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「経済成長すれば税収は増える」なぜやらないのか?

連載15【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】増税すればGDP600兆円は達成できない  24日、安倍首相は2020年度に名目GDP600兆円を達成することを目標として掲げましたが、これ自体は非常に素晴らしいと思います。しかし、問題はその中身です。  どうやってGDPを600兆円まで成長させるのか?  内閣府の試算では、2017年に予定している10%への消費税増税が含まれています。「増税しても年3%以上の成長が可能」という、摩訶不思議な、はっきりいってインチキ試算です。  昨年の8%への増税によってGDP成長率(実質値)がマイナスになってしまったことは記憶に新しいでしょう。でも、内閣府は2014年度のGDP成長率(実質値)を1.4%増と予想していました。 「経済成長すれば税収は増える」なぜやらないのか? 内閣府の試算はまったく当てになりません。増税をすれば、いくら景気対策を打ったとしても、経済成長はできないのです。アクセルとブレーキを同時に踏んでも車は前に進みません。  おそらく今回のGDP600兆円の目標は、増税しても経済成長は可能だということをアピールしたい内閣と財務省の思惑なのでしょうが、騙されてはいけません。増税したらGDP600兆円の達成など絶対に不可能です。 ▼増税ありきで突き進むおかしな日本  なぜ日本はそこまでして増税がしたいのでしょうか?  財務省のトンデモ定率減税案のおかげで、にわかに国民の注目が集まっている消費税増税問題。なぜか議論の争点は、増税の是非ではなく、「10%の増税時に軽減税率を組み入れるかどうか」になっています。完全に増税ありきで話が進んでいますが、これははっきりいって異常です。  2017年に消費税を10%に増税しなければ日本の財政は持たないという話ならわかります。しかし、そんなことはありません。  本来ならば今年の10月に10%へ増税は実施される予定でしたが、昨年の安倍首相の判断によって増税は2017年の4月に見送られることになりました。  では、この増税の先送りによって、日本財政が危機的な事態に陥ったのかというと……起きていません。  海外の格付け会社に日本国債の格付けを引き下げられてしまいましたが、日本国債の価値(国債金利)はびくともしていません。それどころか、ギリシャ危機やチャイナショックが起きるたびに、安全資産として日本円、日本国債が買われる始末です。  なぜそんなに増税を急ぐ必要があるのでしょうか? 理解不能です。 ▼過去の日本の増税は大失敗している  次のグラフは日本の政府債務対GDP比の推移です。政府債務対GDPとは、政府の抱える借金をGDPで割った数値で、しばしばその国の財務の健全性を測る指標として用いられます。数字が大きいほど財政は悪くなります。 ⇒【グラフ】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=948665 「経済成長すれば税収は増える」なぜやらないのか? 日本が本格的に増税、緊縮財政を始めたのが1997年ですが、どうでしょうか? 日本の財政はよくなっていますか?  どう見ても政府債務対GDP比は減ってはいません。それどころか逆に増加速度を早めているように見えます。  これは完全に増税策の失敗なのではないでしょうか? 増税してさらに財政が悪くなったのではお話になりません。過去に増税をやって大失敗をやらかしているのに、なぜ政府、財務省はそこまでして消費税増税に固執するのでしょうか。  ほかに方法はないのか? 増税しなくても財政を健全化させる方法はあります。それが経済成長です。 ▼経済成長すれば税収はいくらでも増える  マスコミが増税ありきの報道を繰り返すため、多くの方が増税しなければ税収は増えないと思い込んでいるかもしれませんが、それは完全に誤りです。  増税しなくても税収は増やせますし、増税しなければ財政を健全化できないわけではありません。次のグラフを見てください。 ⇒【グラフ】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=948666 「経済成長すれば税収は増える」なぜやらないのか? 先進各国はこの20年ほどで、税収が約2~3倍程度増えています。実はこの間、税収がまったく増えていない国は日本だけなのです。  では、この日本以外の先進国は増税を定期的に繰り返して税収を増やしているのでしょうか? 違います。他国はただ単に経済成長しただけなのです。 ⇒【グラフ】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=948667 17-4 つまり、経済成長しさえすれば増税しなくても税収は増えるのです。  カナダは景気の減速を懸念して消費税率の引き下げ(7%→5%)を行いました。それでも税収は増え続けています。これは要するに減税による税収の減少分を、経済成長による自然増収が上回ったということです。  また、アメリカは消費税そのものがありません。マスコミは欧州の高い消費税率を取り上げ、「日本も消費税率の引き上げるべきだ」「欧州を見習え」といいますが、減税したカナダ、消費税を導入していないアメリカ、そして経済成長による税収の自然増を目指せとは決して言いません。  経済成長すれば増税なしでも税収を2倍にも3倍にも増やすことが可能です。  マスコミの皆さん。こういった事実をきちんと報道しましょう!  日本はカナダの消費税減税に習い、経済を成長させて税収を増やし、財政の健全化を目指すべきなのです。 ◆まとめ他国は経済成長で税収を増やしている。増税をしているわけではない他国は歳出を拡大しているのに財政が(日本のように)悪化していない日本は増税をしているのに税収が増えていない。増税政策はすでに失敗増税すれば経済が冷え込むため、税収が増えないのは当たり前経済成長で税収は2倍にも3倍にも増やすことができる 【山本博一】 1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ
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