仮面ライダーはなぜ役者の登竜門となるのか? ヒロイン・内田理央が語る“1年間”

 いまや、テレビドラマは2か月から3か月で全話放送するのが当たり前となっている。

 昭和には1年間、もしくはそれ以上の期間にわたって放送されるテレビドラマが多く存在したが、現在1年間放送するのはNHKの大河ドラマ、そしてテレビ朝日系列の「仮面ライダーシリーズ」と「スーパー戦隊シリーズ」だけだ。

 はたして、1年間同じ作品に演者として携わり続けるというのはどういうことなのか?

 2014年10月より放送を開始した平成仮面ライダーシリーズ第16作目『仮面ライダードライブ』(2015年9月27日に最終回)にてヒロインの詩島霧子役を演じた女優の内田理央に話を聞いた。

内田理央◆初めてのアクション…1年間で褒められるレベルに

――『仮面ライダードライブ』(以下、『ドライブ』)のヒロイン役が決まったときは、率直にどんな感想を抱きましたか?

内田「とても嬉しいのはもちろんだったんですけど、それよりも驚きの感情のほうが大きかったです。これまでの平成ライダーシリーズのヒロインは10代の役者さんが多く、私は決まった当時22歳でした。ヒロイン役は厳しいかな、と思って受けたオーディションだったので、決まったときはマネージャーさんと一緒にかなりビックリしました」

――ヒロインに決まってから、準備は大変でしたか?

内田「そうですね。ただ、決まってからすぐに撮影が始まったんです。クランクインまでには1週間か10日くらいしか期間がなく、バタバタでした。急いで髪の毛を黒くして、警察が舞台だったので警察について調べて、本読みを何回かしました。アクションの練習は、基礎的なことは教えていただいたという感じでしたね」

――アクションについては苦労しましたか?

内田「私は『ドライブ』が初めてのアクションへの挑戦でした。しかも、もともと運動神経が悪くて……。最初はろくに走ることもできない状態だったので、現場をざわつかせてしまいました。でも、日々の撮影のなかでスーツアクターのみなさんの凄いアクションを近くで見ていたからか、1年間のあいだで徐々に身についたようで、最近撮影した映画『血まみれスケバンチェーンソー』(2016年公開)の現場では、アクションを褒めていただけました。1年間アクションをやったことで少しは身についたんだなって思えて、すごく嬉しかったです」

◆朝4時起き、過密スケジュール、寒さとの戦い

――1年間の撮影は、どのようなスケジュールで行われるんですか? 朝は早い?

内田「そうですね。朝の4時頃に起きて撮影所に向かう日々でした。ただ、だんだんと早起きするのは当たり前になってくるし、メイクさんのチームなども1年間同じで朝イチからついてくれていたので、朝が早くてつらいと思うことはなかったです」

――ドラマ本編の撮影に加えて、映画の撮影も並行して行われますよね。かさなると大変だったのでは?

内田「ドラマに加えて映画を計4本、そして『ドライブ』ではスピンオフ作品もたくさん撮っていただいたので、確かに撮影がかさなると大変でした。ドラマ本編の台本、映画の台本、そしてスピンオフ2本の台本と、4本同時に抱えていたことも……。家に帰れず、お風呂を借りて1時間仮眠してまたすぐに撮影という日もありました」

――そんな過密な撮影に音を上げたことはありませんでしたか?

内田「撮影がつらくてやめたいということは一切なかったです。ただ、寒さとの戦いは大変でしたね……。わたしは1年間ずっと同じ衣装で、それは警察の制服をイメージしたミニスカのものだったので、冬はやっぱり寒かったです。マイナス3度のなか雨のシーンでビショビショになることもありましたから。

あと、いちど映画版の撮影で、あるサーキット場の屋根の上で十字架に固定されて吊るされるシーンがありました。その撮影がちょうど年末年始のタイミングで、冬の風が直接ずっと強くあたっていたので、さすがに体が麻痺しましたね。休憩になってもまったく動けなかったです」

――それは想像を絶する過酷さですね……。

内田「ただ、大変なのはもちろん私だけじゃないんです。逆に夏の暑いときは、スーツアクターのみなさんは本当に過酷だったと思いますし。それに、スタッフのみなさんも大変ななかでキャストはやっぱりすごく気を遣ってもらってると思うので、“つらい”とか“やめたい”とかは本当に一切なかったですね」

◆人間的にも成長する理由

――「仮面ライダー」シリーズといえば、やはり子供が多く見ていると思います。イベントなどで子供たちと接した経験はいかがでしたか?

内田「お子さんたちにとって、私は内田理央というより“霧子”(役名)なんですよね。ポリスの衣装を着ていれば、やっぱり『今日も戦ってきたの?』って聞かれます。だから、私生活でも“霧子”としての自覚をなくさずにいるようにしました。

それは監督さんやスタッフさんも凄く意識していて、撮影に入る前に『子供たちに夢を与える役を演じる』ということについて話をしていただきました。たとえば、ちょっとした信号無視もしない、などですね。普段から気を付けていますが、より意識するようになりました」

――1年間の撮影を通じて、人間的にも大きく成長するんですね。

内田「はい。ただ、撮影が終わったからといってそれで終わりかというとそうではなく、ドラマが終わっても私を“霧子”だと思い続けるお子さんは多くいるので、そういう意識はいつまでもなくしてはいけないなと思っています」

 福士蒼汰、菅田将暉、佐藤健など、いまをときめく人気若手俳優たちの共通点。それは、平成仮面ライダーシリーズ出身であることだ。1年間という長きに渡ってみっちり鍛えられ、また役者としても人間的にも成長する機会であることが、このシリーズが“登竜門”である所以なのかもしれない。

 この経験を糧に、どのような女優になっていくのか。内田理央の今後の活躍から目が離せない。 <取材・文/宇佐美連三>

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