株を買うときに見つけるべき会社――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちわ大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』。
怒涛の六回目、午前3時のサンノゼからお送りします。

※⇒前回「利益100万円のラーメン屋、いくらで買えるの?」

〈第6回 なにそのシャツ〉

「ということで、株の話にもどりましょう。株というのは、あのラーメン屋さんの一部を買うことです」

「一部?」

「はい。毎月100万円の利益が出るラーメン屋さん、45万円で買えるわけないでしょ。そんなもの、お店のオーナーが断ります」

「なるほど」

「では、例えばラーメン屋さんの10000分の1だったらどうでしょう。毎月100円の利益が出るものは、けんたくんならいくらで買いますか?」

「ずいぶん少ないですね…。そうだな。1000円くらいかな」

「よろしい。それがあなたの『買い注文』です」

「オー」
「知らなかったの?」
「ウン」

「あなたの買い注文は10000分の1を1000円。その一方、ラーメン屋さんのオーナーがその価格でチョッピリ売るかどうかはオーナーさん次第です」

「なるほど。別にお金に困ってなければ、1000円もらってそれだけ売っても意味ないですもんね」
「ちょっと頭良くなってきてますね。そういうことです。だから、けんたくんがまずはじめに探すべき株は『既に売り注文が出ている株』です」

「そんなラーメン屋さんあるんですか?」
「あります」

「どこに?」
「市場です」
「しじょう?」
「シジョウ…」

※   ※   ※   ※

「はい。市場というのは、お野菜と一緒。いろんな種類のものがたーくさん並んでて、交渉で値段が決まります。そして、売り手が強気のこともあるし買い手が強気のこともある。そこらへんが値段の書いてあるスーパーとはおおきく違うところです」

「でもかみさま。市場って、誰でも入れるわけじゃないですよね」
「ウンウン」

「まぁそうですね。でもネットで証券口座を開けば基本的に誰でも入れます。未成年でも口座を開かせてくれるところもありますし、若いからといって人間に価値がないわけではありません。なぜならゲームですから、子どものほうが上手なことだって十分あり得ます」

「じゃあ、僕もやります」

「よろしい。じゃあひとまず今日はお開きにして、後日口座を開いたらまた連絡もらえますか。ショートメッセージで」

「スマホもってないの?」
「そうですね。パカパカいうガラケーが好きなんです。パチーンって閉まる感じが、まるで一日にピリオドを打つようで…」

「ウンウン」

「わかるの?」
「ウン」

「ま、健太くんはまだ若いから、そのうち分かるでしょう。ひとまず死神さんとおウチに帰って、何か温かいものでもたべさせてあげてください」
「え!ウチくるの!?」

「なに言ってるですか。死神さんは離れません。片時も。けんたくんの人生はボラティリティが上がって変わり始めてしまったんですから、ごはんの時も寝るときも、ずっとそばに居続けます」

「えー」
「ウフ」

「死神さんは私と一緒で基本見ているだけですから、どうぞ気にせずに。 心配しなくてもすぐ慣れますよ。新興市場の社長とか見てると仲良くなっちゃってる人たくさんいますから」

「シンコウシジョウ?」

「そのうちわかります。じゃ、また後日」

「あ、ちょっとまってください」

「はい。なんでしょう」

「いえ、その、まだなにもできてないけど、チャンスをくれてありがとう」

「いいんです。ほっとけない感じがあなたの才能です」

「ほんとに…ありがとうございます」

—————
後日
—————

「こんちわー」
「あ、いらっしゃい」
「イラッシャイ!!!」

「お。死神さんげんきだねー。なにそのシャツ」
「いや、ずっと同じ服着てるから俺のTシャツ貸してあげたんだけど、よりによってそれしかなくて…」

「死神さん…自分大好きみたいになってますね…」
「エヘ」

Tシャツ「なんかまた新しいの探しときます…」

「それがいいでしょう。証券口座は開けましたか?」

「はい。ログインはできるようになって、45万円も入金しておきました」
「よろしい。じゃあ何からはじめましょうかね。そうだな。まずは基本中の基本。どんな株を買ったらいいかを教えましょう」

「い、いきなり核心ですね。そんなのわかるんですか?」
「えぇ。株を買うときに見つけるべき会社というのがあるんです」

「それって、有名な会社?」
「いいえ」

「じゃあ、なんか発明をする会社?」
「んー、ちょと違う」

「じゃあ、大ヒット商品をつくる会社?」
「作るかどうかはわかりません」

「ですよねぇ」

「ポイントはいくつかあります。ひとつは波紋のように拡がる情報の中心を見ることです」
「波紋」

「はい。情報には必ず情報源があり、そこを中心にして複数の地点に拡散し、結果的にそこから波紋のように拡がって、最後はテレビやマスメディアが伝えます」

「ふむふむ」

「でもね、新聞やテレビには時間や紙面の制限があるので、それぞれの会社の情報を詳しく載せることはなかなか困難で、あれこれ個別に上がったり下がったりいい会社もわるい会社もあるにも関わらず、結局ざっくりした情報しかみんなには伝わらないんです」

「なるほど」

「だけどね、とある会社が不祥事や大赤字を出した時には、急にマスメディアが取り上げたりもするんです。これが波紋の一番外側になり、最終的に大きな売り圧力になることもあります」

「売り圧力ってなんですか?」
「持ってるひとたちの売り注文が増えるために、徐々に価格が下がっていく状況です」

「おー。わかりました。買う人が少ないんですね」
「そう。すごい。頭いい。ムカつく」
「なんでよ」

「でですね、そういう情報を早い段階で手に入れてるひとや、その情報の信ぴょう性を調べることのできるひとは、比較的利益を手にしやすいのが株取引です」

「でもねかみさま、そういうのってインサイダーっていうんじゃないの?」

「ムカつく」
「なんでよ」

「確かに内部の人間が情報公開前に株式の売買を行ったらインサイダーになりますが、インサイダーの外側、波紋の中心の一番端っこの外側からチョロチョロ発表されるデータというのはインサイダーでもなんでもありません。それくらい、企業が提出を義務付けられている情報というのはヒントに溢れてて、見る人が見たら嘘ついてるのもわかっちゃうくらいなんです」

「そうなんだ…」
「ソウナンダ…」

「でもね、闇雲に財務諸表を見たところで、本当に眠くなっちゃいますから、今回は健太くんに、株式投資をするうえで最も大事な視点を教えてあげます」

「はい… どこ見たらいいんですか?」

「それは…」
「ゴクリ…」

「【背が伸びそうな子ども】か【具合悪そうなご老人】を探すんです」

「!!!?」
「オー!!!」

次回へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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