ホームレス経験者のとてつもない言葉の重みに思うこと【エッセイスト・犬山紙子】

【週刊SPA!連載 痛男!(イタメン)】
―『負け美女』のオトコ観察絵日記 犬山紙子 ―

◆ホームレス経験者のとてつもない言葉の重み

ホームレス経験者のとてつもない言葉の重み 東京ディズニーシーに『スッキリ!!』のロケで行ってきました。今や爆買い中国人だらけなのか!? 日本というより中国という感じになっているのでは?と思いながら門をくぐりウロウロするも、そこには以前と変わらぬ夢にうっとりした人々が。中国人と思われる人はたしかに多いけど、外国人だろうが、田舎者だろうが、都会者だろうが、ディズニーの中では夢の国の住人の一人にしか見えないこのマジック。ディズニーの力ってのは半端ないと痛感した次第であります。

 さて先日、G君(36歳)と会ったところ「いつか自分もそうなるかもしれないからとりあえず一度体験しておこう」と、20歳のときにホームレスを1か月半やったという、すごい話が始まったんですね。G君、公園に住み始めの頃はまだホームレスたちの仲間に入れてもらえなかったそうですが、どんどん身なりが汚くなり、彼らの匂いと自分の匂いが近づいて、会話中の自分の表情が安定してきた頃、仲間に入れてもらえたんだそうで……。そりゃそうか、「臭いな」なんて顔で話してたら、心なんか開いて貰えないよな……。

 そして、先輩たちからさまざまな情報をもらえるように。狩場と呼ばれる、空き缶とか資源ゴミなど、換金可能なものが置いてある場所だったり、餌場と呼ばれる食料をゲットできる場所だったり、まさにその情報こそが“生きる術”であります。餌場に関しては「Mのゴミには、食べられそうなハンバーガーがあっても灰皿の灰をその上にかけられているから、食べるとお腹を下すぞ」とか「FのS店は基本綺麗な状態でゴミを出してくれるからオススメ。でもこの時間に行くと地獄を見るぞ、一回体験してみるか?」など、結構細かい。これらの情報は自作の地図に書き込むんだそうです。

 ちなみにMのゴミに灰がかけられるようになった理由とは、カラスが食い散らかした後のようにする先人がいたからであり、そういう先人のやってきたことというのが、後輩ホームレスたちにダイレクトに影響を及ぼすようです。想像以上にルールや常識が大切な世界なのかもしれません。

 で、G君、その「地獄を見る時間」にFにも行ってみたそうなんですね(何事も体験!)。すると、ゴミを持った鬼の形相の店員が現れ、G君を見るなりボコボコに蹴り出したそうなんです。「お前らみたいなクズが!」とか聞き取れないような言葉を発しながら、とにかく蹴り続ける。G君は仲間に食料をもって帰らなきゃいけないため、やり返しもせず頭とお腹を手で守りながらずっと蹴られていたんだそうで。そして、憂さ晴らしが済んだその店員は、ゴミを置いて店に戻ったそう。ちなみにその店ではその店員だけがそういうことをするようで、そいつの置いていったゴミはちゃんと食べられる状態だったそうです……。

ホームレス経験者のとてつもない言葉の重み

犬山紙子

 その後G君は普段の生活に戻り、今度は修行僧とかにもなったりするわけですが、こんなふうに実際体験してから物を語る人の言葉の重みと言ったら……。こういう、とりあえず当事者の生活を経験する、みたいな政治家いたら投票するかもしれない。自分の匂いが相手と同じにならないと相手と仲良くなれないとか、ホームレスを憂さ晴らしに使う店員がいるとか、頭で考えても出てこないですもの。私自身、さすがにG君みたいになるのは無理ですが、机上の空論だけで語るのはやめねばなあ、なんて気が引き締まった夜だったのでした。

【犬山紙子】
エッセイスト。単行本デビュー作『負け美女』(マガジンハウス)で注目を浴びる。著書に『高学歴男はなぜモテないのか』(扶桑社新書)ほか。TVでは『スッキリ!!』『みんなのニュース』ほかでコメンテーターとして活躍中

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