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「富士山が膨張して噴火寸前!?」は本当か?

5合目から富士山頂を見上げる

 本誌6/7号の特集記事「放射能より[放射能論議]のほうが恐ろしい」で、“放射能で東日本全滅”“被曝して人が放射化”など、放射能危険論において非常に極端な説が拡散しつつあることを紹介し、それらを検証した。  しかし、こうしたトンデモな主張、実は放射能に関するものだけではない。我々取材班のリサーチによって明らかになった、「トンデモ」的な危険論の中に、「富士山が膨張していて噴火間近」というものがあった。  富士山が膨張……。ということはなにか? あの日本一高くてデカい富士山が、さらにデカくなっていて、3776mより高くなっているのか? しかもその上、いまにも爆発しそうなのか?  果たしてそんなことがあるのだろうか?  富士山を筆頭に、箱根火山などの地殻データを観測し続けている神奈川県温泉地学研究所の杉原英和さんに聞いてみた。 「2008年以降、富士山の膨張による地殻変動があったというのは事実です。気象庁火山噴火予知連絡会も公式に発表しています」  なんと! 地殻変動があったのは事実で、2009年10月に観測されたデータでは山梨県富士吉田市と静岡県富士宮市の距離が「2cm」伸びたのだとか。 「ただし、この動きは昨年秋ごろには終息し、現在ではほとんど動きはありません」 そして、この昨秋までの富士山の動きも、噴火の予兆ではないという。 「活火山の地下深くにはマグマやガス、熱水が多くあり、これらが動くことは比較的よくあることです。その動きの影響が浅い所に出てきて、地震が頻発するようになると危険ですが、昨年まで観測された富士山の膨張については噴火との関連性はないと断言できますよ。万が一、噴火の予兆があれば火山噴火予知連絡会から発表されますから」  3月15日には、富士山麓を震源とする静岡県東部地震(最大深度6強)の地震が発生したが、これも富士山噴火との関連性はないそうだ。また、「富士山膨張→噴火寸前」論者が、富士山膨張の根拠として挙げる“路盤の亀裂”などは、この静岡県東部地震によるものだという。  もちろん富士山は活火山なので噴火する可能性はゼロではないし、東海地方を震源とする地震も警戒を怠るべきではない。だが、「膨張→噴火」といまこの時点で吹聴するのは、根拠薄弱な説であるようだ。  では、なぜこのような説を唱える人が出てきてしまうのだろうか。 「個人的な見解ですが、東北地方太平洋沖地震や静岡県東部地震により、東海地震への不安が高まっていることに加え、昨年までの富士山の膨張という情報が重なって生まれた噂だと思います。1707年に発生した東海・東南海・南海連動型の宝永地震の直後に富士山が噴火したという歴史的事実も影響しているかもしれません」  3月11日以降、大型地震が各地で頻発する日本列島。多くの人が不安を抱える中で、“富士山膨張・噴火説”は誕生してしまったようだ。とは言え、このような危機感をさらに煽るようなデマは、人々の不安をさらに高めるだけ。情報の精度をよく確かめて、デマに踊らされないよう注意する必要があるだろう。 文/鼠入昌史(Office Ti)
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