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不適切会計で200億円多く納税してくれた東芝

東芝製品

他社よりも安いと評判だった東芝製品。それも”チャレンジ”のおかげだったのだろうか

 粉飾決算には、利益を水増しする「粉飾決算」と、過少申告する「逆粉飾決算」とがある。国税は追徴が仕事なので、税務調査で狙うのは逆粉飾決算のほうだ。一方で東芝は利益の水増し(粉飾)をしていたと見られるが、本当の利益以上に利益をだしたことで、本来払う額以上の税金を納税してくれたことになる。しかも、そのうちの一部は、時効で取り戻せないという。『国税局資料調査課』の著書で、元国税実査官だった佐藤弘幸さんに話を聞いた。 「過去に粉飾した利益について納税した分は過大納税となります。その過大納税した分は『更正の請求(国税通則法第23条)』という救済措置を受けることで回避できます。しかし、いくらでもさかのぼって更正の請求ができるわけではありません。期間制限があって、当初の法定申告期限から5年以内の事業年度が対象となります」(佐藤弘幸さん)  東芝は6年前から粉飾していたと報道されているので、いつの決算で修正経理をするかにより異なるものの、1~2事業年度分の過大納税した額は時効となり、取り戻すことができなくなりそうだ。その額は? 「第三者委員会が示した粉飾額は、2008年度から2014年度までで1518億円と発表しています。年度別の粉飾額は不明ですが、6年で1500億円の粉飾で、仮に2事業年度分が時効となった場合、500億の利益に対する税金が取り戻しでできなくなる計算です。利益500億円に対する税金は、ざっくり200億円です」(注)  つまり、東芝は粉飾したことで200億円も多く税金を払い、かつ取り戻しができなくなりそうなのだ。東芝の不適切会計問題で損害をこうむったステークホルダーも少しは溜飲が下がる!? (注)粉飾内容の詳細が不明なので、すべて「翌期以後認容にならない」ものとする。不適切会計と言われている内訳が見積もりや評価の問題である場合、仮装経理(税務)とならない可能性もある。 【元国税実査官・佐藤弘幸】 国税局資料調査課1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、電子商取引専門調査チーム(現在の統括国税実査官)、統括国税実査官(情報担当)、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。いわゆる“マルサ”は国税局査察部のことであるが、“コメ”は国税局資料調査課のことで、「料」の字の偏からとった隠語。一般に課税調査などを行う国税局員は「調査官」と呼ぶが、資料調査課は「実査官」と呼ぶ。 <取材・文/日刊SPA!取材班 Photo by na0905>
国税局資料調査課

巨悪脱税事件にも挑む国税最強部隊「資料調査課」の内幕を明かす

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