テコンドーvs空手どっちがいい? フモフモ編集長の東京五輪“観戦穴場競技”探訪

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第14回~

フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営している スポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。

 五輪という大きな舞台、加わりたい競技は世界にたくさんあります。2020年東京五輪に向けても、野球・ソフトボールが復活への動きを見せたり、スカッシュが今度こその悲願を込めてアピールしてきたりしました。そのように多くの競技から「ウチも五輪に」という希望が出される中で、似たような競技がいくつもあったりしたら、ちょっとそれはどうかなという話にもなるでしょう。

 例えばリオ五輪を例に挙げると、ボート・カヌー・セーリングの船関連3競技で陸上全体(47個)や水泳全体(46個)に匹敵する40個もの金メダルを供給することになっています。これちょっとは「船関連が多すぎるのではないか」「なぜ飛行機とかクルマはないの?」「動力源がついているとダメなの?」「じゃ、馬はどうなん!?」という意見が出ても不思議はなかろうと思います。船の区分けだけめっちゃ細かいやん、と。

 一方で卓球においてはテニスやバドミントンにはある「ダブルス」「混合ダブルス」の種目がなかったり、逆にテニスやバドミントンには団体戦がなかったりするチグハグ感も。それぞれの競技ごとに都合はあるのでしょうが、全体を眺めての整理統廃合はあっていいだろうと思うのです。

 しかるに、2020年に向けて大混雑が予測されるのが打撃系の格闘技。東京五輪での追加種目を検討していた大会組織委員会が、9月28日に空手を含む5競技18種目の追加を国際オリンピック委員会に提案することを決めたのです。すでに五輪にはボクシングとテコンドーがあるわけですが、ここに空手が割って入ろうというのです。3つか。3ついるかなぁ。「主に手で殴る」「主に足で蹴る」の住み分けくらいで十分ではなかろうか。2つじゃないかなぁ。率直な印象として、3つはゴチャゴチャしすぎだろうと。

 そこで、今回は「同じ穴は2ついらないんだよ!」という理念を掲げ、これを整理統廃合していこうと決めました。テコンドーVS空手。蹴り合う格闘技は2つもいらない。同じ穴場はひとつでいい。それぞれの競技にとってはハタ迷惑でしかない潜入調査員(※ミシュラン気取りのヤツ)が、テコンドーと空手の大会を両方見まして、より素晴らしい穴場を認定しようと思い立ったのです。

 遡りまして2015年9月6日。この日は、テコンドーの全日本選手権大会・東日本選手選考会と、空手のアジア・シニア選手権という2大会が開催されておりました。そこそこ大きそうな大会が首都圏で真っ向勝負をする。これを両方ハシゴして見ましたらば、大会の熱気であるとか、観戦の楽しさなども比較しやすいだろう。そんな狙いの物見遊山です。

⇒【写真】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=949529

 まずやってきましたのはテコンドーの大会が開かれている東京・府中市。

 府中市は地味にテコンドーの町らしく、駅と直結したビルにはテコンドーの道場が入居していました。1階がパチンコ屋、2階がパチンコ屋、3階がテコンドー道場、5階が焼肉屋というテナント構成も非常にそれっぽい雰囲気があります。

 で、早速のアクシデントですが、ワタクシ会場を間違えておりました。駅前のテコンドー道場で大会をやるのかと思っていたのですが、どうやらココじゃないらしい。試合開始の午前10時を迎えても、そこにいるのはパチンコ屋の開店を待つお客さんだけです。

 しかし、さすがテコンドーの町・府中。パチンコ屋の警備の人に「今日、ここでテコンドーやってません?」と聞くと、テコンドーはクルマで10分ほどのところにある市の総合体育館でやっていると教えてくれるではありませんか。ご丁寧にどのバスに乗ったらいいかナビゲートまでしてくれます。うーん、思った以上にテコンドーは日本でも根付いているのでしょうか。思ったほど穴場じゃないのかも?

 改めましてやってきました、テコンドー大会の会場。

 あたりは森というか原っぱ。

 うん、やはりこうでなくちゃ。穴っぽい競技の大会には山・原生林・原っぱなどがよく似合う。駅前でやるなんてオカシイと思ったのです。こういう原っぱのド真ん中でやってこそ穴場感も増してきます。

 会場入りすると、あの「テコンドー」がやっていた!

 五輪でやっているのは知っているけれど、実際問題よくわからない競技・テコンドー。実際の現場は、思った以上に熱気があふれています。エアコンが効いてなくて扇風機をブン回しているせいかもしれませんが、熱気がムンムンしています。100人ほどの選手と、それを上回る感じの付添いの人で会場はすし詰め状態。男性だけでなく女性の姿も数多く見られ、オシャレなOL風の人も多数います。うわ、こりゃ思った以上に流行っているな。

 午前中は「形」の部が行なわれ、午後からは「組手」が行なわれるという日程。五輪では「組手」しか実施されていませんが、テコンドーにもちゃんと形があるんですね。空手が「形」「組手」の両方を提案している中で、テコンドーは「組手」のみが実施される。さらなるチグハグの予感です。

突きや蹴りのたびにビシュッというすごい音がするので、「スゴイ音ですね」と聞いてみたら、「口で言っています」とのこと。

 しかし、午後の組手が始まる段になり、若干の違和感が。五輪でのテコンドーでは、攻撃が相手に当たったかどうかを判定するために、電気を通したプロテクターを着るのですが、こちらの選手たちはどうやらソレは使わない模様。まぁ、機械も高いでしょうし、別になくてもいいですが、何となく気分が出ません。で、背広を着たエライっぽい人にちょっと質問をしてみたのです。

僕:「あのー、すいません」

背広の人:「何でしょう」

僕:「五輪で使ってる電気通したヤツとか今日は着ないんですか」

背広の人:「着ないですね」

僕:「アレは五輪とか大きい大会だけなんですかね」

背広の人:「いや、ウチは着ないですね」

背広の人:「ウチ、五輪、出ませんから」

背広の人:「それはウチじゃなく、WTFっていう別の団体です」

僕:「別の…団体…!?」

背広の人:「ウチはITFっていう団体で五輪には出ません」

背広の人:「流派が違うんですよ」

僕:「え、じゃあ今日勝っても五輪には…」

背広の人:「出ません」

僕:「日本一になっても…」

背広の人:「出ません」

僕:「世界一になっても…」

背広の人:「出ません」

僕:「この会場から五輪に羽ばたく選手は…」

背広の人:「いません」

ぬおおおおおおおおおお、間違えたーーーーーーー!!

 そう言えば、テコンドーでは大きく二流派があると聞いたことがあったが…。と、思ってもあとの祭り。普通「全日本」とか大会目についていたら、確実にそこから五輪に羽ばたく選手がいるものなのですが、テコンドーに限ってはそうではなかったのです。五輪に出るのは世界テコンドー連盟(WTF)という組織のほうで、今日見にきちゃったのは国際テコンドー連盟(ITF)という組織のほうの大会だったのです。プロレスで言うと、新日本プロレスの会場に行くつもりで、全日本プロレスの会場にきてしまっていたのです。

 背中に堂々とITF(※五輪に出ないほう)の文字。

 グローブにもしっかりとITF(※五輪に出ないほう)の文字。

 垂れ幕にも大きくITF(※五輪に出ないほう)の文字。

 うーん、何と言うか、こういう状態の競技が何故五輪に入っちゃっているのか、釈然としない感じがあります。テコンドーという競技での世界一強い選手が、本当に五輪に出ているのか、これじゃ全然わからないじゃないですか。双方が五輪に選手を送り込んで白黒つけるわけでもなく、我関せずという独自路線を歩むWTFとITFの両組織。五輪にあるヤツは「テコンドー」じゃなく「WTFテコンドー」と書くべきじゃなかろうか。えい、この、紛らわしい。

 会場の選手たちに「今日は五輪とかに出る人もいるんですか?」とイチイチすっとぼけて聞いてまわっても、ごく普通のテンションで「それウチじゃないです」という取りつく島のない反応が返ってくるばかり。「ITFは五輪と無関係」というのを当然の事実として受け入れ、そういうものだと思って皆やっている。間違えてきちゃったコッチも悪いけれど、間違えさせたソッチにも責任があるんじゃなかろうか。潜入調査員はメモ帳を地面に叩きつけながら、やり場のない憤りを覚えます。

 熱い戦いも、五輪とは無関係。

テコンドーvs空手どっちがいい? フモフモ編集長の東京五輪“観戦穴場競技”探訪 華麗な技の応酬も、五輪とは無関係。

 でも、ま、いいか。五輪に出ないほうでもテコンドーに変わりはあるまい。競技観戦の面白さという意味では、WTFでもITFでも似たようなものでしょうし。しばし観戦をつづけると、やはりテコンドーだけあって、どの選手も蹴りが非常に巧みです。基本姿勢は身体を横向きにして、横蹴りで間合いを取りながらの戦い。ローキックはなく、狙いは胴体と頭部です。蹴りをボクシングのジャブのように繰り出すさまは独特なものがあります。蹴り・蹴り・蹴りの攻防から、隙を見て接近戦での殴り合いに突入するという流れは、思いのほか迫力があるものでした。もっとも、五輪には出ないほうなんですけど……。

※次回「テコンドーや空手じゃなくてK-1!?」

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