再生可能エネルギーで温泉町の復興を目指す【福島・土湯温泉】

福島第一原発事故を受けて、今も11万人以上が避難生活を続ける福島県では、“ご当地電力”の設立が進んでいる。そんな「福島発・エネルギー革命」の今をリポートする。

⇒【前編】“ご当地電力”で福島が日本のエネルギー拠点になる「会津電力」「飯舘電力」http://nikkan-spa.jp/854472

◆再生可能エネルギーで温泉町の復興を「元気アップつちゆ」

加藤勝一氏

小水力発電所の発電機と元気アップつちゆの加藤勝一社長

 JR福島駅から近い土湯温泉では、16軒あった旅館のうち5軒が廃業した。もともと客足が減っていたところへ、地震で建物が壊れ、原発事故の風評被害で、将来を見通せなくなったためだった。

「このままでは温泉が消滅する」という危機感を抱いた有志らは、’11年末に復興再生協議会を結成。廃業した旅館の跡地を利用し、再生可能エネルギーによる町づくりを進めることにした。豊富な水量を誇る川と温泉を生かし、町の大半の電力を自給する“再エネの町”として生まれ変わる計画だ。

 ’12年には「株式会社元気アップつちゆ」を設立。出力140kWの小水力発電所を建設し、今年の4月に稼働を始めている。並行して、出力400kWの温泉発電の建設も進め、8月頃には本格稼働の予定だ。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=854490

 温泉発電は地下深くに穴をあけず、地表に湧き出す温泉や蒸気を使って発電する方法。地熱発電ほど多くの電力は得られないが、コストが低く環境への影響も少ない。

元気アップつちゆ(福島市土湯温泉町)

元気アップつちゆ(福島市土湯温泉町) 温泉が噴出する場所で進む温泉発電所の建設工事。今年7月には完成予定だ

 2つの発電所を合わせると、土湯温泉に暮らす250世帯の倍以上のエネルギーを生み出すことになる。「元気アップつちゆ」の社長、加藤勝一氏は言う。

「私たちの目的は発電よりも温泉町の再生。地元の人間が再エネで地域おこしをしている例はまだ少ないので、全国のモデルになれるようにしていきたいですね」

 発電所ができる前から年間5500人以上の視察者がやってくるなど注目度は高く、町の人々の期待も高まっている。

●元気アップつちゆ(福島市土湯温泉町)―― こけしで有名な温泉町の活性化をめざす、町ぐるみのエネルギープロジェクト。大企業に頼らず、地域の人たちの力だけで町の再生に挑戦している。中でも温泉を利用した発電事業は、全国でもほとんど例がないため注目を集めている

◆地域の絆を高めるさまざまな事業「いわきおてんとSUN企業組合」

 いわき市では、「手作り太陽光発電」を通した取り組みが進む。震災後のいわき市は、放射能の影響で耕作放棄地が増え観光客が激減した。そこで、複数のNPO団体が協力して「いわきおてんとSUN企業組合」を結成。農業とエネルギーを軸に地域づくりを始めた。

 まず農業では、オーガニックコットンを育て、Tシャツや手ぬぐいを販売する仕組みをつくった。そこで地元の農業者と仮設住宅の避難者、ボランティアなど立場の違う人たちが共同作業をする機会が増え、新しいコミュニティづくりに役立てている。

「おてんと号」と島村守彦氏

自然エネルギーの出前教室を行う「おてんと号」と島村守彦氏。天ぷら油を使って発電できるおてんと号は、今年3月の国連世界防災ジュニア会議でグッド減災賞優秀賞を受賞した

 エネルギーも同様に、地元の人とボランティアが共同で、太陽光発電所を手作りした。’15年5月現在、こうしてつくったコミュニティ発電所はすでに4か所。合計出力は300kWに増えた。いわきおてんとSUN企業組合事務局長である島村守彦氏はこのように言う。

「自分で手作りしたものを楽しむ体験を通じて、自立心を持ってほしい。いわきの抱えている課題の多くは、日本のほかの地域でもこれから直面する問題です。課題解決の方法を全国の皆さんと一緒に体験し、学ぶ場を提供したい」

 エネルギー自給だけでなく、震災復興や町おこしと連動した福島各地の「ご当地電力」。原発事故を超え、エネルギー自給の試みが急速に進行している。

いわきおてんとSUN企業組合(いわき市)

いわきおてんとSUN企業組合。自然エネルギーを電源にしたご当地アイドルのイベントを開催

●いわきおてんとSUN企業組合(いわき市)―― オーガニックコットン作り、コミュニティ発電所、ボランティアを巻き込んだスタディツアーなど、地域の絆を高めるさまざまな事業を実施している

取材・文・撮影/高橋真樹 写真/いわきおてんとSUN企業組合

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