“適当な消費マインド”が需要の根源だった時代は終わった――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちわ大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』。

それでは7回目、まいります。

※⇒前回「株を買うときに見つけるべき会社」

〈第7回 どうせ冬のあとは春がくるんでしょ?〉

「でですね、そういう情報を早い段階で手に入れてるひとや、その情報の信ぴょう性を調べることのできるひとは、比較的利益を手にしやすいのが株取引です」

「でもねかみさま、そういうのってインサイダーっていうんじゃないの?」

「ムカつく」
「なんでよ」

「確かに内部の人間が情報公開前に株式の売買を行ったらインサイダーになりますが、インサイダーの外側、波紋の中心の一番端っこの外側からチョロチョロ発表されるデータというのはインサイダーでもなんでもありません。それくらい、企業が提出を義務付けられている情報というのはヒントに溢れてて、見る人が見たら嘘ついてるのもわかっちゃうくらいなんです」

「そうなんだ…」
「ソウナンダ…」

「でもね、闇雲に財務諸表を見たところで、本当に眠くなっちゃいますから、今回は健太くんに、株式投資をするうえで最も大事な視点を教えてあげます」

「はい… どこ見たらいいんですか?」

「それは…」
「ゴクリ…」

「【背が伸びそうな子ども】か【具合悪そうなご老人】を探すんです」

「!!!?」
「オー!!!」

※   ※   ※   ※

「死神さん盛り上がらない」

「でもかみさま、背が伸びそうな子どもって、どういう意味ですか?」

「はい。子どもっていうのは大体背が伸びるもんですが、企業の場合は伸びきらないこともあるんです」

「なんで?」

「競争が激しいからです」

「競争?」

「はい。企業の身長が伸びるということは、その企業が多くのお客さんに受け入れられてたくさんの売上と利益を得ることを意味するんですが、人間の社会的な生活と違って、企業活動の場合はもっとエゲツないことが行われることがあるんです」

「たとえばどんなことですか?」

「そうですね。簡単にいうと、子供同士の盗み合いとか、大人が子どものお菓子を奪うとか、そもそもお菓子が少ないのに子どもが100人来ちゃうとか」

「おー」
「オー」

「平和な日常にはそういうことってないでしょ。だけど、企業活動においてはそんなことは日常茶飯事で、のびのびすくすく成長できる会社のほうがずっと少ないのもそのためです。つまり、生き抜くことそのものが企業が成長するプロセスといってもいいかもしれません」

「なるほど。じゃあ、ケンカに強そうな奴とか、身体が強そうな奴を見つけたらいいんですかね?」

「そうですねぇ。人間の子どもの場合なんかはそうなるでしょうけど、会社の場合は次の6つのポイントを見てみるといいでしょう」

・参入障壁の難易度
・その企業のスピード感
・収益を上げている事業の永続性
・他言語圏へのコピーが可能かどうか
・より大きな企業にその市場を奪われる可能性があるか
・代表者の人相と存在感の厚み


「おー」
「オ?」

「企業運営では、経費を削ったことで利益が増えることとかがよくありますが、実際は現場の方々に無理な働き方をさせたうえで達成していることも多々あります。特に最近の製造業はお客さんのリクエストがめっちゃ増えてるのに海外の競争相手も死ぬほど増えちゃったりしてますから、前年と比べてチョイ増えとかよりも【どんな未来を明確に描いているか】のほうがずっと重要だったりするんです」

「でも、利益が出てるならいいじゃないですか。無理に新しいことしなくても」

「このメンチカツ」

「!!!」

「いいですか健太くん。1990年代後半から、世の中は変わったんです」

「そうなんですか?」

「はい。インターネットができて、ケンタくんみたいな単なる消費者はクチあけてずーーーーっと遊んでたとおもいますが、あらゆる場所で、ものすごい勢いで、ある現象が進んでいるんです」

「ある現象…」

「リプレイスです」

「りぷれいす」

「はい。リプレイスというのは、旧いものが新たなものにとって変わられることを表します。例えばケンタくんが新しいスマホを買ったとしましょう。とても速くてとても気に入りました。前の奴はどうしますか?」

「そうだなぁ。売れるなら売るし、売れないなら誰かにあげるかな」

「そうです。それがリプレイス。時間やコストの面において効率的なものは非効率なものを常にリプレイスしていって、それでも旧いものにこだわり続ける方々は別として、新しいものは世の中の大きな流れになっていくのです」

「もちょっとわかりやすく」
「ウサギさんがスマホを買い換えました…」
「あ、わかりました」
「…」

「ゲラゲラ」

「スマホに限らず、そろばんと電卓の関係もそうかもしれませんね。あとは白黒テレビとカラーテレビとか、寒くなったら服を替えるのも、大きな意味においてはリプレイスといえるでしょう」

「でもかみさま、冬のあとはまた春がくるんでしょ?」

「はい。季節だったらそうなんですが、実は経済活動の場合は一旦リプレイスされたものが元に戻ることはありません。リプレイスと競争原理が一番活発な軍事産業を見てみるとわかりやすいんですが、新しい兵器を捨てて旧い兵器を使いたがる国はどこにもありません」

「そりゃそうだ」

「で、こっからが大事なんですが、インターネットの出現と、無尽蔵に価値をコピーできるサーバの出現が、世の中のあらゆる欲望を満たすようになってきているんです」

「わかりません」
「潔ぎよすぎ」

「だってわかんないんだもん」

「そうだなー。たとえばね、車ってむかしは、彼女が欲しくって買ってた人いたんです」
「そうなの!?あぁ、まぁいないこともないか。うん。でもそこまでしなくてもいいかなぁとも思うけど」

「そう。そのケンタくんのなんとも言葉に出来ない適当な感じこそが、需要の根源を腐らせたもので、それについてはまぁ仕方ないことだと思います」
「ホメられてますかね」

「えぇ。そこまでがんばらなくてもいいかーと思う人が増えるということは、それだけいろんな企業の存在が無駄になってしまうということなんです。車に限らず、国内ブランドの高級アパレルなんかもそうでしょう」

「どうしてそうなったんですか?」

「原因はいろいろありますが、ひとつだけいえるのは、人間は無意識のうちに合理的なものを求め続けるからです。ラクだったり、安かったり、原因はいろいろありますが、その時の気分でお金を払います。手にはいるものがまったく同じなら、コストが安いほうを選ぶのは当然で、それが商品のリプレイスを産み、新しいほうの商品を提供できない企業は滅びていく。それだけです」

「でもね、かみさま。それって昔から行われてた競争と何が違うんですか?」

「あー。いいこと言う。ムカつく」
「なんでよ」

「あのですね。今回のリプレイスがいままでと大きく異なるのは、2つの側面があるんです」

「2つの側面…?」

次回へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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