男も“良い靴”を履けば人生が変わる。仕事、ライフスタイルにもたらす変化

「とびきりいい靴をはきなさい。いい靴は、はき主を素敵な場所に連れて行ってくれる」―― これは、神尾葉子作の人気少女マンガ『花より男子』に登場する名台詞だ。

 多くの女性の共感を得てきたこの言葉だが、良い靴が人を特別な場所に導いてくれるのは、女性に限ったことではない。男性でも、こだわった良い靴を履くことがその主を一段上のステージまで“歩かせる”ことになるのかもしれない。

◆あるCMプロデューサーの“無理をした”こだわり

 大手自動車メーカーや飲料メーカーのCM制作に携わるCMプロデューサー・横井秀光さん(31歳)は、「靴は、10歳以上年上の人とでも共通の話題になる」と話す。

CMプロデューサー・横井秀光さん横井「僕は職業柄、広告代理店のクリエイティブ・ディレクターや企業の宣伝部の方々など、10歳ほど年の離れた人たちとお会いすることが多くあります。30代後半から40代の方々ですね。良い靴を履いていると、そういった目上の経験豊富で仕事に厳しい人たちからも『おっ!』と言ってもらえるんです。そして、“靴”という共通の会話のネタができます。

 これが良い時計や良いクルマだと、『その歳で……』とイヤミになってしまう可能性もあるかもしれませんが、良い靴であれば、『無理して買ってるんですよ……』が通じるんですよね。実際僕、かなり無理して靴にお金かけてきましたから(笑)」

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 横井さんは、年に1回か2回、熟考をかさねたうえで新しい“いい値段”の靴を買うという。その自慢のコレクションを見せてもらったところ、“男なら誰もが憧れる”といわれるオールデンや、トムブラウン、そして“パーティー用”というエナメル輝くディオールなど、高級な革靴がずらりと並ぶ。

 さらにスニーカーも、クリスチャン・ルブタンやLANVIN(ランバン)など、一見するだけでこだわりを感じさせるものばかりだ。

横井「本当に財布に怒られながら買ってますよ……(笑) 少しでも安く手に入れたいので、スニーカーは中古品もいくつかあります。革靴の場合、カタチが前の所有者の足で出来上がってしまうので、中古は難しい……。だから買うときは、『絶対10年以上は大切にする!』と決意を固めてお金を払います」

 ここまで靴にこだわる横井さんだが、服に関しては、自身が学生時代にユニクロでアルバイトしていたこともあり、いわゆる“プチプラ”なものも好むという。

横井「ベタなことを言うと、“オシャレは足元から”なんです。全身ユニクロを着ていたとしても、良い靴さえ履けば全体は見事に締まる。それも、靴の大きな魅力だと思います」

◆良い靴がもたらす環境の変化

 横井さんは、“良い靴がもたらすもの”について、次のようにも語る。

横井「CMプロデューサーという仕事は、一言でいえば“営業”ともいえます。ただそれは、モノを売るわけではなく、『一緒に何か作りませんか?』という提案をさせていただくわけです。

 そのときに相手から見られるのは、経歴だけではありません。『この人とならいいものを作れそうだな』と思わせられるような“センス”や“価値観”、“こだわり”を伝えることも重要なんです。打ち合わせの場所にどんなお店を選ぶかのセンスもあるし、それこそ履いている靴から伝えられる価値観やこだわりもあるでしょう。

 そして、良い革靴を買えば、それに合った靴下や上下の服を着るようになるし、それは自然と身なりを整えることにも繋がります。あと、良い靴さえあれば、どんなお店にでも気負わずに行けるようになりますね。

 僕自身そうでしたが、靴にこだわるようになれば、ファッションからライフスタイルまで、買うまでは思いもしなかった自分の中での様々な価値観の変化がありますよ」

 横井さんの場合、職業柄、また私服で働くという環境もあり、“良い靴”という存在が仕事において大いにプラスになるようだ。

 ただし、「見た目からセンスや価値観を伝える」「身なりを整える」「行く場所の選択肢が広がる」というのは、結局のところスーツにおいてもあてはめられることであり、仕事とは関係なく生きるうえでも重要なこと。

 男性でも、いや男性だからこそ、ファッションは足元から選ぶべきなのかもしれない。 <取材・文/宇佐美連三>

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