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規制法案が閣議決定で日本のドローンビジネスはどうなる?

 ドローンが首相官邸に落下した事件からはや3カ月。話題の空飛ぶ無人飛行機を巡って、世論や政府の動きが活発化している。事件後、東京都内で、ドローンの飛行禁止を改めて強調した公園や庭園は80箇所以上。また、5月24日付の読売新聞によれば「47都道府県と20政令市のうち、約半数の32都県・政令市」が、人が集まる公園や観光地、県庁などでのドローン使用を禁止することを検討していると言う。
今年5月に千葉県・幕張で開催された「国際ドローン展」

今年5月に千葉県・幕張で開催された「国際ドローン展」

 “ドローン・トラブル”に世間の関心が集まる中、政府も本腰を入れて動きはじめた。  安倍内閣は7月14日、ドローンの夜間飛行禁止などの内容を盛り込んだ航空法改正案を閣議決定した。同改正案では、ドローンが空港周辺および家屋密集地上空を飛行する際、国土交通大臣の許可を受けなければならないとしている。また、夜間やドローンを目で確認できない状況では、原則飛行が禁止される。違反した場合には、最高で50万円の罰金を科すという案が検討中にある。加えて、同法案とは別に、重要な政府施設や原発上空の飛行を禁止する法案が衆院を通過している。その名もずばり「ドローン飛行禁止法案」だ。  こうしてみると、日本ではドローンは“凶器”、つまり人間に害を与えるものとして認知されている傾向が強い。政府も世論を吸い上げ、規制を着々と進めているように見える。  一方、ドローンは新たなイノベーション分野、新興産業としても注目されはじめている。  もともと軍事シーンで利用されてきたドローンだが、過去に電子レンジ、コンピューター、GPS、インターネットが辿ったのと同様に、民生転用(スピンオフ)が本格化しようとしているのだ。  15年1月に米・ラスベガスで行われた世界最大の家電見本市『コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(Consumer Electronics Show=以後CESと表記)2015』には、世界16社が最新型ドローンを出展。1967年に始まったそのCESでは、過去にもビデオテープレコーダー(1970年)、CDプレーヤー(1981年)、DVDプレーヤー(1996年)、ハードディスクレコーダー(1999年)といった最新テクノロジーを駆使した家電製品がお披露目されてきた。今回はその場所で、モバイルやウェアラブルと並ぶ「成長カテゴリー」として、ドローンが取り上げられた。  日本でも15年5月20日から国内初の「国際ドローン展」が開催された。経済産業省や総務省、国土交通省が後援し、千葉県の幕張メッセで開かれた同イベントには、日本、中国、アメリカなどの約50社が参加。ドローンの最新技術や活用例などが紹介され、3日間で約1万人の来場者が訪れた。その活況を目の当たりにして、「2015年はドローン元年だ」と語る、メディアや関係者も少なくない。ドローンは今、空飛ぶ最新技術として世界中から注目を集め始めている。  現在、ドローンをビジネスの現場で利用しようという試みは多岐にわたる。農業、防犯・警備、インフラ整備、災害救助、エンターテイメント、撮影、スポーツ、コマーシャル、アートなど、その分野は着実に広がりつつある。  ドローン・ビジネスの現場にいる関係者は、規制が進むことについてどのような思いを抱いているのだろうか。 「規制ができるということは、ルールが生まれるということ。それは、ドローンの普及にとってよいことだと思います」  そう話すのは、日本企業でドローン販売に携わる関係者である。 「外国でもテロや犯罪の可能性を考慮しながら、産業に生かすための法制備が進んでいる。日本もその段階にきたのでは」(同上、ドローン開発関係者)  また、企業でドローン開発に携わる関係者からは次のような声も。 「規制は絶対に必要。悪用する人を野放しにしていけば、ドローン市場が健全に発展しない。ただ、メリットとデメリットはしっかり精査されるべき。また、使用目的に応じた細かい制度も必要でしょう。つまり、イノベーションと犯罪抑止をバランスよく両立できる法整備が必要になってくるのではないでしょうか」  ドローンについては、今後も議論が錯綜しそうな気配である。だが、その経済的なインパクトは、日本経済にとっても少なくないはず。危険をなるべく減らし、ドローンが世の役立つことを手助けするような法整備が望まれている。今回、緊急出版した『ドローンの衝撃』(扶桑社新書)では、ドローンの飛行のしくみから各産業における活用例、法整備について解説した。ドローンについて、より詳しく知りたい方は是非、手にとってほしい。 <取材・文・撮影/河 鐘基>
ドローンの衝撃

イノベーションか、それとも凶器か?

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