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思わずノスタルジックに!細かすぎるジオラマ【写真館】

あまりにもリアルすぎて、本物かつくり物が見分けがつかない! ――そんな衝撃的なジオラマを発表し、ネットでも話題となっているのが“情景師アラーキー”こと荒木智氏だ。先ごろ上梓した初の作品集『凄い!ジオラマ』には、荒木氏がサラリーマン生活を送りながらコツコツと制作・撮影したジオラマが、数多く紹介されている。今回、同書に掲載されている作品のなかから荒木氏レコメンドの写真を挙げてもらい、それぞれに解説を加えてもらった。珠玉のミニチュア世界をご堪能あれ。 ●HONDA CAB C100(スーパーカブ) ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=856364 HONDA CAB C100(スーパーカブ)「河原に放置された車両を再現したプラモデル作品。湿気の多い場所で錆が進行している様子を塗装だけで表現しました。スーパーカブは、二輪車として初めてプラスチック部品を多用した画期的な車両。そのプラ素材の割れや退色も塗装で再現しています」 ●トタン壁の造船所 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=856367 トタン壁の造船所「人間の手の大きさでその小ささを実感してほしい、緻密に作った造船所のジオラマ作品。「トミカ」などに代表される1/64スケールというミニカーサイズで再現された、A3用紙ほどのサイズです。手前の漁船はプラモデルで、その奥にある造船所やクレーンはプラスチックの板からすべて自作しました。実際に現地で取材したものではなく、ネットの画像検索だけで資料を集めて作ったものです」 ●ゴッサムシティ(ゴミ捨て場) ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=856374 ゴッサムシティ(ゴミ捨て場)「2014年10月、この写真がツイッターで世界中に拡散して、私の名前が広く知られるようになった記念すべき作品。北米を舞台にした映画『バットマン』に出てくるゴッサムシティのジオラマを作っている最中に、遊びで撮影したものです。緻密なゴミ袋や捨てられたダンボール箱がジオラマに見えず、『これは合成だ!』とか『手前に手を入れ込んだトリック写真だ』などと物議を醸しました。指の写り込み方をいくつものパターンで撮影して、いちばん驚いてもらえそうなカットを選びました」 ●やきいも ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=856375 やきいも「昭和30年代に見られた、三輪車ミゼットのやきいも屋さんを再現したジオラマ作品。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に刺激を受けて、その世界観を再現しました。あのころの光景を文庫本サイズのジオラマに凝縮して、木製電柱、赤いポスト、ホーロー看板などをとても緻密に自作。制作当時に住んでいたマンションのベランダから見えた夕日をバックに、野外で撮影しています」 ●西瓜の夏 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=856376 西瓜の夏「小学校のころ熊本に住んでいたのですが、県内のいたる場所に石橋が現存しておりました。そんな橋をモチーフにして、爽やかな夏の光景を再現しています。軽トラックの荷台には、畑から収穫したばかりの西瓜。その進行をまるで巨人が指一本で静止するような写真を狙っています。お気に入りの写真で、今回の作品集の扉の写真に選びました」 【インタビュー】情景師アラーキー氏 ――緻密な作り込みやユニークな表現が衝撃的な『凄い!ジオラマ』ですが、アラーキーさんをジオラマ作りに駆り立てているもの、原動力になっているものは何なのでしょうか? アラーキー:子供のころに見た思い出深い情景、好きな映画のワンシーン、旅先で出会った忘れられない光景……そんな景色を誰もが持っていると思います。それを映像として残しておきたいと思った人は、たとえば写真を撮ってみたり、ビデオを撮ってみたり、スケッチしたり、なんてやり方を一般的には採るわけです。  そんな感じで手段はいろいろありますが、私はあらゆる方向から鑑賞できる立体物として「ジオラマ」という表現手段を選んでいる、ということです。多くの人にその風景を共感してもらいたいと思うならば、ジオラマ表現は究極の伝達手段だと考えます。また、それを「どうやって作り出そうか」と検討し、あらゆる素材や工作方法を駆使して作り出すさまは、知識、工作技術、塗装テクニック、撮影手法などが組み合わされた「総合芸術」と呼んでも過言ではない、優れた表現方法だと思っています。 ――“大人の趣味道”としても、プラモデルやジオラマはとても魅力的です。子どものころ、プラモデル作りに夢中になった読者も少なくないでしょう。ただ、興味はあるものの、なかなかプラモデルに手が出せない大人は多そうです。 アラーキー:そうかもしれません。私の場合は「小さくて緻密なもの」が全般的に好きなので、食玩やミニカーなど、あらゆる種類のミニチュアを好んで集めています。なかでも、特にプラモデルは男性にとっての「ロマン」が恐縮された究極のミニチュアだと思います。  私は膨大な数のプラモデルを持っておりますが、それらすべてを「絶対に作らなきゃ!」と考えているわけではありません。蒐集することが楽しみのひとつになっているんです。脈動感あふれる箱絵とか、プラモデルの部品がリズミカルに配置されたランナー(切断前のパーツが並んでいる枠)とか、それらを眺めているだけで、よい酒のつまみになるほど(笑)。もちろん、組み立てても楽しい。そして色を塗っても楽しい。改造しても楽しい。さらにジオラマにするとなお楽しい! 人の楽しみ方はいろいろですし、それに優劣はありません。 ――プラモデルの初心者や、「久しぶりに作ってみたいな」と考えているプラモ作りのブランクが長い人、ジオラマ作りに興味がある人に向けて、アドバイスがあれば、ぜひ。 アラーキー:最近は、緻密な塗装やデカール(シール)が施された、完成品の食玩やガチャガチャのトイなどが多く販売されています。それらを小さな鉢植えの上に置くだけで、物語が生まれます。ジオラマの種はそういったことからでも見つけられるし、十分楽しめるものです。  プラモデルの進化はとても凄くて、たとえばバンダイから販売されているプラモデルのほとんどは、接着剤のいらない「スナップキット」と呼ばれるものです。まずは気楽に、そうしたキットを組み立てることから始めるといいと思います。次は、それに色を塗ってみる。そうしているうちに、自分だけのオンリーワンを仕上げる面白さに気づいてしまったら、もう楽しみ方は無限大です。“貪欲に作る楽しさ”に目覚めてしまった先には、よりリアルに仕上げてみようと塗装に凝ってみたり、改造してみたりと、やってみたいことがいろいろ出てくるはず。  そして、ジオラマに作りにもチャレンジしたくなったら……とてもよい本がありますので、それを紹介いたします。私の作品集『凄い!ジオラマ』。これが最適です(笑)。 【情景師アラーキー:荒木智(あらき・さとし)】 1969年東京都生まれ。中学時代に本格的に始めたジオラマ作りにハマり、各種模型コンテストに出品し腕を磨く。大学では工業デザインを学ぶ。家電メーカーにプロダクトデザイナーとして入社し、現在も在籍。30代前半でのコンテスト受賞をきっかけに、各種模型雑誌からの依頼を受け、ジオラマ作品を多数発表。サラリーマン作家としてアフター5と休日を使って創作活動を続けている。 取材・文/漆原直行
凄い!ジオラマ

絶対二度見!これが模型って…。

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