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チャイナショック!「不測の事態」はもう起こっている

連載12【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】 ▼チャイナショックが世界恐慌を引き起こす  完全にアベノミクス、いや世界経済に赤信号が灯りました。  今、世界市場を混乱させている中国発の世界同時株安は、2008年のリーマンショックを上回る経済危機になるかもしれません。対処を誤れば日本経済は再びデフレ不況に逆戻りです。消費税増税をしている場合ではありません。  何がそんなに危ないのか? それは中国経済の危機は実需、実際の需要に直接影響するからです。  リーマンショックの場合は、実体がなく得体のしれないサブプライムローンを含む証券化商品が焦げ付いたことが原因で発生しました。要するにお金、銀行の電子データのやりとりの問題であったため、不良債権を欧州やアメリカの中央銀行が買い上げてしまえば早期に解決します。それでも影響は決して小さくはなかったのですが……。  一方で、今回の中国発の金融危機は、中国当局が為替や資本の移動を制限しているため、リーマンショックのような金融面での危機が他国に波及する恐れはほとんどありません。ただし、中国と交易を行っている企業は相当な数に上ります。中国は曲がりなりにもアメリカに次ぐ経済大国です。その影響や、どれほどの大きさになるでしょうか。  次のグラフ(図1)は中国と主要先進7か国の貿易総額(輸出と輸入の合計)の推移ですが、中国の貿易額は2013年にアメリカを超えて世界一位となってしまいました。 ⇒【グラフ】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=922942 中国+主要先進7か国の貿易額推移14-1 つまり、中国経済の失速はこの巨額の物流、サプライチェーンに悪影響を与えます。中国と取引をしている企業は確実にダメージを受けます。  リーマンショックのような一瞬で危機が表面化する金融危機とは違い、実需に直接ダメージを与えるチャイナショックは、じわじわと世界経済を蝕んでいく可能性があると思われます。不良債権を買い上げればそれで済むものでもなく、非常に厄介です。  こんな状況で、日本は消費税増税している余裕なんかあるはずがありません。 ▼中国経済はすでにマイナス成長  中国当局は7月に4-6月期のGDP成長率を7%と公表しましたが、現在も上海総合指数は大暴落中です。8月25日にはとうとう3000ポイントを割り込んでしまいました。  7%という高い成長率を維持しているというのに、株価の暴落は止まりません。これは誰がどう考えても不自然です。  中国当局が公表しているGDPはデタラメであるとしか考えられません。しかも、この中国の経済成長率は実はマイナス成長に突入している可能性も指摘されています。  よく電力需要の伸びを見て、中国のGDPを暴くことがありますが、電力も中国当局の手にかかれば操作できないこともありません。それよりももっと決定的な指標があります。  それは貿易統計です。貿易は相手が存在しますので、いかに中国当局といえども輸出入の数字を捏造することは困難です。捏造すると貿易相手国との輸出額と輸入額が一致しなくなるため、すぐバレてしまうからです。  次のグラフは、主要先進7カ国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリア)の輸入増加率と経済成長率の比較ですが、輸入と経済成長率が見事に相関していることがわかります。つまり、経済が成長すると輸入は増える傾向にあるということです。  その理由は簡単です。国内経済が活性化すると、国内での生産を増やすために大量の資源や部品が必要になりますので、どうしても輸入が増えてしまうのです。 ⇒【グラフ】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=922943 主要先進7カ国のGDP成長率、輸入増加率の推移14-2 例えば日本ならば、車の生産量を増やすために鉄鉱石や鋼材、工場の電力を賄うための化石燃料の輸入を増やさなければならなくなるといった具合です。  その肝心の中国の輸入統計ですが、2015年1-7月の上半期の統計が前期比でマイナス14%になりました。しかし、GDPが7%成長しながら、輸入が14%も減少するなど普通は考えられません。  そもそも、中国は7%成長の原資を一体どこから調達したのでしょうか? それとも錬金術の技術でも開発したのでしょうか?まったくもって謎です。  主要先進7カ国データを見ればわかりますが、リーマンショックの翌年、2009年のGDP成長率はマイナス3.7%を記録しており、輸入は12%も下落しています。ですから、輸入が14%下落した中国の本当のGDP成長率は、すでに3~4%程度のマイナスなのではないでしょうか。  中国の統計はおかしいことだらけです。早急に手を打たなければ手遅れになってしまいます。  今、大変な危機にあります。  しかし、打つ手はいくらでもあります。そして、ここできちんと手を打てば、アベノミクスを維持するだけでなく、世界一豊かな経済大国!日本を復活できます。次回、その秘策とシナリオをお話しします。 ◆まとめ ・中国発の経済危機で世界経済が大ブレーキ ・中国の7%成長はウソ。マイナス成長の疑いもある ・中国の貿易額は巨額であるため、中国の景気失速は実需へ直接ダメージを与える ・早急な経済対策が必要。増税なんかしている余裕は一切ない ・「不測の事態」はもう起こっている。10%への再増税は凍結するべき 【山本博一】 1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ
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