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13億人が総白タク化!? 中国で「配車アプリ」急拡大。高級車を買ってドライバーになる若者も

 世界50か国で展開しながらも、日本では規制の壁に阻まれ、存在感を発揮しきれないでいる米ハイヤー配車アプリ「Uber」。だが、お隣中国では同アプリをはじめとするハイヤー配車アプリが続々と登場。独自のプロセスで、市場が急拡大している。
中国

既存タクシーはもちろん、自家用車もアプリを使って配車する

 例えばその筆頭格「一号専車」には、各主要都市ごとに1万人以上の一般市民がドライバーとして登録。中には月60万円を稼ぎ出す人もいるという(『第一財経日報』)。広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)も、このアプリを愛用している。 「中国の都市部は慢性的にタクシー不足なので、このアプリは超便利。運賃は車のグレードで変わるんですが、一番下のグレードならタクシーよりも安く快適。ただ、配車通知されたナンバープレートと違う、いわゆる白タクが来ることもよくあるんですが、中国人はあまり気にしないようです。利用者によるドライバーのレビューも見ることができるので、流しの白タクを拾うより安心ですね」  中国に留学経験があるフリーライターの青山大樹氏は、配車アプリは白タクにも大きなメリットがあると言う。 「白タクは客引きをしているときか、到着後の金銭授受を警察に見つかって捕まることがほとんど。客引きの必要がなく、決済もアプリ上で完了するので、捕まるリスクはほとんどないでしょう。かつて大型マンションの周りでは、どこも白タクの呼び込みが立っていて、『さぁ、乗った乗った』と声をかけてきたものですが、配車アプリが出てきてからは、そうした光景をほとんど見かけなくなった」  普及が進むなか、ドライバー獲得合戦も激化。各事業者がドライバーに支払う奨励金を上げ始めたのだ。例えば、中国Uberは一時、客の利用額の倍額をドライバーに支払うキャンペーンを行っていた。こうした大盤振る舞いの裏には、大きな“魂胆”も見え隠れする。中国事情に詳しいコンサルタントの立花聡氏は話す。 「各事業者がこれまでドライバーに支払った総額は200億円とも300億円ともいわれている。巨額資金を各事業者に用意したのは、アリババ創業者のジャック・マーだという説もある。配車アプリの支払いの多くはアリババ・グループのオンライン決済システム『アリペイ』を使う。個人的な見立てですが、マーは50代以上のシニア層をオンライン決済市場に取り込むために、配車アプリを利用しようとしているのではないか」  一方、上海市在住の旅行会社勤務・向井典明さん(仮名・42歳)によると、配車アプリには、庶民のマイカー購入を後押ししている側面もあるという。 「うちの会社の中国人社員が、まるで身の丈に合わない高級車を買った。どうやってローンを返済するのか聞いたところ、その車を配車アプリに登録し、土日は高級ハイヤーとして営業しているんだそうです。しかも、このローン返済方法は、自動車ディーラーの営業マンに提案されたものだとか」  さまざまな思惑が絡み合いながら、成長を遂げる中国の配車アプリ市場。昨年、日本に上陸したUberが、いまだに国土交通省の顔色を窺わざるを得ないのとは、あまりに対照的だ。まさに中国流の成長モデルといえるかもしれない。 <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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