「TPPはアメリカの雇用対策」田中康夫と中野剛志が指摘

野田首相は11月12、13日にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の際に、関係各国にTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に参加することを表明するという。このTPP、推進派は「バスに乗り遅れるな」などと言っているが、その詳しい内容は国民に知らされていない。本当に参加していいものなのだろうか? 新党日本代表・田中康夫氏と、反TPP論者として注目の京都大学大学院准教授・中野剛志が対談した。

中野剛志

京都大学大学院准教授 中野剛志氏/ ‘71年生まれ。京都大学大学院准教授。経済産業省課長補佐を経て現職。著書に『TPP亡国論』(集英社)、『国力とは何か』(講談社)など。最近刊行の共訳書『〈起業〉という幻想』(S・A・シェーン、白水社)も話題

中野 「もともとTPPはブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドの4か国による小さな連合にすぎませんでした。オバマ大統領の関与表明で米国の参加によって米国の世界経済戦略に組み込まれたわけですが、このことは前年の’08年に起こったリーマン・ショックと大きな関係があります。今でも米国の失業率は9%を超えていて、ある意味出口なしの“飢餓状態”。米国にとってのTPPは、アジアへの輸出を増やして米国国内の雇用を創出することが狙いです。オバマ大統領は昨年の横浜APECで来日した際にもアジアで輸出を増やす意欲を表明し、正直に『国外に10億ドル輸出するたびに国内に5000人の職が維持される』と述べています。ところが、TPP交渉参加国はいずれも小国で輸出先として期待できない。そこで、大きな国内市場を持つ日本を狙い撃ちにしようとしているわけです」

田中 「来年に大統領選挙が迫っているのに支持率ガタ落ちのオバマは相当追い込まれている。出身地のハワイでAPECを開き、野田首相から交渉参加の確約を取ってアピールしたいってことでしょ」

中野 「輸出を伸ばして雇用を増やすということは、他国の雇用を奪うという意味です。相手国の国産品を淘汰するわけですから。つまり、米国の失業者が減れば、日本の失業者は増えるということになります」

田中康夫

新党日本代表・田中康夫氏/‘56年生まれ。衆議院議員、作家。'00年より長野県知事。'07年に参議院議員。'09年8月の衆議院選挙で兵庫8区から立候補し当選。衆議院本会議での反TPP代表質問が話題沸騰。

田中 「米国は輸出を増やしたいけど輸入を増やす気は全くない。オバマ大統領は横浜APECでも『米国に輸出さえすれば経済的に繁栄できると考えるべきではない』と釘をさしています。米国がTPPで目指しているのは、自由貿易じゃなくて時代錯誤の保護貿易。僕は、米国一人勝ちの“ブロック経済”であるTPPによって、日本の製造業が危機に陥る可能性が高いと考えています。今や日本の最大の貿易相手国は米国じゃなくて中国。その中国市場で日本はドイツと激しく競っています。中国がTPPへの対抗手段として EUとFTAを締結すれば、機械などの中間財の供給はドイツに独占され、自動車や高速鉄道の分野で日本は大敗する。TPPはアジアと日本を分断して、日本の国力劣化をもたらす“貿易阻害協定”。それなのに日本では政府もメディアも「平成の開国」だ「第三の開国」だと参加を煽っている。でも、通商立国の日本はとっくに「開国」済み。世界銀行が発表した日本の平均関税率は EUや米国よりも低いんです」


11/8発売の週刊SPA!「TPP参加で壊国する日本」では、田中氏と中野氏の対談のほか、TPP参加を問題視する識者らによる反論を集めた。

取材・文/尾原宏之

週刊SPA!11/15号(11/8発売)
表紙の人/山田 優

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