダライ・ラマ法王が説く「仏教」とは、どこぞの宗教団体が執り行うような、何か特別な儀式をして極楽や天国に行くためだけのものではなく、心の科学や哲学思想である。そして、どんな人にとっても人の心の豊かさ、思いやり、慈悲というものを実現するためのものである、ということなのだ。  それは、家族や夫婦、隣人や友人といった周りの人の幸せを真摯に考える、本当の友情や愛情を私たちの社会で育むためのライフスタイルを提供すると説明している。  “観音菩薩の化身”とされるダライ・ラマ法王は、大学の教員たちに対して、 「単に専門的な研究をするだけではなく、教育の現場で、私たちが幸せになるための方法論をきちんと教育し、また仏教が人類の社会全体にどうしたら貢献できるのか、ということを忘れてはいけない」ということをメッセージとして残された。  満員電車でイラつく、仕事が嫌になる、憎く感じる人がいる……  我々の日常は、やさぐれた心で満たされがちだが、そんなとき思い起こしたいのが「諸行無常」――。  目の前にある状況は永遠に続かない、よいことも悪いことも。  そう考えれば、少し気持ちがラクになるかもしれない。 来日中のダライ・ラマ法王14世による学者との対話 ダライ・ラマ法王の教えをもっと聴いてみたい!と思ったら……  4月12日(日)、4月13日(月)、昭和女子大学人見記念講堂で行われる、<2015年ダライ・ラマ法王14世来日法話 「般若心経・菩提心の解説・観音菩薩の許可灌頂」>のチケットはすでにソールドアウトとなっているが、全国各地の映画館でライブ・ビューイングされる。映画館でダライ・ラマ法王ライブ法話が聴ける! <翻訳・通訳/野村正次郎 取材・文/小原美千代(本誌)>
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