「断捨離をしても、妻への未練は捨てきれず」――46歳のバツイチおじさんは助っ人を呼ぶことにした 【第3話】

 英語も喋れないのにたった一人で世界一周の旅に出ることになった「46歳のバツイチおじさん」によるズンドコ旅行記がついにスタート。日刊SPA!では、この模様を連載形式でお届けしていきます。今回から「旅の身支度編」を2回にわたってお送りします。

英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」【第3話 妻に捨てられ、断捨離に目覚める】

本当に興味のない話で申し訳ない。だけど、意外な発見もあるので、
46歳のバツイチおじさんが旅に出る前に断捨離した話をここに綴りたいと思う。

ある日突然、妻から捨てられた。
離婚後、妻は家から出て行った。
一人残された46歳のバツイチおじさん。
その思いを断ち切るため「世界一周花嫁探しの旅」に出ることにした。

そのためには、まず身の回りのモノを整理する必要がある。
結構前に女子の間で流行った断捨離というやつだ。
それをおじさんが一人でやる。
ちなみに俺は九州男児で身の回りのことをすべて妻に任せていた。
整理整頓は昔から苦手だ。

俺は悩んだ。部屋は元妻との思い出や、本や映画のDVDの山。
さらには、部屋の一つをテレビの製作会社の事務所として
使用していたため、仕事道具もたくさんある。
今後、会社をどうするか?
人生をどう生きるのか?
妻への未練をいかに断ち切るか?
何を捨て、何を残すか? つまり……

「人生において、一番大切なモノは何だ?」

自分が今、深層心理で何に興味を持ち、何を大切にしているのか?
それを知らなければならなかった。どうすればいいんだ?
「うーーーーーーーん」
そういえば寺山修司が「書を捨てよ、町へ出よう」という本を書いてたな。

「そうだ、本を捨てよう」

人に本棚を見られるのは、頭の中を覗かれているようですげー恥ずかしい。
でも、自分の恥部を整理すれば何かが見えてくるかもしれない。
数えてみると、我が家の蔵書は1000冊近く。
それをただ捨てるのはさすがにもったいない。
というわけで、ブックオフで買い取って貰うことにした。

208冊で3810円にしかならなかった。

どうしても捨てられない本を自炊代行業者M社でデジタル化してもらった。

これは669冊で9万7027円だった。いや、高っ!

しかし、この蔵書を置くために畳1畳分の部屋を
借りなければならないと考えると、払ってもいいと判断した。
Nexus9のDropboxからダウンロードすれば、旅先で読むこともできる。
リサイクルに出した本は情報モノばかりで、デジタルにした本は物語が多い。
どうやら俺は物語に興味を持っているらしい。

結果、アナログで残した本は108冊。
さて、旅に持っていく紙の本はどれにしよう?
可能な限り荷物を軽くするのがバックパッカーだ。
重くなればなるほどHPが弱まり、動けなくなる。
そこで、アナログの本はこれ一冊だけにした。
それは………

スラムダンクの31巻・最終巻「スラムダンクの31巻」最終巻である。
俺の座右の銘でもある「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という
名言を生み出した、俺のバイブルだ。

このバイブルを、世界で出会った旅人が持っている本と交換してみようと思う。
荷物の重量にこだわるバックパッカーにとって一冊の本はとても大切だ。
そんなアナログな本の交換は価値観の交換とも言える。
スラムダンクは旅が終わった時、何の本に代わっているのか?
まさに、『スラムダンクによるわらしべ長者』である。

そんな一冊を決めた後、俺は一か月をかけて身の回りを整理整頓した。

「……あー、そうだったんだ」

いつも丁寧に片づけをしてくれていた妻の思考が読めた。
あー、こんな考え方で、こんな風に整理をしてくれていたんだ。
全然気づいてやれなかった。
妻の考え方がわかればわかるほど、想いが残り、
悲しくなり胸が締め付けられた。
同じモノを取り出しては同じ場所に戻してしまう。

「切なすぎて、これ以上何も捨てられない」
「どうしよう?」
「どうすればいい?」
「うーーーーーーーん」

そうだ、母ちゃんを呼ぼう!

俺は、大分県の実家に住む73歳の母ちゃんに電話した。

「なー、お母さん、たまには金だすけん、東京遊びにこんかえ?」
「え? え? ホントね! うれしいわー! あんたがそんなこと言うの、めずらしい~やん」
「……」
「仕事は大丈夫なん?」
「……うん、まー、気分転換にな」

母は何も疑わず、三日後には東京に来てくれた。
8月の猛暑で熱中症のニュースが流れるなか、
母と渋谷のハチ公前で待ち合わせをした。

何も知らず嬉しそうに手を振る母。
渋谷の無印良品の2階の定食屋に連れて行った。
母は活気溢れる渋谷の街に感動し、久しぶりに会う息子の顔を見て、
顔がくしゃくしゃになる程ニコニコしていた。
心の底から嬉しそうな母の顔を見た時、
「もう、離婚の話なんてしなくてもいいじゃないか!」
と心の底から思った。
しかし、俺の家に母を泊めれば、離婚したことがバレてしまう。
いつまでも隠しきれることではない。

俺は覚悟を持って切り出した。

「……俺、離婚したんよ。先月」
「……」
「心配かけるけん、言えんかった」
「……」
「……ごめんな」

母は一瞬動揺した顔を見せた。
しかし、すぐにその顔を、その心を、
立て直し気丈な顔を作った。そして……

「ははははは!」

母は笑った。

「なんか、そげなことかえ! 気にせんでいいいわ。実はな、なんとなく気づいちょったんよ!!」

母は気丈な言葉と態度で息子を傷つけまいとしていた。
こんなに年をとっても俺を心配し、いつも元気いっぱいの笑顔で励ましてくれる。
そんな母の前では、46歳の俺でもただの子供になってしまう。

「実はな、部屋のモノが捨てられんのよー。手伝ってくれんかえ?」
「いいでーーー! 母さん、あんたのために、いろいろしたかったんやけど、奥さんがおったやん。だけんな、それは悪いなーと思ってやらんかったんよ。片付け、うれしいわー」

ずっと独りで妻との思い出と格闘し、なんとか耐えていた。
俺は心の奥に、久しぶりの何とも言えない安らぎを感じた。
この感情をどう表現していいかわからない。
うれしいでもない、あったかいでもない。
でも、なんとも心が穏やかになる。
なんだろう、この気持ちは……?

俺はふと、幼い頃に母と歩いた大分の街を思い出した。
子供の頃、母と大分のトキハデパートに行って、はぐれてしまった時の映像だ。
幼き俺が、不安になり、泣いていたら、遠くからお母さんが見えた!
「あ、お母さんや!」
幼い頃に感じた、あの安堵感。
母ちゃんは今も昔も、俺の絶対的な味方だった。

翌日から、二人で断捨離を始めた。
母は俺が「それ、大切やけん、捨てたらダメ!」といっても
「使わん、使わん、また買えばいいやん」と言ってどんどんモノを捨てていく。
だが、俺が本当に大切だと思うモノは
「あんた、これは大切やろ。とっちょきなさい」
と、残してくれる。どうして俺の気持ちがそこまでわかるんだろう?

一緒に断捨離をしている最中、自分でもまったく気づかなかった
俺の深層心理を母が指摘してくれたことがあった。

「あんた、またテレビに戻るな?」
「え? なんで?」
「高価なパソコンとか服とか捨てても、あんまり文句言わんやん。だけど、そのガムテープとかスケッチブックとかマジックペンは、顔色変えて捨てたらだめっ!ちゅうやん」
「……あ、ほんとや」
「やろ~」

業界用語でいうと、カンペやバミり用のビニテ(ビニールテープ)やガムテ(ガムテープ)。それにスケッチブックにマジックペン。
自分をここまで育ててくれたテレビの現場。
何日も寝ないで、入念に準備をする本番収録。
そこに宿る「魂」を捨てることが自然とできなかった。

「あー、おれ、こんなモノが大切なんや!」

母は俺に本当に大切なことを教えてくれ、大分の実家に帰っていった。
本当なら美味しいものを食べさせてあげ、浅草に連れて行って、
スカイツリーに登らせてあげたかったのに。

「ごめんな、お母さん」

母が帰ってしまい、また独りで部屋に残された。
寂しくなった俺は、作業途中に撮ったこの写真を見た。

大分県の実家に住む73歳の母ちゃん涙がでた。
お母さん、大好き。
ありがとう。

その後、月1万3000円で借りた2畳半のコンテナに
すべての荷物を詰め、俺の断捨離は終わった。
自分にとって本当に大切なモノが何なのかがわかった。

そして、いよいよ世界一周に旅立つ。
俺は旅の装備をどうするか、さらに本格的な準備を始めた――。

次回予告
「世界一周に出る前に受けなければならない予防注射の総額は!?
46歳のバツイチおじさんによる旅の身支度完結編」を乞うご期待!


●後藤隆一郎(ごとうりゅういちろう)
後藤隆一郎IVSテレビ制作(株)のADとして「天才たけしの元気が出るテレビ!」(日本テレビ)の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」「トリビアの泉」「学べる!ニュースショー!」など数々の番組制作に携わる。現在はディレクターを休業し、「大体1年ぐらい」という期間限定で花嫁探しの旅に一人で挑戦中。バツイチ、46歳、通称ごっつ。

― 英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」―

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