投資とギャンブルの違いって?――連続投資小説「おかねのかみさま」

 みなさまこんにゃちわ大川です。

 それでは連載の三回目です。

※⇒前回「競馬場に向かった健太と神は…?」

〈第3回 ギャンブラー健太〉

「…俺、もう賭けごとは向いてないとおもうよ。やめる。もうやめる」
「あー。いいですね。その気付きは」

「おまたせしましたー」

「こんなに食うの?」
「はい。けんたくんもたべる?」
「いただきます…」

「ま、今回は勝っても負けてもいいんです。今日のテーマは視野の広さでしたから。そして、実はもうひとつテーマがあるんです」
「もうひとつのテーマ?」

「はい。『投資とギャンブルのちがい』です」

「投資とギャンブルの………ちがい???」

「はい。投資を否定する人はよく投資をギャンブルに喩えて投資をする人自体をdisったりしてますが、彼らは勉強不足です」

「でも、どっちかっていうと勉強しない奴がギャンブルにのめり込んじゃうイメージがあるよ。俺だって学校行かないでパチンコ行ってたし、たまにはパチスロもしたけれどそれでも学校にいる奴らのほうがずっと勉強してたし、俺はそいつらの間では『ギャンブラー』って呼ばれてたみたいだから、あいつらのほうが勉強不足ってことはないんじゃないかな?」

「けんたくん」
「はい」

「あなたは『ギャンブラー』ではなくて、大きな投資の一部です」

「え?」

「ポークジンジャー食べながらしっかり聞きなさい。あのね。こう考えるとわかりやすい。投資というのは、毎回確実に勝てるものではありません。この点はギャンブルと一緒ですね」

「はい」

「じゃあ投資とギャンブルは何が違うか。それは、試行回数と確率です」

「あーもうわかんない。漢字は二文字まで。むり」
「ポーク取り上げ」
「ごめんなさい」

「100%うまくいくことがない限り、確率というのは、ほんとにほんとに重要です。たとえば競馬では、その倍率は人気に反映されて現れます。けんたくんが賭けた『キープレフト』は、今回のレースで何番人気だった?」

「…10番です」
「おうまさん全部で何頭?」
「…10頭…」
「ぷーーーーー!!!」
「わらうな!!!」

「失礼。じゃあなんでそのお馬さんに賭けたの?」
「そいつが勝てば133.2倍だったから…」

「よろしい。確かにそのおうまさんが勝てば、君の50万円は6660万円になって、いきなりウハウハだったでしょう。だけどね健太くん。毎日毎日イカ食いながらこの競馬場に通い詰めている茶色いオッサンたちが全力で予想した結果がその数字なんだ。つまり、ほぼ全員が勝てないと思っている。そんなおうまさんだから倍率が高くなっていたんです」

「そうか…」

「投資とギャンブルの違いを簡単に言葉で表すなら、『100回やってプラスになる方法』が投資。『1回で人生が激変する行為』をギャンブルと呼びます」

「おおおおおおおおおおおお…お?」

「つまり、100回やったあとに、投資にマイナスがあってはいけません。たまに負けてもコツコツと取り返し、結果的にプラスになればそれでいいんです」

「じゃあ、俺のさっきのやり方は『投資』じゃなくて『ギャンブル』ってことですか?」
「もちろんです」
「でもさ、じゃあさ、どうすればよかったの?俺が目指してるのは40億円なのに、1000円ずついろんな馬に賭けて、今日帰るときに51万円になっても全然意味ないよ」

「けんたくん」
「はい」
「このハンペンアタマ」
「!?」

「いいですか?50万円を51万円にすれば上出来です」
「なんでよ」
「102%だからです」
「102%?」
「はい。今回君が賭けた『単勝』という方式は、掛け金のうち80%しか戻りません」
「そうなの?」
「はい。20%は競馬場の運営や利益にまわされます。つまり10億円集まったら8億円しか配当にまわされないので、102%の結果を出せるひとはかなり予想のセンスがいいか、強運を持っている人なんです」

「強運…」

「そしてもし、毎日毎日102%の結果を出せたなら、けんたくんの50万円は1か月で90万円を超えてきます」
「そうなの?」

「はい。そしてその調子で毎日やれば、一年後には6億8千万円になってます」
「6億!!!?」
「&ハッセンマン」
「すげー」

「でもね、さっきも言いましたが、20%の手数料を取られるゲームで、102%の勝率を続けるのは本当にたいへんなことなんです。なにしろマイナスからのスタートですから、どんなにがんばっt」
「やる」
「え?」

「俺、もう一回やるよ。寿命半年分、50万円お願いします」

「…」

「投資とギャンブルの違いはわかりました。俺がさっきやったのは投資じゃなくてギャンブルだ。だけど、俺が寿命を売ったカネで投資をすれば、もう寿命が減ることはないだろ。そもそも俺が寿命を売ること自体がギャンブルだし、俺は自分の人生を激変させていきたいんだ。だからこのギャンブルでカネを得て、それをしっかり『投資』してったらいいんだろ」

「う、うん。でも」

「でも?」

「たいへん申し上げにくいんですが、けんたくんの寿命の値打ちが少し減りまして…」
「!!?」

「1年で90万円になってるね」
「それも減るの!?」
「そうなんだよねー」
「じゃあ、半年だと45万円?」
「おっ、計算早い」
「…」

「どうする?」

「やるよ。そのかわり、なんか手数料の低いゲームを教えてよ。俺そこでがんばって102%を続けてみるから」

「ほんとに?」
「やる」

「わかりました。ピピ。はいじゃあこれ45万円。おーしぶとい。まだ生きてる」
「いつも軽いなー。じゃあ次はどこに行くんですか?」

「そうだなー。じゃあ、カジノでも行きましょうか」
「カ、カジノ!!!?」

次回につづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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