「性別適合手術」希望者には“その後”のリスク情報も与えられるべき

 体と心の性別が違うことによるトランスジェンダーの生きづらさに対して、外科的にアプローチするのが、性別適合手術(SRS)だ。タイでの子宮・卵巣摘出手術などのアテンドを手がける渡邉アツミさんに、SRSの実態を聞いた。

渡邉アツミさん

渡邉アツミさん

「学生時代、友人がSRSを受けるというので、付き添いに行きました。友人はペニス形成術までして戸籍上の性別を男性に変更したのに、翌年に半ば自ら命を絶ってしまったんです」

 SRSは、今抱えている「生きづらさ」を解決するとは限らないし、卵巣摘出で女性ホルモンがなくなれば、更年期障害が起きかねない。既存のアテンド業者はこうしたリスクを、当人に正しく伝えていないと渡邉さんは指摘する。

「ネット上にはSRS体験者の喜びの声が溢れていますが、その後の健康、人生、人間関係がどう変わるかが抜け落ちています。体の違和感から手術を望む人には確かにSRSが必要でしょう。でも、タイの病院スタッフは『日本からのSRS希望者は飛び抜けて多い』と言っています」

 つまり、本来なら手術が必要ないかもしれない人の背中を押すアテンドが行われているのが現状なのだという。

「’04年7月施行の性同一性障害特例法は、戸籍上の性別を変えるために健康な体にメスを入れさせることになる異常な法律です。国家が生殖を管理している社会において、顧客が抱えている『生きづらさ』の根がどこにあるのかを、中立的な立場で提示していくのがアテンダーの役目でしょう」

手術<手術の種類/料金>

●乳腺摘出手術/35万円~
●子宮・卵巣摘出手術(開腹)/25.5万円
●子宮・卵巣摘出手術(腹腔鏡)/44.4万円
●乳首縮小/7.4万円

※1バーツ3.7円。「Malaiwan」での料金

【渡邉アツミさん】
’12 年、武蔵大学院卒業。千田有紀教授の下でジェンダー論を専攻。一般企業を退職後、SRSアテンド会社「Malaiwan」を設立

取材・文・撮影/野中ツトム(清談社)
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