窮地のマクドナルドが復活するための大胆プランとは?――大川弘一「俺から目線」

 メルマガ配信サービス「まぐまぐ」の創業者・大川弘一。ITビジネス黎明期から会社を運営し、子会社の日本最短上場、元役員の訴訟問題など、ビジネスの酸いも甘いも知り尽くした男が、話題の企業を始め、世に氾濫する時事・経済ニュースの“本質”を独自の視点で解析する!

窮地のマクドナルドが復活するための大胆プランとは?――大川弘一「俺から目線」〈第1回 日本マクドナルド〉

 みなさまこんにゃちわ、大川と申します。

 本日から連載がはじまりましたこのコーナー「俺から目線」

 普段から株式投資ですてきな昼食代を稼いでいる私が『特別な情報』にどうやって辿りつき、世の中をどう見てるのか。このコーナーではその努力と分析のプロセスを、寝る間も惜しんで全力でお届けしていこうと思います。

 記念すべき第1回目は、日本マクドナルド。

 無類のハンバーガー好きのわたくしが同社の歴史をほんの少ーしだけ振り返り、むにゃむにゃと窮地に立たされている巨大外食チェーンの起死回生策をしっかりと掘り下げて参る所存です。

 その昔、ハンバーガーは『特別な食べもの』でした。

 1980年代の大宮で育った私にとって、駅前のマクドナルドの数こそが故郷の経済指標であり、それは宿敵浦和との「どっちが都会か対決」における明確な差別化の切り札でもあり、同時に与野をはるか遠くに置き去りにできるまさに無敵のアイテムでした。

 当時の店舗数、2軒。

 その存在感はまさに島根のスタバ。

 行列こそないものの、楽しげに働く人々と、そこで食事をする人々の笑顔は、出口の見えない塾勉の先に『約束された未来』のような輝きを放ち、半ズボン姿の子どもたちのハートを右から順に鷲掴みにしておりました。

 一番かっこいい店で働いているわたし、一番かっこいい店で食事しているわたしたち。こうした充足感はその後も圧倒的なブランド力と広告戦略に支えられ、マクドナルドはまさにCMどおりの特別な場所として存在しておりました。

※[インライン動画]’77-00 マクドナルドCM集
https://www.youtube.com/watch?v=P_7CJLhKWig

 ところがブランドが広く知られるということは、その内部で大きなリスクも育ちます。つまり物語の主体が大きければ大きいほど、悪評が立ったときのダメージも潜在的に大きくなり続けていくのです。従来はマスメディアへの膨大な広告出稿量でネガティブな印象を抑えこむことに成功していた同社ですが、2013年ごろからのSNSの隆盛に伴ってネガティブな情報のコントロールが困難になってしまいます。

 すごく売れてたものが売れなくなった。安くしたら売れたけど、安くしたタイミングで不祥事が連発した。安くしたことが直接の原因じゃないんだけど、人が食べるものを雑に作ってしまった印象があるから、新しいものを作っても、期待すらしてもらえない。

 こうなると、正直何を作っても売れません。しかも今の世の中には競合が山ほどある。

 じゃあ投資家やフランチャイジー(FC加盟店)に詰め寄られ、経常利益を積み上げることのできなくなったマクドナルドはこの先どうしたらいいのでしょう。

 答えはメガフランチャイジーの自立支援です。

 マクドナルドは全体の店舗数のうち70%の2000店舗がフランチャイズ店舗になっており、各地の運営企業が複数の店舗を所有しています。FC店舗を数多く所有するそれぞれの会社は他人のふんどしで相撲をとりたがるクセが身体に沁みついているので、ほっといたらカーブス(急速にフランチャイズ化を進める大型フィットネス・チェーン)への業態変更の準備をしているかもしれませんが、マクドナルドの店舗出身者が数多く見られる各社のオーナーは、今こそハンバーガーを作り直すチャンスです。

 ところがここ数年の売上の減少で加盟店の資本力は極限まで落ちてきていますから、自社で業態を開発する余力はありません。

 そこで、まずはマクドナルドが低利でFCオーナーに開業資金を融資し、共同出資で個別に会社を作ります。つまり2000店舗のうち10%程度をハンバーガーの別ブランドを誘致して保有する会社にすることで、まずは「マクドナルドのまま」信頼を回復することから脱却した姿勢を内外に示すところから始めます。

 これにより、本部としてはブランド資産のポートフォリオを分散し、マクドナルドブランドのままでは決して得ることのできない『伸びしろ』も手に入れ、セントラルキッチンや流通網を活用しつつ、個別ブランドの株式上場も視野に入ります。

日本マクドナルド ホームページ

日本マクドナルド ホームページ

 つまりマクドナルドがその役割を、「全方位に言い訳を続けるFC本部機能」ではなく、「ブランド誘致と投資育成」に軸足を移すことで、偽善の呪縛から逃れ、制限の多い商品開発や効果の薄いCMへの資本投下も引き下げ、数字への細かさが役に立つ位置に立つことができるのです。

 出資と融資の総額は40~60億円。店舗改装してオペレーションを整え、それだけのブランドを複数保有できると思えば本当に安い買い物です。

 そして、こうした分散ブランド戦略に適しているのは以下のハンバーガー店。

●In-N-Out
西海岸を中心に圧倒的な人気。大本命。

●Five guys
南部から東部を中心に店舗数が多い。ポテトの調理法やメディア戦略に特徴がある

●Umami Burger
LAからスタートしてもう24店舗。逆輸入で大化けの可能性がある

●Spelunker’s
ヴァージニア州の名店。パテもバンズも世界一おいしいと思います。

●Decker’s
カリフォルニア州サンタマリアの個人店舗。日本に来たら食べログで3.9行きます。

 次点として、ショッピングモール向けの味付けのVarsityなどもありますが、こちらはブランド名が日本人に発音しにくいのと味に驚きがないので伸びしろが劣ります。

Carl’s Jr.Sonicはそもそもマクドナルドの模倣ですから、意味がありません。

 新たに設立する企業のストックオプションを誘致各社に割り当てることで、ブランド誘致もスムースに進められることでしょう。そして新ブランドの誘致は新メニューよりもコストがかからないうえに、IR効率の非常に高い材料です。本体の投資キャッシュフローは数年で劇的に改善し、マックジョブと呼ばれる単純労働に従事する従業員にも最高のEXITを提示してあげることが可能になります。

〈まとめ〉

 一時期の輝きを失ってしまったマクドナルドが取り戻すべきは、マクドナルドとしての輝きではなく、上質なブランドの誘致です。既存店が業態の変更でカーブスに変わってもまぁいいんですが、やはりさみしいし、そこには負け戦感しかありません。

 健康コーポレーションあたりがライザップブランドでカーブスのやや高級版をやりそうな気もしますが、クッキー屋からライザップに華麗に業態を変えた同社のように、「次は何を誘致してきてくれるんだろう」と楽しみにしてもらえるような会社になってほしい。弱いものを徹底的に叩く日本社会に媚びるのはもうやめて、もう一度、新たな方法で輝きを取り戻していただければと、心から願っています。

 最後に、私がSpelunker’sに「スゲェ美味しかったよ!」とメールしたときにもらった返事を転載します。

〈Thank you for such a glowing assessment of our burger. We spend hours a day trimming, blending, and grinding our beef. We think it’s worth it, glad others feel the same. Steven Antonelli〉

 それではまた次回。

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。慶応義塾大学商学部中退。大学を中退後、酒販コンサルチェーンKLCに在籍し、95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、無料メルマガと有料メルマガの配信事業を行う。99年に設立した子会社は設立から364日の日本最短記録でナスダックジャパンに上場したが、その際手にした資産も日本最短記録で見失う。

「みんなの投資資料室」http://synapse.am/contents/monthly/daiokawa
資金量300万円で、これから投資をしようとする人向けに、大川弘一が毎日ウォッチしている株の「どこを見て、どれぐらい調査して、どう判断しているか」独自の情報収集術とその学習方法を会員限定で公開している。
<イラスト/松原ひろみ>

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