日本で「大規模な爆発事故」が起きにくい理由

 見回せば、われわれの日常は実にたくさんの“危険物”で囲まれている、と指摘する東京理科大学教授・松原美之氏。

「例えば家の中にあるスプレー。その中身は、ヘアスプレーであろうと殺虫スプレーであろうと、すべて可燃性ガスで満たされています。日本には7000万台近い自動車が走っていて、そのクルマのすべてが何十リットルものガソリンを搭載しているわけです」

日常に潜む[混ぜたらキケン]図鑑12 しかし、スプレー缶が爆発したり、事故でクルマが燃上したり、人が焼け死んだりということは、そう頻繁には起きないのも事実。

「街の至るところにあるクリーニング屋さんでは、ドライクリーニングに石油系の溶剤を使っています。でも、それに引火して爆発したという話はほとんど聞きません。

私自身は化学火災を研究してるのですが、日本では実に小規模の事故しか発生していない。

それに比べるとアメリカと中国はある意味、桁違いに事故もダイナミックです。これは、非常に臆病に物事を進めていく日本人の国民性の賜物だと思います。一度痛い目に遭ったら、以前よりも慎重になる国民性は、かっこ良くないけど、長生きはできるでしょう」

日常に潜む[混ぜたらキケン]図鑑12 とはいえ、われわれ人間が知らない未知の危険はまだたくさんあるはずだという。

「いくら研究しても実験室のガラスのビーカーの中で起きることと、実際の化学工場の現場で起きていることは違うのです。だから現実に数々の事故が起きる。思いもよらないものが突然、危険物と化すことも。

身近なところでいえば、紙もそのひとつです。紙がメラメラと燃える様子は容易に想像がつくと思いますが、紙が爆発するところって頭に思い浮かびませんよね。しかし紙を粉砕して粉状にしたものを空中に撒き、火をつければ爆発します。いわゆる粉じん爆発です。それも、実際に起きるまで、人類はそういうことが起こり得るということを知らなかったわけです。研究を続けることが不可欠だと思います。

つまり、私たちが知らないだけで、爆発する可能性があるものはすべて爆発します。どこにどんな物質があり、また、すべての物質は爆発する、と認識して備えるべきです」

【松原美之教授】
東京理科大学大学院国際火災科学研究科。湯川秀樹を目指し京都大学入学するも心変わり、理学部卒業後は消防庁へ入省。東京大学工学博士取得。消防庁消防研究センター所長を経て退官、現職に

取材・文/Office Ti+〈オフィスチタン〉 大崎えびす 協力/日本分析化学専門学校 http://www.bunseki.ac.jp/
― 日常に潜む[混ぜたらキケン]図鑑 ―

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