「婚活するか一人で生きていくか迷っています」26歳・農業者の悩み

【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆相談者 日が暮れ(ペンネーム) 自営業 男性 26歳

私は今、結婚に向けて婚活しようか、迷っています。私の家族は代々小さいながらも農業をしてきました。このまま私が一人で生きていけば、いずれその土地と仕事を手放さなければなりません。私は、これまで恋人がいた経験もなく、努力して年々収入は増えていますが、まだまだお小遣い程度の稼ぎしかなく、生活は両親に助けてもらっているのが現状です。持病もあり、婚活の市場では、限りなく底辺に近い存在だと自覚しています。それだから、今ひとつ結婚に関して本気になれないところがあります。佐藤さん。私は結婚に向けて動いていくべきでしょうか? それとも結婚を諦めて、一人で生きていくための準備を今から始めるべきでしょうか? 情けない相談ですが、よろしくお願いします。

◆佐藤優の回答

迷うことなく婚活を始めたらよいと思います。両親から引き継いだ農地を持っているのは、とても大きな財産です。確かに日本の農業には、構造的な欠陥があるので、労働と現金収入が見合わない面があります。しかし、農業分野での構造改革が進む過程で変化します。ここで重要なのは、家業を断固守り抜くという決意を持つことです。日が暮れさんは、既に「お小遣い程度」であっても、家計にプラスをもたらしているのですから、自信を持つことです。

婚活における必要条件とは何でしょうか。一流大学を卒業している、あるいは、見かけがいいことではありません。自分とパートナーが生活していくことができる経済的基盤があることです。日が暮れさんの場合、農業という基盤を手放さない限り、この必要条件が満たされ続けます。「婚活の市場では、限りなく底辺に近い」などという自己過小評価をやめることです。「一緒に農業をしよう!」と婚活市場で正々堂々と呼びかけることです。ちなみに市町村役場でも、農業者の婚活を支援しているので、行政のサービスも活用して見ることをお勧めします。

ところで、最近読んだ松原耕二さんの小説『ここを出ろ、そして生きろ』で、ジャンが恋人のさゆりに職業観について述べた次の箇所が、とても印象に残りました。

<ぼくらの仕事は、大聖堂を建てるようなものじゃないかな。たとえばバルセロナのサグラダ・ファミリアや、ニューヨークのセント・ジョイン・ザ・ディヴァイン、大聖堂をつくる建設家や職人たちは、自分たちが死ぬまでに建物が完成することがないと知っている。絶対に、だ。それでも彼らはやめない。毎日、仕事場に出かけては、レンガをひとつまたひとつと、積み重ねていく。ぼくらの仕事も同じだ。さゆりもぼくも、レンガを積み重ねる職人なんだ。誰もが大聖堂の最終的な姿を見ないまま死ぬだろう。それでも続けるのはなぜか。それが正しいことだと知っているからだ。>(『ここを出ろ、そして生きろ』232頁)

ジャンとさゆりは、NGO(非政府機関)で人道活動を行っていますが、職業の種類に関係なく、明確な結果が見えなくても、正しいことに向かっていく仕事に従事することには大きな意味があります。農業は、まさに「正しいこと」を追求する職業であり、人間が生きていくことを保障する基幹産業です。人々を養うという「正しいこと」で生活の糧を得る、道徳的に意義の高い産業です。御両親たちが持っているノウハウを学び、農業者としての力を強化することが、実は日が暮れさんが結婚相手を見つけるための環境整備にもなります。1人で生きるための準備などする必要はありません。結婚できないと決めつけてはいけません。正面から明るく、農業者になることを望む結婚相手を探しましょう。道はかならず開けます。頑張ってください。

【今回の教訓】
農業は正しいことを追及する職業だ

◆募集
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⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form

【佐藤優】
60年生まれ。85年に外務省入省。在英、在ロシア連邦大使館、国際情報局分析第一課で活躍。02年に背任の容疑で逮捕。『インテリジェンス人生相談―復興編―』(小社刊)が好評発売中

◆今回の参考文献
ここを出ろ、そして生きろ

誰かを救うためにNGO活動に没頭するさゆりと危険な道を選ぶことでしか「生」を実感できない人道支援者ジャン。生死の境で生きる2人を描いた長編小説。11年刊

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