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東海道新幹線火災、車内にいた男性の証言「乗客たちは冷静沈着だった」

 新幹線の車内で起きた焼身自殺という、前代未聞の事件が起きたのは本日(6月30日)の午前11時半頃。ネットの上のニュースでは悲鳴と怒号が飛び交い、車内はパニック……と速報が流れた。事故当時の状況を5号車に乗っていた男性に話を聞くことができた。
火災発生時の車内

火災発生時の車内。それほどの混乱はないようにも見えるのだが……(写真は乗客男性より提供)

「僕が乗っていたのは5号車。事故当時はちょうど寝てたんだけど、新幹線が停まって目が覚めたんです。すると、鼻を突く焦げ臭い匂いが漂い、顔が煤で黒くなった人たちが前の車両からゾロゾロ歩いてきて、車内は騒然となったんです」  だが、車内では説明のアナウンスもしばらくはなく、何が起きたのかまるでわからない状況だったという。 「逃げてきた人が『1号車で火を付けた人がいた』って話してたことと、スマホの速報で情報を集めて何が起きたのかは何となくわかってきたんだけど、車内放送はなく伝聞的にしか情報がなかったのはちょっと怖かったかな。でも、今って情報はスマホや電話ですぐに受け取れるから、車内のアナウンスよりも先に状況を把握できていて、本当に自分の乗ってる新幹線なの?みたいな不思議な感じがしましたね。僕がいた5号車は逃げてきた人の話や匂いなんかもあって、そういったリアルな情報とスマホからの情報を足して状況を理解することができたと思う。でも、最後方の車両の人は何が起きたかちゃんと伝わってなかったと思うよ」  実際、怒鳴る人や乗務員につっかかる人はこの男性の回りにはいなかったという。 「前の車両から逃げてきた人は連結部分や空いてる席に座ってなんとか落ち着いたんだけど、停車してからすぐ、停電してコンセントの電気もエアコンも、トイレも全部停まってしまった。でも、入り口のトビラが開いて空調的にはそんなにツラくなかったかな。電気が復旧したのも12時40分くらいで、1時間くらいしか停電してなかったから、スマホの電源もなんとかなったし、事情が事情だけにみんな『しゃあないなぁ~』みたいな感じで動くの待ってました」  新幹線が動き出すと、車内は安堵の空気が流れたという。 「こんな事故が起きて3時間ちょっとで復旧できてよかったと思いましたね。よく車内に閉じ込められる映像がニュースなんかで見かけてたから、最悪、4~5時間は車内かなぁ~って思ってました。小田原に着いてホッとしたんだけど、シートに包まれた被害者の方を見たときはさすがに複雑な気持ちになりましたね」  この男性が最後にこんなことを語ってくれた。 「一つだけJRに文句を言いたいんだけど、新幹線は外国人の方がけっこう乗ってたのに英語の車内放送は一切なし。オリンピックを控えて観光で売り出していきたいなら、せめて英語でアナウンスしてあげなきゃって。結局、英語を話せる人が乗務員に代わって英語で状況説明してたしね」  その後、小田原まで新幹線は戻り乗客は降ろされたのだが、警察からの事情聴取があり乗客たちはしばらく拘束されることになり、男性は「車内で待たされてたときよりもかったるい……」と電話で語ってくれた。  世界一安全な新幹線で起きた未曾有の事故だったが、大惨事にならずに済んだのは乗務員たちの迅速な対応と乗客たちの冷静な対応があったからに他ならない。 <取材・文/SPA!編集部>
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