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都会の片隅で“見えないホームレス”になる貧困女性たち

◆家のない女性同士のいびつなコミュニティ  昨夏からネットカフェを常宿とし始めたアケミ(32歳)の場合、もともとは保育職に就いていた。だが薄給なうえ激務で体を壊して退職。しばらくは貯金で凌いでいたがそれも底をつき、ネットカフェで寝泊まりする生活を始めた。 「最初は次の職場までの繋ぎのつもりだったんですけど、住所もないのでまともな会社は雇ってくれない。でも、ここにはシャワーやコインランドリーもあるし、なんとか暮らせますから」  そのうち、同じような境遇の女性たちと知り合いになったという。 「住んでいる人はスウェット姿とかでいるからすぐわかる。なかには50代くらいの人もいますね。そのうちの一人の若いコと話すようになって、彼女から教わって“ワリキリ”もするようになった。出会い系で連絡を取って、ネカフェブースまで来てもらってエッチしたり……。でも、少し前にそのコから『病院に行きたいから保険証を貸して』と言われたけど、悪用されるのが怖いから断ったんです。それから気まずくて会ってない」  困窮した女性はどうしても売春という手段をとりがちになる。だがそんな生活が長く続くわけもない。NPO法人「もやい」の大西連氏によれば、年間3000件ほど来る同団体への相談のうち、女性からのケースは約2割。年齢層は20代から70代まで幅広いという。 「かつては相談者のほとんどが野宿者でしたが、今では4割ほどに減り、ネットカフェなどで暮らす人に変わっている。女性の相談者の場合、精神的疾患を持つ方も多いですね。DVから逃げてきた人もいて、そういった場合、役所から家族への照会を恐れて生活保護を拒否する人もいます。また若い人などは、そもそも自分が生活保護を受けるべき生活水準だということに気づいていないこともある」 【鈴木晶子氏】 臨床心理士。一般社団法人「インクルージョンネットよこはま」理事。若い世代を中心に、ソーシャルワークや就労支援、地域コーディネートなど困窮者の支援をする 【大西連氏】 認定NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」理事長。新宿ごはんプラス共同代表。生活保護や社会保障削減などの問題について現場から声を発信している 取材・文/青山由佳 加藤カジカ 姫野ケイ 平野友季 山田文大 西澤まどか
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