政府日銀は日本を殺す気か?【経済ブロガー・山本博一】

連載17【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】

今年はハロウィン緩和なし

 日銀は何を考えているのか? 日本を殺す気なのでしょうか?

「昨年のようにハロウィン緩和はあるのか?」と期待していたのですが、10月30日の政策決定会合で日銀は追加緩和を見送り、量的緩和については現状を維持することが決定しました。非常に残念です。

 これはあなたの生活を直撃します。地獄の使者が歩み寄ってくる足音が聞こえてきます。

 4-6月期のGDPが前期比でマイナス成長になったことはニュースで繰り返し報道されています。7-9月期のGDP速報は11月16日に公表される予定ですが、民間の調査機関の予想では2期連続のマイナスになる可能性が示唆されています。

 マイナス成長の理由は、今更説明するまでもなく、昨年の消費税増税による個人消費の低迷です。今すぐにでも追加の景気対策が必要なこの時期になぜ追加緩和を見送ったのか、本当に解せませんが、10月30日に公表された日銀の将来展望レポートを見ると脱力してしまいまいました。

※経済・物価情勢の展望(2015年10月) http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1510a.pdf

 どうやら日銀は今のままでも、日本の景気は回復し、2017年に予定されている消費税10%の増税も乗り越えられると見ているようです。

 確かにそれが本当ならば、追加緩和も必要ないと思いますが、その楽観的すぎる見通しに空いた口がふさがりません。

楽観的すぎる日銀の将来展望

 この展望レポートによると、2015年度から2016年度にかけて「潜在成長率」を上回る成長が予想されるそうです。

「潜在成長率」とは、「資本」「生産性」「労働力」という生産に必要な3要素をフルに活用したときに達成される仮想上の成長率のことです。要するに、日本の持っている資本や人をフル活用しないと達成できない、日本の成長の上限値ということなのですが、それを超えるというのでしょうか?

 ちなみに日銀の予想では2015年度の成長率は1.2%になるとのことですが、もうすでに2015年度は2期続けてマイナス成長の可能性が指摘されています。年度の後半に急回復するなどまったく現実味がありません。

 ここでふと気になったのですが、日銀は昨年2014年度の経済成長をどう予想していたのでしょうか?

※経済・物価情勢の展望(2014年10月) http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf

 昨年の将来展望レポートを見てみると、日銀は2014年度の経済成長率を0.5%成長と見ていたようです。しかし、実際の成長率はマイナス0.9%。日銀は実に1.4%もサバを読んでいたことになります。

 ひどい外しっぷりです。もはや予想の体を成していません。どうやら、日銀の将来展望予想は下方修正されることが前提のようです。というわけで、こちらの数字も1%ほど差っ引いて見たほうがいいのかもしれません。そうなると2015年度以降の実質GDPの成長率は……。

<日銀の経済・物価情勢の展望(2015年10月)によるGDP成長率予想>
2015年度 1.2%
2016年度 1.4%
2017年度 0.3%

 これから1%以上差っ引くと、軒並みマイナスか、よくてギリギリプラス。2017年度は1%近いマイナスが予想されます。全然大丈夫ではありません。

 今すぐにでも追加の景気対策が必要な状況です。日銀は何を悠長に構えているんでしょうか。やる気あるのでしょうか?

とにかく消費税増税の影響をナメすぎている

 日銀は消費税増税の影響を過小評価しすぎです。2014年度の成長予想を大きく外したその反省が今回のレポートでまったく活かされているとは思えません。

 とくに目を引いたのが、7ページ目にあるこの一文です。

『第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある』

 要するに、国の財政に懸念がある場合、今後の増税や歳出の削減などの将来に対する不安が、国民の消費マインドを低下させ、経済成長の下振れの要因となっている。だから、2017年度に増税をすることによって、その不安を解消できれば、経済が上振れする可能性があるということです。

 いやはや、ここまで楽観的だと怒りを通り越して呆れてしまいます。

 一般の庶民のなかで、国の財政がどうなるのかと考えながら日々買い物している人が一体何人いるというのでしょうか? 「国の財政が心配だから今晩のおかずは一品減らしましょう」とか普通考えますか? 絶対にありません。

 普通の一般庶民は、家計に直接影響のある「雇用」と「給与」を気にして日々生活を送っています。ですから、その「雇用」と「給与」を直撃してしまう消費税増税は消費に多大な悪影響を与えます。

 そのことについては昨年4月の増税以降の家計消費の低迷を見れば一目瞭然でしょう。家計の消費は増税以降低迷を続けています。

⇒【資料】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=972806

家計最終消費支出 増税をすれば将来不安が解消されて景気が上向く? このグラフを見る限り、そのような兆候はどこにも見当たりません。増税で景気が悪くなることはあっても、逆はあり得ないでしょう。

 笑止千万。政府日銀は消費税の影響を過小評価しすぎです。

 このままなにもしなくても2017年の増税を乗り越えられる? 国民の生活や命をなんだと思っているのでしょうか?

GDP600兆円達成は不可能

 政府は2020年までに名目GDP600兆円を達成する目標を立てていますが、今のままでは絶対に達成は不可能です。2017年度にマイナス成長が見込まれていますので、そこからいくら挽回しても600兆円には到底届きません。

 もし、達成の可能性があるとするならば下記の政策を今すぐに実行することが最低条件です。

・10兆円規模の補正予算
・追加緩和の実施
・10%への消費税増税は凍結

 日銀は今回追加緩和を見送ってしまいました。政府は本当に600兆円の目標を達成するつもりがあるのでしょうか? その本気度は見えません。

 それにしてもこの日銀のレポート。タイトルは「日銀の経済・物価情勢の展望」から「日銀の経済・物価情勢の『願望』」に変えたほうがいいでしょう。願望だけで経済成長できるのなら世話ありません。日銀はちゃんと仕事してください。

まとめ
日銀は2014年度の成長率予想を1.4%も外していた
日銀の超楽観的な将来成長予想は当てにならない
このままでは2017年度もマイナス成長確実
増税の凍結、追加緩和、補正予算が必要
日銀はちゃんと仕事してください

【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ

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